刑務所や拘置所に収容された人への差入を代行する“差入屋”をテーマに、人間の可笑しさと切なさを描いたヒューマンサスペンス『金子差入店』。今回は本作で二ノ宮佐知役を演じた川口真奈さんにインタビューをさせていただきました。本作で映画デビューを飾った川口さんに映画初出演の感想や、共演者との撮影エピソードについて直撃しました。
<PROFILE>
川口真奈(かわぐち まな):二ノ宮佐知 役
2007年生まれ。広島県出身。中学3年生の時、芸能プロダクション“ホリプロ”が主催する新人発掘オーディション「第45回ホリプロタレントスカウトキャラバン」で準グランプリを受賞。2025年、本作『金子差入店』で映画デビューを果たす。特技は裁縫とカリンバ、趣味は図書館巡り。また、今後は映画『やがて海になる』の公開が控えている。
本当に私の中で一生残る作品だと思います

シャミ:
本作が映画デビュー作となりますが、最初に本作の台本を読んだ時に物語や二ノ宮佐知というキャラクターにどんな印象を持ちましたか?
川口真奈さん:
私とは全然境遇が違う少女だと感じましたが、どこかにこういう子がいるかもしれないと思い、全力で演じようと思いました。私自身は、人とわりとすぐに馴染めるほうなのですが、目上の方々に囲まれた時や、初めての方と挨拶をする時に緊張することはあるので、佐知はそういった気持ちを常日頃からずっと抱えているんだろうなと思いました。人に対する敵対心や恨みとか、そういう気持ちもどこか共感できる部分がありました。
シャミ:
佐知に共感できる部分があったんですね。監督とは役や物語について何かお話されたことはありましたか?
川口真奈さん:
監督からは、「佐知は本当に不幸なことしか体験していないから、喜びの感情は出さずに常に気持ちは暗めで」と言われました。現場では思ったように自由に演じて欲しいということだったので、役の魅力を最大限引き出せるように頑張りました。

シャミ:
本当に初めてとは思えないくらい自然な演技でした。
川口真奈さん:
ありがとうございます!
シャミ:
佐知は複雑な背景を持った人物でした。演じる上で、特に意識された点や気をつけた点、事前に準備されたことなどはありますか?
川口真奈さん:
意識した点は、佐知は常に周りを睨んでいて、世界を嫌っている人物であるということです。私自身は、笑顔が多いねとよく言われますが、この役を演じている時だけは悲しみや怒りの感情を常に持つようにしていたので、撮影期間中は皆に暗いねと言われたり、学校の友達から「怒ってる?」と聞かれたことがありました。それだけ役に入り込んでいたんだと思います。それから役のために準備したことは、唖者や売春というあまり聞きなじみのない言葉があったので、図書館で本を読んだり、ネットで調べたりして、役と繋ぎ合わせて考えました。

シャミ:
さまざまな準備をされて佐知を演じたということですが、特に難しかった点や苦労された点はありますか?
川口真奈さん:
佐知は言葉を話さない子だったので、監督に表情だけで伝えて欲しいと言われました。眉の動きや目線、口を噛むとか、そういった細かな表現を大事にして演じるようにしました。過去に表情が乏しいと言われたことがあったので、顔のトレーニングやマッサージをして、なるべく稼働域を広げるようにしました。些細な怒りや小さな悲しみなども細かく綺麗に演じられるように練習をしました。
シャミ:
すごいですね!台詞があるよりも表情だけで演じるほうが難しそうですね。
川口真奈さん:
最初は長い台詞や感情を激しく表現するほうが難しいのかなと思っていましたが、今回の台本を読んだ時にほとんどが「…」となっていて台詞がなかったので、難しそうだなと思いました。だからこそ私にとってはすごくチャレンジな役で、実際に演じてみて少し成長できたかなと思います。

シャミ:
初めて映画の現場に参加してみた感想はいかがですか?
川口真奈さん:
今までは外から見ていた映画の世界を間近で見ることができ、新鮮でした。いろいろな業界用語が飛び交い、高そうなカメラを目の前に、こうやって撮影をして映画のワンシーンになっていくんだなという驚きと喜びがありました。
シャミ:
その中にご自身がいるのは、すごく新鮮な感覚になりそうですね。
川口真奈さん:
はい、不思議な感覚でした!

シャミ:
丸山隆平さんや岸谷五朗さんとの共演シーンが多くありましたが、一緒にお仕事をしてみていかがでしたか?
川口真奈さん:
丸山さんはすごく明るくて、現場を盛り上げてくださいました。撮影が冬の寒い時期で、私が手を擦って寒そうにしていたら丸山さんがカイロを持ってきてくださったんです。その時に「どっちの手に入ってると思う?」と言ってくれたのですが、右手からカイロが半分見えていて、かなりわかりやすくて(笑)。そうやって私の緊張を和ませてくださり、そのおかげで自然な演技ができたと思います。
岸谷さんは、本当にベテランの俳優さんで、私が緊張している姿を見て、「僕もあなたと同じくらいの時に初めて劇団に入って、たくさん失敗をしたし怒られだけど、その経験が今に結びついている」というお話をしてくださいました。そうやってお話をしたことで、1日目から現場に溶け込めた気がしました。

シャミ:
それぞれ撮影裏で素敵な交流があったんですね。
川口真奈さん:
はい、とても安心しました。
シャミ:
実際に完成した作品をご覧になった感想を聞かせてください。
川口真奈さん:
映画は2回観ました。初めは大きなスクリーンに自分が映っているのを観て、感動しました。2回目の時は、1回目とは違う気づきがあり、3回目も観たいなと思いました。“差入屋”という今までにないテーマで、作品自体も興味が湧くシーンがたくさん切り取られていて、その中に私も関わらせていただき、良い役をいただけたので、本当に私の中で一生残る作品だと思います。

シャミ:
川口さんが特に注目して欲しいシーンはありますか?
川口真奈さん:
1番最後のシーンです。佐知自身の心が大きく揺れ動く場面なので、そこに注目して観て欲しいです。
俳優のお仕事と出会ってから自分に自信がついて毎日が楽しくなりました
シャミ:
中学3年生の時に「第45回ホリプロタレントスカウトキャラバン」で準グランプリを受賞されています。最初に俳優のお仕事に興味を持ったのはいつ頃だったのでしょうか?
川口真奈さん:
スカウトキャラバンには姉が応募してくれました。今まで俳優さんというのはテレビの向こう側の遠い存在だったので、自分がまさかそちら側に行けるとは思ってもみませんでした。最初の審査が通った時には緊急で家族会議をしました。人生が変わるかもしれないということで、今後について話し合いました。最初は自分が受かるとは思っていなかったし、あまり乗り気ではなかったのですが、父が「人生一度きりだからチャレンジしてみたらどう?」と言葉をかけてくれ、私もできるところまでやってみようと前向きになれました。
シャミ:
すごく素敵なご家族ですね!その結果準グランプリを受賞され、今に至りますが、実際に俳優のお仕事をしてみていかがですか?

川口真奈さん:
映画の撮影中はずっと興奮していて緊張や不安、喜びの感情があって、顔が真っ赤な状態だったので、パウダーを塗って隠してもらっていました。この作品の撮影期間中に初めて役に入り込むという感覚を体感して、自分は二宮佐知なんだという初めての感情になりました。
シャミ:
実際にお仕事を始める前と後とで俳優に対するイメージで変わった点はありますか?
川口真奈さん:
元々人前に出るのは好きだったのですが、誰かここに立ってと言われた時に、端っこにいたり、自信が少し足りないというか、自分に対してどこか物足りなさを感じていました。でも、このお仕事と出会ってから自分に自信がついて毎日が楽しくなったので、私にとって良いきっかけになったと思います。
シャミ:
まさに運命の出会いだったんですね。
川口真奈さん:
本当にそうです。
シャミ:
普段から映画はご覧になりますか?
川口真奈さん:
はい、観ています!普段は結構シリアス系の作品を観ることが多くて、1番好きな作品は『告白』です。日本の社会的な作品や、わりと現実的で少し暗いところもあるような作品が何か自分に気づきを与えてくれるので好きです。

シャミ:
シリアス系の作品はおもしろいですよね。他にもお気に入りの作品はありますか?
川口真奈さん:
ドラマ『過保護のカホコ』が好きです。日常を垣間見ているような自然な作品で大好きです。私もああいうナチュラルな演技ができるようになりたいなと思います。
シャミ:
プロフィールの特技の欄にカリンバとありました。カリンバは珍しい楽器ですが、どのようなきっかけで演奏されるようになったのでしょうか?
川口真奈さん:
姉が大学に入る時に新しい楽器を買うということでついて行ったのですが、その時に溜まったポイントで私も何か好きな楽器を買わせてもらえる権利が回ってきて、それでカリンバを迎えました。カリンバの演奏は今でも日々のルーティンになっています。私はピアノを習ったことがあり、和音が好きだったので音を重ねて奏でるカリンバにすごく癒されています。

スタイリスト: Mika Yamashina
シャミ:
資料に「何にでも積極的に挑戦し、さまざまな役を通して多くの人を笑顔にできるような俳優を目指したい」とありました。今後挑戦してみたい役や、作品のジャンルはありますか?
川口真奈さん:
今は17歳で高校生なのですが、時代や年齢にとらわれない幅広い役に挑戦していきたいです。それから目力があると言われるので、そういった私の特徴を生かせるような作品に関わっていきたいです。
シャミ:
応援しています!本日はありがとうございました!
2025年4月24日取材 Photo& TEXT by Shamy

『金子差入店』
2025年5月16日より全国公開
監督・脚本:古川豪
出演:丸山隆平/真木よう子/三浦綺羅/川口真奈/北村匠海/村川絵梨/甲本雅裕/根岸季衣/岸谷五朗/名取裕子/寺尾聰
配給:ショウゲート
刑務所や拘置所に収容された人への差入を代行する“差入屋”。金子真司は一家で差入店を営んでいた。ある日、息子の幼馴染の女の子が殺害される事件が発生する。彼女の死にショックを受けるが、犯人の母親が差入をしたいと尋ねてくる。 金子は差入屋として仕事を全うしながらも、日に日に疑問と怒りが募り始める。そんな時、毎日のように拘置所を訪れる女子高生と出会い…。
公式サイト
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情報は2025年5月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。