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ちひろさん【レビュー】

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Netflix映画『ちひろさん』有村架純

物語が進むほど、人間の深いところに潜っていけるストーリーです。元風俗嬢の“ちひろさん(有村架純)”はお弁当屋で働いています。ちひろは誰にでも気さくに接する明るさがありながら、どこか謎めいています。そんなちひろが町の人々と関わるなかで、彼女が抱えてきたものが描かれていきます。
一見穏やかな日常を描きながら、登場人物の心の動きを丁寧に映し出す本作は、会話やふとした表情によって、観る者の心にも波を立てます。人に関わるのを恐れない一方で、人との距離も感じさせるちひろの性格もとてもリアルです。ちひろ以外のキャラクターにも見える、さまざまな“孤独”が映し出されている点も印象的。ただ、“孤独”を一色単にネガティブに捉えることなく、フラットに捉えている点にとても共感できます。また、ちひろが他人の存在、他人からもたらされる理不尽な出来事をどう捉えているかという姿勢から、ある種の処世術を学べます。同時にその考え方は彼女の孤独も表していて、“孤独”を連れ添うからこそ持てる強さにも見えます。もちろん彼女には弱い部分もあります。それでも、ありのままでいようとする姿に、やっぱり芯の強さを感じます。
彼女は人間について話す時に“星”という表現を使います。実は私も親しい人と話す時に使う表現で、個人的にこの感覚がすごくよくわかるだけに、一層感情移入しました。言葉で説明できない感覚だと思っていましたが、映画でこうして表現されて感動です。でも、刺さる人と、意味不明だと感じる人と二極化するのかもしれません。皆さんもご自身で確かめてみてください(どちらが良い悪いという話ではありません)。

デート向き映画判定
Netflix映画『ちひろさん』有村架純/リリー・フランキー

ちひろの言動を観て、「これ、すごくわかる!」となるか、「わからない」となるかで、2人の相性がはっきり見えてしまいそうな気がします。この感覚を共有できる相手なら一層2人の心の距離が縮まりそうである一方、それぞれが異なる感覚の場合は交際中も結構しんどいかもしれません。そういう意味で、1人でじっくり観て自分の価値観、人生観を見つめ直すのが良さそうです。

キッズ&ティーン向き映画判定
Netflix映画『ちひろさん』豊嶋花

幅広い世代のキャラクターが登場するので、どの世代の方が観ても親近感を持って観られると思います。ただし、キッズにはまだピンとこない部分も多少出てくるかもしれません。友達や家族との関係に悩んでいるティーンの皆さんは、切ない気持ちと同時に救いを感じる部分があるでしょう。世代を超えて人と人が交流するシーンも魅力的な作品なので、視野を広げるきっかけにするのも良さそうです。

Netflix映画『ちひろさん』有村架純

『ちひろさん』
2023年2月23日よりNetflixにて配信中
アスミック・エース
公式サイト

©2023 Asmik Ace, Inc. ©安田弘之(秋田書店)2014

TEXT by Myson

本ページの情報は2023年9月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

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