REVIEW

少年の君

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『少年の君』チョウ・ドンユイ/イー・ヤンチェンシー

本作は2011年の中国を舞台に、いじめと受験戦争の実態を描いています。主人公チェン・ニェンは進学校に通う高校3年生で、受験を目前に友達を作らず勉強だけに意識を集中していて成績は優秀です。でも、ある日いじめに遭っていた同級生が飛び降り自殺をしてしまい、他の多くの生徒が無慈悲に現場にカメラを向けることに耐えられなくなったチェンは、亡くなった同級生の遺体を上着で覆います。そのことがきっかけで、今度はチェンが壮絶ないじめに遭っていくというストーリーです。
映画の冒頭の言葉には、本作がいじめ抑止の一助となり、苦しむ人々の希望になることを願うとあります。そんな本作では、チェンに向けられたいじめの陰湿さと壮絶さが描かれているのはもちろん、貧困から抜け出すには受験戦争に勝って名門校に入るしかないといった、貧困と過酷な受験戦争の関係も描かれています。また、チェンと出会うシャオペイが身寄りのない不良少年というところにも、貧困と家庭問題が表れていて、違法なことでしか生計を立てられない若者もいるという現実が突きつけられます。優等生のチェンと不良のシャオペイは運命的な出会いを果たし、それぞれの背景は違えどもその苦しい世界から抜けだそうと奮闘します。チェンは未来を見ることにいじめに耐え、シャオペイはチェンの姿から希望をもらいます。本作は、いじめや貧困という社会問題をテーマに、若者2人の純愛ラブストーリーとすることで、彼等なりのやり方で社会に立ち向かう姿を描いている点でとても魅力的です。社会が助けてくれないなら、自分達の力で自分を守るしかないと思った2人が、お互いだけを信じて戦う姿には思わずウルッとしてしまいます。ここで終わるかと思えるところでは終わらず、その後にさらなる展開があるのも見どころで、物語は二転三転し、最初から最後まで内容が詰まったストーリーとなっています。クライマックスは、本当の意味で幸せになるにはどうすれば良いかと問うてくる展開があり、ただ受験戦争に勝つだけでは意味がなく、何があっても大切にすべきことがあるというのも教えてくれます。
また、いじめる側の生徒の背景にも受験の重圧や家庭問題などが垣間見られ、いじめの問題を解決するには視野を広げて、大人がもっと子ども達に目を向け、大人達の態度から考え直さなければいけないということも実感させられます。いろいろな角度で観られる作品で、ぜひ幅広い層に観て欲しい作品です。

デート向き映画判定
映画『少年の君』チョウ・ドンユイ/イー・ヤンチェンシー

青春純愛ラブストーリーとしてもオススメの作品です。自分の人生を捨ててまで相手に尽くそうとするって、どんな感覚なのか。劇中ではそれは若さだとする大人も出てきますが、若さ以上に苦しみを耐え抜いて生きてきた2人だからこその強い絆に心を打たれます。チェンとシャオペイの2人が徐々に心の距離を縮めていく姿にも共感できるので、中高生カップルや、初デート、交際ホヤホヤカップルにもオススメです。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『少年の君』チョウ・ドンユイ

いじめは万国共通、誰にとっても身近な問題であり、キッズやティーンの皆さんは受験の重圧を感じている人もいると思うので、感情移入しやすい作品だと思います。国は違えど、この映画で描かれていることは日本でも起こっていることで、他人事としては観られません。もし何か困っていること、悩んでいることがあったら、相談したいなと考えている人を誘って本作を観てください。そうすれば、少し相談しやすいムードにできるかもしれません。

映画『少年の君』チョウ・ドンユイ/イー・ヤンチェンシー

『少年の君』
2021年7月16日より全国公開
クロックワークス
公式サイト

© 2019 Shooting Pictures Ltd., China (Shenzhen) Wit Media. Co., Ltd., Tianjin XIRON Entertainment Co., Ltd., We Pictures Ltd., Kashi J.Q. Culture and Media Company Limited, The Alliance of Gods Pictures (Tianjin) Co., Ltd., Shanghai Alibaba Pictures Co., Ltd., Tianjin Maoyan Weying Media Co., Ltd., Lianray Pictures, Local Entertainment, Yunyan Pictures, Beijing Jin Yi Jia Yi Film Distribution Co., Ltd., Dadi Century (Beijing) Co., Ltd., Zhejiang Hengdian Films Co., Ltd., Fat Kids Production, Goodfellas Pictures Limited. ALL Rights reserved.

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『お嬢と番犬くん』櫻井海音 櫻井海音【ギャラリー/出演作一覧】

2001年4月13日生まれ。東京都出身。

映画『ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝』ビル・スカルスガルド ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝【レビュー】

実に楽しい!良い意味で「なんじゃこりゃ?」というハチャメチャなノリなのに…

ポッドキャスト:トーキョー女子映画部チャンネルアイキャッチ202509 ポッドキャスト【トーキョー女子映画部チャンネル】お悩み相談「どうしたらいい出会いがありますか?」他

今回は、正式部員の皆さんからいただいたお悩み相談の中から、下記のお2人のお悩みをピックアップして、マイソンなりにお答えしています。最後にチラッと映画の紹介もしています。

映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』ベニチオ・デル・トロ/ミア・スレアプレトン/マイケル・セラ ザ・ザ・コルダのフェニキア計画【レビュー】

REVIEWこれぞウェス・アンダーソン監督作という、何から何までかわいい世界観でありながら…

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

映画『こんな事があった』前田旺志郎/窪塚愛流 こんな事があった【レビュー】

2021年夏の福島を舞台に、主人公の17歳の青年のほか、震災後も苦悩しながら生きる人々の姿を…

映画『パルテノペ ナポリの宝石』セレステ・ダッラ・ポルタ セレステ・ダッラ・ポルタ【ギャラリー/出演作一覧】

1997年12月24日生まれ。イタリア出身。

映画『ブロークン 復讐者の夜』ハ・ジョンウ ブロークン 復讐者の夜【レビュー】

『工作 黒金星と呼ばれた男』『アシュラ』などを手掛けたサナイピクチャーズが贈る本作は…

映画『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』西島秀俊/グイ・ルンメイ Dear Stranger/ディア・ストレンジャー【レビュー】

真利子哲也監督(脚本も担当)による西島秀俊主演作という情報のみで、毎度ながら前情報をほぼ入れずに観て、いろいろ良い驚きが…

映画『風のマジム』伊藤沙莉 風のマジム【レビュー】

マジムって何だろうから始まり、すぐに主人公の名前とわかると、次に「じゃあ、風のマジムってどういうことなんだろう?」という具合に…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 ファストムービー時代の真逆を行こうと覚悟を決めた!大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート前編

『るろうに剣心』シリーズ、『レジェンド&バタフライ』などを手掛けた大友啓史監督が<沖縄がアメリカだった時代>を描いた映画『宝島』。今回、当部の部活史上初めて監督ご本人にご参加いただき、映画好きの皆さんと一緒に本作について語っていただきました。

映画『宝島』妻夫木聡/広瀬すず/窪田正孝 沖縄がアメリカ統治下だったことについてどう思う?『宝島』アンケート特集

【大友啓史監督 × 妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太】のタッグにより、混沌とした時代を自由を求めて全力で駆け抜けた若者達の姿を描く『宝島』が9月19日より劇場公開されます。この度トーキョー女子映画部では、『宝島』を応援すべく、正式部員の皆さんに同作にちなんだアンケートを実施しました。

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『ふつうの子ども』嶋田鉄太/瑠璃
  2. 映画『ネクスト・ゴール・ウィンズ』マイケル・ファスベンダー
  3. 映画『バーバラと心の巨人』マディソン・ウルフ

REVIEW

  1. 映画『ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝』ビル・スカルスガルド
  2. 映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』ベニチオ・デル・トロ/ミア・スレアプレトン/マイケル・セラ
  3. 映画『こんな事があった』前田旺志郎/窪塚愛流
  4. 映画『ブロークン 復讐者の夜』ハ・ジョンウ
  5. 映画『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』西島秀俊/グイ・ルンメイ

PRESENT

  1. 映画『ホーリー・カウ』クレマン・ファヴォー
  2. 映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル
  3. 映画『ミーツ・ザ・ワールド』杉咲花/南琴奈/板垣李光人
PAGE TOP