REVIEW

せかいのおきく【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『せかいのおきく』黒木華/寛一郎/池松壮亮

江戸末期の東京で生きる、22歳のおきく(黒木華)、中次(寛一郎)、矢亮(池松壮亮)の3人の若者の物語。おきくは武家育ちでありながら今は父と2人で長屋で質素に暮らしています。矢亮と中次は便所の糞尿を買い取り、肥やしとして売って生計を立てています。そんな3人の日常を描いた本作には、貧しく厳しい生活を送るなかでも、強く明るく生きる3人の若者の姿が映し出されています。
本作では糞尿を売買する仕事が、物語の一つの柱となっています。映画公式資料によると、本作はSDGsの観点から企画が上がったとされていて、阪本順治監督は江戸時代に成立していた循環型社会について書かれた資料を読み、「低い視座から、しかも汚いところから社会を眺める映画ならやれるかもしれないと思いました」とあります。「SDGsを時代劇で⁈」という点でも興味を引きますね。また、この仕事は誰も進んでやりたがらないけれど、誰かが必ずやらなければいけない仕事です。また、人間を含め生物が生きていく上で、排泄は避けられない生理現象です。本作を観ていると、私達はどんな状況であれ、生きているんだということ、嫌でも毎日生きなければいけないことを実感します。
そんなテーマを根底にしながら紡がれる若者3人の物語には、人生の厳しい面も輝く面も描かれていて、ユーモアもあり、時代を超えて親近感を覚えます。章によってさまざまな様相を見せる本作では黒木華、寛一郎、池松壮亮の演技力が一層光ります。寛一郎と佐藤浩市の親子共演シーンも見どころです。いろいろな楽しみ方ができる本作でほっこりしてください。

デート向き映画判定
映画『せかいのおきく』黒木華/寛一郎

初々しい恋愛が描かれていて、友達以上恋人未満の方なら特に共感できると思います。もう一歩踏み出せないでいる方は好きな相手と一緒に観ると、本作に背中を押してもらえるかもしれません。糞尿が頻繁に映る点で、食前食後の鑑賞は念のため避けたほうが良さそうです。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『せかいのおきく』池松壮亮

一部カラーですが、ほとんどモノクロなので、キッズには少々馴染みにくいかもしれないですね。中学生以上なら、SDGsについて事前に簡単に調べてから観ると、社会勉強の1つとしても観られそうです。また若者3人の奮闘もティーンの皆さんなら身近に感じられると思います。

映画『せかいのおきく』黒木華/寛一郎/池松壮亮

『せかいのおきく』
2023年4月28日より全国公開
東京テアトル、U-NEXT、リトルモア
公式サイト

© 2023 FANTASIA

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師』ヨナス・ダスラー ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師【レビュー】

第二次世界大戦下のドイツに実在した牧師、ディートリヒ・ボンヘッファーは、ナチスに支配された教会やユダヤ人達を救おうと奮闘…

映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』SUMIRE 佐藤菫【ギャラリー/出演作一覧】

1995年7月4日生まれ。東京都出身。

映画『プレデター:バッドランド』エル・ファニング プレデター:バッドランド【レビュー】

おもしろい!いろいろユニーク!“プレデター”シリーズは…

映画『モンテ・クリスト伯』ピエール・ニネ モンテ・クリスト伯【レビュー】

アレクサンドル・デュマ・ペールの傑作小説「巌窟王」を映画化した本作は…

映画『秒速5センチメートル』松村北斗 映画レビュー&ドラマレビュー総合アクセスランキング【2025年10月】

映画レビュー&ドラマレビュー【2025年10月】のアクセスランキングを発表!

映画『旅と日々』シム · ウンギョン/堤真一 旅と日々【レビュー】

つげ義春の「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」を原作に、『ケイコ 目を澄ませて』『夜明けのすべて』などを手がけた三宅唱監督が映画化…

映画『風のマジム』肥後克広 肥後克広【ギャラリー/出演作一覧】

1963年3月15日生まれ。沖縄県出身。

【20周年記念ボイスシネマ声優口演ライブ2025】羽佐間道夫、山寺宏一ほか 人気声優達が真剣勝負!会場が終始笑いに包まれた【20周年記念ボイスシネマ声優口演ライブ2025】本番リポート

発起人である羽佐間道夫のもと、山寺宏一、林原めぐみほか錚々たる人気声優達がズラリと顔を揃えたライブは今年で20周年を迎えました…

映画『あの時、愛を伝えられなかった僕の、3つの“もしも”の世界。』ホン・サビン/シン・ジュヒョブ あの時、愛を伝えられなかった僕の、3つの“もしも”の世界。【レビュー】

物語の始まりは、1995年の韓国、テグ。学校でいじめられていたドンジュン…

映画『8番出口』河内大和 河内大和【ギャラリー/出演作一覧】

1978年12月3日生まれ。山口県出身。

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年11月募集用 AI時代における人間らしさの探求【映画学ゼミ第2回】参加者募集!

ネット化が進み、AIが普及しつつある現代社会で、人間らしさを実感できる映画鑑賞と人間にまつわる神秘を一緒に探求しませんか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年11月募集用
  2. 映画『おーい、応為』長澤まさみ
  3. AXA生命保険お金のセミナー20251106ver3

REVIEW

  1. 映画『ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師』ヨナス・ダスラー
  2. 映画『プレデター:バッドランド』エル・ファニング
  3. 映画『モンテ・クリスト伯』ピエール・ニネ
  4. 映画『秒速5センチメートル』松村北斗
  5. 映画『旅と日々』シム · ウンギョン/堤真一

PRESENT

  1. 映画『TOKYOタクシー』オリジナルパラパラメモ
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP