REVIEW

先生の白い嘘【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『先生の白い嘘』奈緒

REVIEW

女とはどういう生き物か、男とはどういう生き物か、女として生きるとはどういうことか、男として生きるとはどういうことか、そんなことを改めて考えさせられる衝撃的なストーリーです。近年では、ジェンダーレスという考え方が徐々に浸透してきたとはいえ、そして自認がどうであれ、人間は男か女かという呪縛からは逃れられないのかもしれません。本作を観ると、その現実を突きつけられます。
主人公は高校教師の原美鈴(奈緒)。美鈴は誰にも言えない秘密を抱えていたなか、ある教え子との交流を通して、自分の問題と向き合うようになります。美鈴に何が起こるのかは本編でご覧いただくとして、本作はセリフの一つひとつに重み、深みがあります。同じ言葉でも、立場や解釈によって意味が異なり、都合の良い解釈にも、自分を守るための解釈にもなりえます。そして、そうした解釈の違いがそのまま社会の歪みを表していることに気付かされます。

映画『先生の白い嘘』奈緒

性別の違いによる力関係が描かれていると同時に、性別を越えた立場の違いによる力関係を描いている点も秀逸です。たとえば、教師と生徒という関係性においても、それが見え隠れしていて、実際にはいろいろな背景が混在するなかで、自分が強い立場にあるのか、弱い立場にあるのか、対等な立場なのかの判断が“正しく”できているのかわからず困惑するキャラクター達の心情が伝わってきます。

映画『先生の白い嘘』猪狩蒼弥

奈緒、三吉彩花、風間俊介の演技も見ものです。彼等の真に迫った演技によって、本作で起きている出来事の恐ろしさをリアルに体感できました。キーパーソンとなる生徒を演じた猪狩蒼弥の演技もとても自然であどけなさがあり、観客は彼の目を通して世の中の矛盾や不可解さを徐々に理解していくことができるのではないでしょうか。
本作から大変強いメッセージが発せられている背景には、原作者、鳥飼茜氏の思いがあることがうかがえます。本作の公式サイトには、鳥飼茜氏のコメントが載っていますので、鑑賞後にぜひ合わせて読んでみてください。

デート向き映画判定

映画『先生の白い嘘』奈緒/風間俊介

大変重いテーマを扱っていて、キャラクター達に起こる出来事や性的描写などから考えると、デート向きの映画ではないものの、カップルにとってもすごく重要なテーマが描かれています。劇中には自分達の問題を見て見ぬ振りをしてきたキャラクターも出てきます。彼等のようにならないためにも、敢えてカップルで観る意義があると思います。自分達の関係性も客観視する機会にできそうです。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『先生の白い嘘』奈緒/猪狩蒼弥

皆さんと同じ世代のキャラクターが登場し、大人達の言動に困惑しながらも、自分なりに物事を理解し、成長しようとする姿は良いお手本になると思います。R-15なので15歳以上なら観られますが、かなり衝撃的なシーン、怖いシーンも出てくる点は覚悟しておきましょう。人によってはかなり辛くなる可能性がある内容なので、どういうストーリーか知っておきたい方は、映画公式サイトの原作者のコメントを読んでみてください。

映画『先生の白い嘘』奈緒/猪狩蒼弥/三吉彩花/風間俊介

『先生の白い嘘』
2024年7月5日より全国公開
R-15+
松竹ODS事業室、イノベーション推進部
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

©2024「先生の白い嘘」製作委員会 ©鳥飼茜/講談社

TEXT by Myson


関連作

漫画 Kindle版「先生の白い嘘」鳥飼茜 著/モーニングコミックス
Amazonで書籍を購入する

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2024年6月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『聖杯たちの騎士』ナタリー・ポートマン 映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外40代編】演技力部門

イイ俳優ランキング【海外40代編】から、今回は<雰囲気部門>のランキングを発表します。錚々たる俳優が揃うなか、総合と比べてどのようにランキングが変化したのでしょうか?

映画『キノ・ライカ 小さな町の映画館』アキ・カウリスマキ キノ・ライカ 小さな町の映画館【レビュー】

本作は、フィンランドを代表する映画監督アキ・カウリスマキが共同経営者のミカ・ラッティと一緒に、地元である鉄鋼の町カルッキラに初めての映画館“キノ・ライカ”を作り、開業するまでの日々…

映画『ノーヴィス』イザベル・ファーマン イザベル・ファーマン【ギャラリー/出演作一覧】

1997年2月25日生まれ。アメリカ、ワシントンD.C.出身。

映画『雪の花 ―ともに在りて―』松坂桃李/芳根京子 『雪の花 ―ともに在りて―』一般試写会 10組20名様ご招待

映画『雪の花 ―ともに在りて―』一般試写会 10組20名様ご招待

映画『クレイヴン・ザ・ハンター』アーロン・テイラー=ジョンソン クレイヴン・ザ・ハンター【レビュー】

主人公のクレイヴンは、原作コミックではスパイダーマンの宿敵として、ヴェノムに匹敵する強さを持つ…

映画『太陽と桃の歌』アイネット・ジョウノウ/ジョエル・ロビラ/イザック・ロビラ 太陽と桃の歌【レビュー】

REVIEW第72回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門で見事金熊賞を受賞した本作は、…

映画『お坊さまと鉄砲』ケルサン・チョジェ お坊さまと鉄砲【レビュー】

かつてブータンは「世界一幸せな国」といわれていました。本作は、その理由や、民主主義、文明とは何かを改めて考えさせられる…

映画『ビートルジュース ビートルジュース』キャサリン・オハラ キャサリン・オハラ【ギャラリー/出演作一覧】

1954年3月4日生まれ。カナダ出身。

映画『インサイド・ヘッド2』 心理学から観る映画51:“インサイド・ヘッド”シリーズを感情研究の理論にあてはめて考える

「感情」はとらえ方が大変難しい概念です。専門家による感情に関する研究でも、さまざまな理論があります。そこで、今回は「感情」のとらえ方について代表的な理論を取り上げます。

映画『はたらく細胞』永野芽郁/佐藤健 はたらく細胞【レビュー】

シリーズ累計発行部数1000万部を超えるベストセラーコミックを実写化した本作は、まず…

部活・イベント

  1. 【ARUARU海ドラDiner】サムライデザート(カップデザート)
  2. 【ARUARU海ドラDiner】トーキョー女子映画部 × Mixalive TOKYO × SHIDAX
  3. 【ARUARU海ドラDiner】サポーター集会:パンチボール(パーティサイズ)
  4. 【ARUARU海ドラDiner】プレオープン
  5. 「ARUARU海ドラDiner」202303トークゲスト集合

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『聖杯たちの騎士』ナタリー・ポートマン 映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外40代編】演技力部門

イイ俳優ランキング【海外40代編】から、今回は<雰囲気部門>のランキングを発表します。錚々たる俳優が揃うなか、総合と比べてどのようにランキングが変化したのでしょうか?

映画『グランツーリスモ』オーランド・ブルーム 映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外40代編】雰囲気部門

イイ俳優ランキング【海外40代編】から、今回は<雰囲気部門>のランキングを発表します。錚々たる俳優が揃うなか、総合と比べてどのようにランキングが変化したのでしょうか?

映画『マイ・インターン』アン・ハサウェイ 映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外40代編】総合

今回は、海外40代(1975年から1984生まれ)のイイ俳優の中から、昨今活躍が目覚ましい方を編集部の独断で80名選抜し、正式部員の皆さんに投票していただきました。今回はどんな結果になったのでしょうか?

REVIEW

  1. 映画『キノ・ライカ 小さな町の映画館』アキ・カウリスマキ
  2. 映画『クレイヴン・ザ・ハンター』アーロン・テイラー=ジョンソン
  3. 映画『太陽と桃の歌』アイネット・ジョウノウ/ジョエル・ロビラ/イザック・ロビラ
  4. 映画『お坊さまと鉄砲』ケルサン・チョジェ
  5. 映画『はたらく細胞』永野芽郁/佐藤健

PRESENT

  1. 映画『雪の花 ―ともに在りて―』松坂桃李/芳根京子
  2. 映画『リアル・ペイン〜心の旅〜』ジェシー・アイゼンバーグ/キーラン・カルキン
  3. 映画『モアナと伝説の海2』Tシャツ
PAGE TOP