今回は5人のキャラクターが個々に特有の感じ方で他者の気持ちを捉えながら、自分自身と向き合う姿を描いた『か「」く「」し「」ご「」と「』を取り上げます。
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本作では、5人のメインキャラクターそれぞれの目に周囲はどう見えていて、それを本人はどう受けとめているのかが描かれている点で、SELの基礎的社会的能力の「自己への気づき」「他者への気づき」がベースにあるといえます。他者の気持ちがどう見えているかについては、5人それぞれに異なっていて、とてもユニークです。

相手が考えていること、感じていることをキャラクターがどのように捉えているかはビジュアルで表現されています。それは頭の上に見えたり、心臓の前に見えたりとさまざまです。あくまで私の解釈に過ぎませんが、頭の上に見えるイメージは認知寄りの受け止め方、心臓の前に見えるイメージは感情寄りの受け止め方と解釈すると、たまたまかもしれませんが、男性は認知寄り、女性は感情寄りという設定になっているようです。どんなビジュアルで表現されているかというヒントは、公式サイトのキャスト紹介の写真に載っていますので、気になる方は覗いてみてください。

そして、それぞれに他者のどんなところに注目しているのかも異なります。奥平大兼が演じる大塚京は、相手の表情などからどんなことを考えているのか気にしているようです。出口夏希が演じる三木直子は、胸の高鳴りのようなものに注視しているようです。佐野晶哉(Aぇ! group)が演じる高崎博文は、周囲の態度を種類や温度感で捉えているようです。菊池日菜子が演じる黒田文は、相手の鼓動で気持ちを感じ取っているように見えます。そして、早瀬憩が演じる宮里望愛は気持ちの向きで周囲の関係性を捉えているようです。

5人のこうした”能力”は、とてもわかりやすいイメージで表現されています。そして、5人のキャラクターは、他者の態度を個々にさまざまに解釈し、自分はどう行動するかを考えながら過ごしています。その様子は、まさにSELの基礎的社会的能力でいうと「自己のコントロール」「対人関係」にあたります。

でも、他者に対して誤解をしている場合もあります。だから、実際のコミュニケーションを経て、相手の本心を知る(=「他者への気づき」)と同時に、「自己への気づき」も得ます。そして、「自己への気づき」を得た上で、またそれぞれに選択を重ね、どんどん成長していきます。
本作はとても爽やかな青春映画なので、難しいことは考えずに楽しんでいただけるのはもちろんのこと、上記のようにSELの教材としてピッタリの要素が含まれているので、知らずしらずにSELにもなる作品といえます。

『か「」く「」し「」ご「」と「』
2025年5月30日より全国公開
松竹
公式サイト
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© 2025『か「」く「」し「」ご「」と「』製作委員会
TEXT by 武内三穂(認定心理士)
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情報は2025年5月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。
