学び・メンタルヘルス

心理学から観る映画52:不登校の現状と取り組み、そして子ども達の居場所

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映画『風たちの学校』

今回は日本の不登校の現状や対策を取り上げつつ、ドキュメンタリー映画『風たちの学校』をご紹介します。

日本の不登校の定義
年度内に30日以上欠席した児童生徒で、「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にあること(ただし、病気や経済的な理由によるものを除く)」。

臨床発達心理士認定運営機構(監修)西本絹子・藤崎眞知代(編)(2018)

文部科学省(2023)によると、小学校から高等学校までの不登校者数は約30万人に達しており、そのうち、90日以上不登校であるにもかかわらず、「学校内外の専門機関等で相談・指導等を受けていない小・中学生が4.6万人」いるといいます。

不登校の児童生徒と不登校でない児童生徒を対象に行われた調査(公益社団法人子どもの発達科学研究所・浜松医科大学子どものこころの発達研究センター,2024)における、不登校の児童生徒の回答では、「仲の良い友達がいない」「先生と合わなかった」といった人間関係や、「宿題ができない」「学校の決まりのこと」というような学校生活への不適応、「からだの不調」「気持ちの落ち込み・いらいら」「夜眠れない・朝起きられない」など心身や生活リズムの不調が目立ちます。
また同調査では、不登校の児童生徒の「きっかけ要因」の24.9%が、「入学、進級、転校など」に該当しています。

不登校の要因になり得る、進級、進学等を機に起こる心理的変化や問題

映画『風たちの学校』
『風たちの学校』

<9歳の壁>
「言葉を媒介とした抽象的思考を必要とする学習が急激に増」し、本格的な教科教育へ移行する時期にあたる。「9歳の壁」を乗り越えるには、量的・質的に豊かな会話の積み重ねが有用とされている。

<自尊感情 self-esteem>
自分には価値があるとする、自己に対する肯定的な感情。8歳頃から出現する(Harter,1999)。

<小1プロブレム>
授業に集中できない、集団行動がとれないというような、小学校に入学したばかりの児童に表れる態度によって、数ヶ月以上にわたり正常な学級活動が成立していない状況。この問題は、1990年代後半から取り沙汰されている。「子どもの耐性の低さ、基本的な生活習慣の未獲得、家庭の教育力の低下、特別な支援を必要とする子どもの存在によって指導が行きわたらないこと、集団生活の経験不足」などが要因として挙げられている(東京都教育委員会,2013)。

<中1ギャップ>
中学1年生は思春期に移行する時期であり、小学校と中学校では大きく環境が変わるため、学習面、人間関係等で上手く適応できない場合に大きなストレスとなり、心身に支障をきたす。行動面では、いじめ、不登校、暴力行為などに発展する場合がある。

映画『風たちの学校』
『風たちの学校』

<起立性調節障害 Orthostatic Dysregulation:OD>
自律神経の不調によって、起立時に脳血流や全身への血行が維持できず、立ちくらみ、食欲不振、倦怠感、思考力や集中力の低下などが起こる病気。10歳から16歳の間に発症しやすいとされており、ODの約半数が不登校を併存(不登校の3〜4割がOD)するという。

<スチューデント・アパシー>
大学生の引きこもり状態を指す、抑うつや不安を伴う適応障害。キャンパス・ハラスメント、「悩む力の乏しさ・言語化困難」、社会的スキルの未熟さ、生活管理の困難や経験不足などが背景にあると考えられている。

以上、用語の説明は、臨床発達心理士認定運営機構(監修)西本絹子・藤崎眞知代(編)(2018)より引用。


上記のほか、不登校の要因はさまざまで、背景にある問題を特定し対処する必要があるのはもちろんのこと、“子ども達の居場所”を提供するという支援もあります。

映画『風たちの学校』
『風たちの学校』

ドキュメンタリー映画『風たちの学校』では、不登校などさまざまな背景を持つ子ども達を受け入れている、愛知県奥三河の黄柳野(つげの)高校(全寮制全日制普通科)の日々を映し出しています。本作の田中健太監督は自らも不登校を経験した、黄柳野高校の卒業生です。

映画『風たちの学校』
『風たちの学校』

本作では、生徒達が文化祭の準備に励む姿や、保護者と共に生活態度や成績、進路について話し合う姿が映し出されています。教師と生徒の距離が近く、生徒同士で助け合う様子が印象的です。子ども達の心はとても繊細で、他者とのやり取りで傷つく様子もある一方、驚くほど成長を遂げる姿も観られます。保護者が子どもの成長を見守り、子どもの判断を尊重する姿にも共感できます。

映画『風たちの学校』
『風たちの学校』

映画館が“居場所”を提供している例もあります。“うえだ子どもシネマクラブ”は、子ども達の新たな居場所として、映画館を活用しています。この取り組みは、中間支援NPOのアイダオと上田映劇の協働事業として行われており、“うえだ子どもシネマクラブ”への参加を、「出席扱い」とする学校も一部あるとのことです。

※文部科学省が定める「出席扱い」についてはこちら

時代の変化に伴い、学校の在り方や、学校と子ども達の関係も変化が必要になってきたように思います。不登校という概念も変わってくるのかもしれません。子ども達に多くの選択肢ができることで解決できる部分もあるのではないかと考えます。

<参考・引用文献>
臨床発達心理士認定運営機構(監修)西本絹子・藤崎眞知代(編)(2018)臨床発達支援の専門性 (講座・臨床発達心理学).ミネルヴァ書房
文部科学省(2023)COCOLOプラン
公益社団法人子どもの発達科学研究所・浜松医科大学子どものこころの発達研究センター(2024)文部科学省委託事業 不登校の要因分析に関する調査研究 報告書
Harter, S.(1999)The construction of the self: A developmental perspective. New York: Guilford Press.
東京都教育委員会(2013)小1問題・中1ギャップの予防・解決のための「教員加配に関わる効果検証」に関する調査の結果について
うえだこどもシネマクラブ
文部科学省(n.d.)「(別記1)義務教育段階の不登校児童生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合の指導要録上の出欠の取扱いについて」

映画『風たちの学校』

『風たちの学校』
2025年3月15日より全国順次公開
監督・撮影・編集:田中健太
公式サイト

© 合同会社ななし

TEXT by Myson(武内三穂・認定心理士)

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