REVIEW
テレビシリーズ、映画版と全部観てきた者として、15年の歴史を振り返ると、感慨深いものがあります。1912年のイギリスを舞台にして始まった物語は、本作で描かれる1930年夏を舞台にして幕を閉じます。本作で映るロンドンの町並みを観ても、時代の大きな変化を感じると同時に、何よりクローリー家の状況に時代の変化が表されています。

本作の序盤では、ロンドンで舞台鑑賞に興じるグランサム伯爵ことロバート(ヒュー・ボネヴィル)やメアリー(ミシェル・ドッカリー)達の姿が映し出され、活気のあるロンドンの町の雰囲気に一気に引き込まれます。そして、本シリーズの世界観を象徴する社交界のシーンではその華やかさにワクワクさせられつつ、あるスキャンダルによって、一気に緊張感が高まります。

そういえば、あのキャラクターが出てこないなと思ったら、「そういうことか!」とすぐわかり、複雑な心境になるものの、そのスキャンダルこそが時代の変化を表していて、最終的には共感できる方のほうが多いのではと予想します。

テレビシリーズ終了後の映画版では特に、ダウントン・アビーを含め、クローリー家の資産に関する実権をどう継いでいくかが描かれてきました。本作でもその点がテーマの1つとなっていると同時に、貴族そのものの存続にまつわるストーリーとなっています。クローリー家だけの問題としてではなく、社会構造の変化に乗れるか乗れないかが問われている点で、登場人物達の葛藤は、時代の変化が激しい現代に生きる私達にも通じるように感じます。


グランドフィナーレとあって、メインキャラクター達の見せ場がそれぞれちゃんと作られているのも嬉しいポイントです。本作で活躍が目覚ましいのは、イーディス(ローラ・カーマイケル)です。本当に頼もしく成長したイーディスが、陰の立役者として活躍する姿は観ていて爽快です。また、本作には1930年代に実在した俳優・脚本家のノエル・カワード(アーティ・フラウスハン)も登場します。社会の権力構造にショービズ界がどう関わってくるのかにも要注目です。


本作では、クローリー家の世代交代だけではなく、使用人達の世代交代も描かれています。引退する者も引き継ぐ者も皆それぞれに幸せそうに見えて、最終的に多幸感いっぱいのラストとなっています。美しいダウントン・アビーや、1930年当時のロンドンの町並み、完璧に再現されたリッチモンド劇場(1899年に開場)やアスコット競馬場のロイヤルエンクロージャー(王室専用席)なども、ぜひ大きなスクリーンで観て、目に焼き付けてください。
デート向き映画判定

ストーリーが素晴らしいのはもちろんのこと、本作は目で楽しむ要素が大いにあります。テレビシリーズや映画版の前作を観ていない方もぜひ、1930年代のイギリスに旅行に行く気分で観てみてください。2人とも本作を気に入ったら、テレビシリーズや前作を振り返ったり、一緒にイギリス旅行の計画を立てるのも良いでしょう。
キッズ&ティーン向き映画判定

本作で描かれるイギリスは、貴族と一般庶民の垣根がなくなりつつある、現代に近い状況になっています。時代ごとの社会の価値観は、社会構造を変える力があるということが伝わってくるストーリーとなっているので、社会見学のような感覚で観てみるのもアリでしょう。貴族には貴族の苦労が、庶民には庶民の苦労があるのもわかるので、視野を広げるきっかけにもなりそうです。

『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』
2026年1月16日より全国公開
ギャガ
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TEXT by Myson
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