取材&インタビュー

『青い、森』清水尋也さんインタビュー

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映画『青い、森』清水尋也さんインタビュー

第2回未完成映画予告編大賞で予告編が平川雄一朗賞を受賞、その後、50分の映画として、気鋭の若手俳優を迎えて制作された『青い、森』で、突然姿を消した青年、波を演じている、清水尋也さんにインタビューをさせていただきました。主演から脇役までさまざま役柄を演じ、映画やドラマで大活躍中の清水さんに、俳優になったきっかけや役作り、好きな映画などについていろいろとお聞きしました。

<PROFILE>
清水尋也(しみず ひろや):波 役
1999年6月9日、東京都生まれ。2014年に出演した『渇き。』で壮絶ないじめを受けるボク役を演じ一躍注目を集める。主な映画出演作に『ソロモンの偽証』『ちはやふる』『ミスミソウ』『3D彼女 リアルガール』『貞子』『パラレルワールド・ラブストーリー』『ホットギミック ガールミーツボーイ』『青くて痛くて脆い』『妖怪人間ベラ』『甘いお酒でうがい』など。2021年は『東京リベンジャーズ』(英勉監督/2021年全国公開予定)他、声優初挑戦にして主演を射止めた劇場アニメ『映画大好き、ポンポさん』他多数の公開作を控えている。1st写真集「FLOATING」も好評発売中。

最初はまったく興味がなかった俳優。でも…

映画『青い、森』清水尋也

マイソン:
今回とてもミステリアスなキャラクターでしたが、どんな風に役作りをしたのでしょうか?

清水尋也さん:
基本あまり役作りをしないんです。台本を通して読むのも1、2回くらいで、最初に物語と役の立場を理解する上で読んで、後は撮影前日にセリフを覚えるくらいです。芝居は現場に立ってみないとわからないことが多いし、基本的には相手がいてのお芝居なので、相手がどう出てくるかによってこちらの感情も変わるので、あまり作らないんです。今回も同様であまり作り込まずに臨みました。

マイソン:
毎日コンディションが違うなか、感情を作らないといけないお仕事ですが、スイッチをオンオフするコツはありますか?

清水尋也さん:
僕は結構オンオフが激しいですね。私生活にひっぱられることもないし、仕事が終わってもその役が抜けないってことは一切ありません。撮影中もカメラが回る直前まではあまり緊張もしないですね。昔からそうなのであまりコツとかはわからないですけど…。
コロナで自粛中はいろいろ向き合うことが多かったので、仕事のことを考えたりもしましたが、普段はプライベートで仕事のことで考え込んだりはせず、プライベートはプライベートで割り切っています。自分の行きたいところに行って、会いたい人に会って、みたいに普通の人間として過ごすよう意識しています。役者である前に一人の人間なので、いくら仕事が上手くいっていようとも健康じゃなかったら意味がないし、家族、友達、周りにいる人達との関係性がうまくいっていないと意味がないと思っています。人としての生活と役者としての生活のどちらを選ぶか聞かれたら、即答で人としての生活を選ぶと思うし、そこは意識して区別しています。

マイソン:
ずっと役者をされていて、そこは変わらないですか?

映画『青い、森』清水尋也さんインタビュー

清水尋也さん:
そうですね。割と最初から芸能界のルールとか、こういう風にお芝居をするんだよとか、こうなったらこうっていうのをあまり教え込まれずに育ってきました。事務所に入ってすぐのオーディションで有り難いことにドラマのレギュラーが決まって、ポンと現場に放り出されて、現場にも一人で行って、割と放し飼いスタイルだったので。たとえるとスポーツ教室に通って運動神経を付けたというよりは、野生で木登りをして鍛えたという感じです。

マイソン:
もともと俳優になりたいと思ってオーディションを受けたんですか?

清水尋也さん:
いえ、1ミリも思っていませんでした。最初はやりたくないって言ってたんです。でも4つ上の兄が原宿でスカウトされて事務所に入って、主演を演った映画の初号試写を親と一緒に観にいった時に当時のマネージャーさんに「弟くんもやってみない?」と聞かれて。当時は「興味ないです」って言ってたんですけど、事務所のレッスンがあるから1度来て欲しいって言われて。端っこで見学して眠かったら寝ようかなくらいの感覚でいたんですよね。行ったら、兄や事務所の同世代の先輩がいて、いきなり3枚くらいのセリフ原稿を渡されて「10分で覚えて」って言われました。そこに行ってしまったら僕の負けでルールに従うしかないので、セリフを覚えてそのまま女優をされている先輩と芝居をさせられました。でも、それが楽しかったんです。充実してスリルもあって、それを1日やってしごかれて、帰り際にはおもしろいからやってみようって思ってたんです。で「やります」って話をして、そこからですね。

映画『青い、森』清水尋也

マイソン:
え〜!劇的な1日でしたね。

清水尋也さん:
そうですね。何の興味もなかったのに、朝と夜で真逆みたいな。今でも本当に感謝しています。

マイソン:
やってみたら違うんですね。

清水尋也さん:
そうですね。あの頃は中学生で、ずっとバスケットボールをやっていたんですけど、スポーツ選手になれるかっていうとそういうわけでもない。別にこれは調子にのってるとかじゃないのですが…、僕は小さい頃から何でもそこそこできて、苦手なことがあまりなかったんです。でも全部が70、80点で、100点のものがなくて。お芝居は最初はおもしろいからやってみようかな、くらいで始めたんですけど、だんだんやっていくうちにこれだったら100点を取れるかもしれないなと思うタイミングがどこかであったんです。それが長く続いている理由だと思います。

マイソン:
何でもできるから余計に先が見えちゃうんでしょうね。

清水尋也さん:
何をやりたいんだろうって考えていたタイミングで、ちょうどすごく刺激的な楽しいことにポンと巡り合えたので、飛び込めたというのもあります。僕が天才的にバスケットボールが上手かったら、芝居はやっていなかったと思います。

マイソン:
なるほど。で今回『青い、森』の中で最初ヒッチハイクをしてたり、ワイルドな旅ができる点で、男子が羨ましく思えたのですが、清水さんは、男の醍醐味というか、男はおもしろいって思ったことはありますか?

映画『青い、森』清水尋也

清水尋也さん:
あまり性別って気にしなくて、むしろ男で良かったと思うより、女の子って楽しそうって思うことがすごく多いです。

マイソン:
たとえばどんなことですか?

清水尋也さん:
メイクとか洋服とか。僕は洋服が好きなんですけど、ウィメンズのほうが入れ替わりが激しいし、ブランドが多いじゃないですか。そういうのもすごく楽しそうだし、メイクもちょっと目の下に塗る色が違ったり、眉毛の細さを変えただけで印象が変わったり、そういうのが見ていておもしろくて、一時期女性誌とかを読んでましたね。それが僕の服に何か影響するわけじゃないんですけど、今こういうのがトレンドなんだ〜って見てました。

マイソン:
ファッションに興味があるということは、将来的にデザインをしたいとかもありますか?

清水尋也さん:
作ってみたいと思いますね。ブランドをやりたいとかこだわりはないですけど、「自分が着たい服は自分で作ったほうが早くない?」くらいの感覚です。すごくデザインが好みなのに、そのブランドのサイズ感が小さくて、僕は身長が大きいので着られないっていうのが結構あるんです。そういうのを加味すると、自分が着たい服を自分で作れる環境だったらすごく良いだろうなと思います。

マイソン:
楽しみですね。俳優を始めてから、映画を観る側としての変化はありますか?

清水尋也さん:
変わりましたね。純粋には観られないです。それがたぶん最初はイヤだったんですよね。僕は小さい頃からドラマが好きだったんですけど、この仕事を始めてからあまり観なくなりました…。

映画『青い、森』門下秀太郎/田中偉登

マイソン:
それは観ながら余計なことを考えちゃうからですか?

清水尋也さん:
たぶんそうですね。この仕事を始めた時は中学生だったので、明確にそうだったかはわからないですけど、ずっとドラマが好きでテレビっ子だったんです。でも今は観るとしたら洋画です。言語が違うので、まだ純粋に観られるというか。邦画はどうしても作り手側の気持ちになっちゃうし、何を観ても誰かしらお会いしたことがある方が出てることが多いので、どうしても純粋に観られないというのはあると思います。

マイソン:
では最後に、これまでに大きく影響を受けた映画もしくは監督や俳優などを教えて下さい。

清水尋也さん:
ターニングポイントというか、感銘を受けたタイミングが大きく分けて3つあって、最初にこの仕事を続けようと思ったのが、『ヒミズ』を観てなんです。最初は楽しいからやってみようくらいのノリだったのが、『ヒミズ』で当時18歳前後の染谷さんと二階堂さんのお芝居を観て、明確な理由はないんですけど、「この仕事を続けないといけない、続けよう」って思ったんです。そこから何か僕は深いものに接しているんだなという自覚が出てきたし、楽しいからやってるっていうのは変わらないんですけど、やっぱりお芝居って奥が深いんだなと自覚も芽生えました。あとは『ダークナイト』のヒース・レジャーを観て、彼のバックボーンも込みで、ホンモノっているんだなって思って単純に圧倒されました。ジム・キャリーも好きなんですよね。僕はもともとコメディが好きで、人生で初めてハマった映像作品がローワン・アトキンソンの『Mr.ビーン』なんです。彼の作品は『ジョニー・イングリッシュ』も観てるし、ジム・キャリーの作品もほとんど観てます。ジム・キャリーの『エターナル・サンシャイン』を観て、「コメディやってる人って、本当にお芝居が上手いんだ」と思いました。日本のコメディは笑わせようとしているコメディだけど、ジム・キャリーは大げさな部分もありつつ、ローワン・アトキンソンやエディ・マーフィも、海外のコメディは人間が何かを一生懸命やってる姿っておもしろいっていうのを映しているように感じるんですよね。彼等はおもしろくしようとしてなくて、本当にそれを一生懸命やろうとしてるのが、結果的に観ておもしろくなってて、みたいな。『トゥルーマン・ショー』もそうですね。それと『ユージュアル・サスペクツ』は、普通に大どんでん返しの映画を探してたら出てきて。漏らしそうになるくらいの勢いでビックリしました(笑)。

映画『青い、森』清水尋也さんインタビュー

マイソン:
ハハハハ、確かに「え〜〜〜!」ってなりますよね。

清水尋也さん:
「ケヴィン・スペイシー、やばっ!」みたいな。あと『インセプション』も好きです。クリストファー・ノーランが好きなんですよ。『TENET テネット』もおもしろかったです。

マイソン:
やっぱり、たくさんご覧になってますね!

清水尋也さん:
でも、それくらいですね。観たいと思ったものしか観ないので。あと『スリー・ビルボード』はすごくおもしろかったです。『パラサイト 半地下の家族』もおもしろかったし、賞を獲るとテレビにもニュースにも出てくるので、自然と目に入るから観たいなと思って。だから受賞している作品を観ることが割と多いんです。『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』とかも観たし、…やっぱり洋画が多いですね。あとは“トイストーリー”とか、ピクサーが好きです(笑)。

マイソン:
可愛いのも観るんですね(笑)。いっぱい挙げていただいて嬉しいです。今日はありがとうございました。

2020年10月28日取材 PHOTO&TEXT by Myson

映画『青い、森』清水尋也

『青い、森』
2020年11月6日より全国順次公開
監督:井手内 創/内山拓也
出演:清水尋也/門下秀太郎/田中偉登/伊藤公一/岩崎楓士/山田登是
配給協力:SPOTTED PRODUCTIONS

幼い頃に両親を亡くし、育ててくれた祖父にも先立たれた波は、孤独な日々を過ごしていたが、同級生の志村と長岡と出会う。3人は徐々に心を通わせていき、高校最後の思い出にヒッチハイクの旅に出るが、波は志村と長岡の前から忽然と姿を消してしまう。

公式サイト 映画批評&デート向き映画判定

©2020オフィスクレッシェンド

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PRESENT

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  2. 映画『あの歌を憶えている』ジェシカ・チャステイン/ピーター・サースガード
  3. 映画『ドライブ・イン・マンハッタン』ダコタ・ジョンソン/ショーン・ペン
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