REVIEW

聖なる犯罪者

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『聖なる犯罪者』バルトシュ・ビィエレニア

少年院にいる間に熱心なキリスト教徒になり、神父になることを夢見ていた主人公が、前科者は聖職者になれないと知りながら、ひょんなことがきっかけで神父として過ごすという物語。これだけ聞くと、朗らかな良い話に思えますが、R-18作品ということで、恐らく終始心穏やかにはいかないだろうと皆さん想像できるでしょう。本作は、ポーランドで実際に起きた事件を基に描かれていますが、それを思うと余計に胸が痛むストーリーです。
詳細は伏せておきますが、やっぱり人間は罪深いと実感させられる内容です。それは、主人公ダニエルについてというよりも人間の本質についてであり、どんなに人間が悔い改めて、神がそれを赦しても、別の人間がそれを赦さないことで、負の連鎖が続いていくということなのかもしれません。自分の傷を癒すために、人間が人間を罰して、それを都合よく神の仕業だとしてしまう。ダニエルが少年院に入る前に犯した罪は間違いなく罪であり、償わなければいけませんが、彼が神父のふりをしている間にとった行動は罪なのでしょうか。ダニエルはニセモノの神父ですが、彼の言葉や行動に嘘がないからこそ、彼は人々の心を動かしていきます。本作を観ていると、どちらの人間が“聖なる犯罪者”と言えるのかと考えさせられると同時に、何かを本気で信じてそれを実行する力の強さと、それを失った時の負の力の大きさの両方を感じずにはいられません。人を赦せない社会が何を生み出してしまうのか、ぜひ皆さんの目で確かめてください。

デート向き映画判定
映画『聖なる犯罪者』バルトシュ・ビィエレニア/エリーザ・リチェムブル

限られたシーンではありますが性的描写や暴力描写があり、テーマが重いので、ウキウキ過ごしたいデートには向きません。でも、語り甲斐のある内容なので、お互いの映画の好みに合っていて、議論好きなカップルなら、一緒に観るのもアリだと思います。同じ思いを共有できるだけでも、一緒に観る意味がある映画です。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『聖なる犯罪者』バルトシュ・ビィエレニア

世の中には、「それがルールだからダメ」ということは多々ありますが、そのルールが都合よく使われて、本来大切にすべきことをないがしろにする方向に働いている場合もあります。もちろん基本的にルールは守るものですが、それに疑問を持つことも時に必要だということを本作は教えてくれます。本作はR-18なので18歳にならないと観られませんが、若い皆さんにこそ観てもらい、考えて欲しいテーマが描かれているので、18歳になったらぜひ観てください。

映画『聖なる犯罪者』バルトシュ・ビィエレニア

『聖なる犯罪者』
2021年1月15日より全国順次公開
R-18+
ハーク
公式サイト

© 2019 Aurum Film Bodzak Hickinbotham SPJ.- WFSWalter Film Studio Sp.z o.o.- Wojewódzki Dom Kultury W Rzeszowie – ITI Neovision S.A.- Les Contes Modernes

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『ひゃくえむ。』 ひゃくえむ。【レビュー】

魚豊著の『チ。 ―地球の運動について―』がすごく好きなので、絶対に本作も…

映画『お嬢と番犬くん』櫻井海音 櫻井海音【ギャラリー/出演作一覧】

2001年4月13日生まれ。東京都出身。

映画『ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝』ビル・スカルスガルド ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝【レビュー】

実に楽しい!良い意味で「なんじゃこりゃ?」というハチャメチャなノリなのに…

ポッドキャスト:トーキョー女子映画部チャンネルアイキャッチ202509 ポッドキャスト【トーキョー女子映画部チャンネル】お悩み相談「どうしたらいい出会いがありますか?」他

今回は、正式部員の皆さんからいただいたお悩み相談の中から、下記のお2人のお悩みをピックアップして、マイソンなりにお答えしています。最後にチラッと映画の紹介もしています。

映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』ベニチオ・デル・トロ/ミア・スレアプレトン/マイケル・セラ ザ・ザ・コルダのフェニキア計画【レビュー】

REVIEWこれぞウェス・アンダーソン監督作という、何から何までかわいい世界観でありながら…

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

映画『こんな事があった』前田旺志郎/窪塚愛流 こんな事があった【レビュー】

2021年夏の福島を舞台に、主人公の17歳の青年のほか、震災後も苦悩しながら生きる人々の姿を…

映画『パルテノペ ナポリの宝石』セレステ・ダッラ・ポルタ セレステ・ダッラ・ポルタ【ギャラリー/出演作一覧】

1997年12月24日生まれ。イタリア出身。

映画『ブロークン 復讐者の夜』ハ・ジョンウ ブロークン 復讐者の夜【レビュー】

『工作 黒金星と呼ばれた男』『アシュラ』などを手掛けたサナイピクチャーズが贈る本作は…

映画『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』西島秀俊/グイ・ルンメイ Dear Stranger/ディア・ストレンジャー【レビュー】

真利子哲也監督(脚本も担当)による西島秀俊主演作という情報のみで、毎度ながら前情報をほぼ入れずに観て、いろいろ良い驚きが…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 ファストムービー時代の真逆を行こうと覚悟を決めた!大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート前編

『るろうに剣心』シリーズ、『レジェンド&バタフライ』などを手掛けた大友啓史監督が<沖縄がアメリカだった時代>を描いた映画『宝島』。今回、当部の部活史上初めて監督ご本人にご参加いただき、映画好きの皆さんと一緒に本作について語っていただきました。

映画『宝島』妻夫木聡/広瀬すず/窪田正孝 沖縄がアメリカ統治下だったことについてどう思う?『宝島』アンケート特集

【大友啓史監督 × 妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太】のタッグにより、混沌とした時代を自由を求めて全力で駆け抜けた若者達の姿を描く『宝島』が9月19日より劇場公開されます。この度トーキョー女子映画部では、『宝島』を応援すべく、正式部員の皆さんに同作にちなんだアンケートを実施しました。

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『ふつうの子ども』嶋田鉄太/瑠璃
  2. 映画『ネクスト・ゴール・ウィンズ』マイケル・ファスベンダー
  3. 映画『バーバラと心の巨人』マディソン・ウルフ

REVIEW

  1. 映画『ひゃくえむ。』
  2. 映画『ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝』ビル・スカルスガルド
  3. 映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』ベニチオ・デル・トロ/ミア・スレアプレトン/マイケル・セラ
  4. 映画『こんな事があった』前田旺志郎/窪塚愛流
  5. 映画『ブロークン 復讐者の夜』ハ・ジョンウ

PRESENT

  1. 映画『ホーリー・カウ』クレマン・ファヴォー
  2. 映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル
  3. 映画『ミーツ・ザ・ワールド』杉咲花/南琴奈/板垣李光人
PAGE TOP