REVIEW

あの歌を憶えている【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『あの歌を憶えている』ジェシカ・チャステイン/ピーター・サースガード

REVIEW

映画のキービジュアルだけ見ると、穏やかなストーリーを想像させられるものの、実際は重いテーマを扱っています。そして、主人公が心に抱えた問題に立ち向かうなかで、記憶が鍵となっています。ちなみに本作の原題は、“MEMORY”です。監督、脚本は『ニューオーダー』で社会の闇をユニークな世界観で比喩したスリリングな物語を描いた、ミシェル・フランコが手掛けています。

映画『あの歌を憶えている』ジェシカ・チャステイン

アルコール依存症の互助会のシーンから始まる本作の主人公は、ジェシカ・チャステインが演じるシルヴィアです。彼女は何か心に抱えているものがあることは最初からうかがえつつ、具体的な内容はしばらく明かされません。ただ、警戒心の強さや13歳の娘に対して何かと心配し厳しくする様子から、深刻な問題を抱えていることは伝わってきます。

映画『あの歌を憶えている』ピーター・サースガード/ジョシュ・チャールズエルシー・フィッシャー

一方、ピーター・サースガードが演じるソールは最初何者かが不明で、登場直後のシーンはすごく不気味に映ります。そこから、徐々に彼の真相がわかり、シルヴィアとソールの物語が展開していきます。2人がどんな化学反応を起こすかは本編をご覧いただくとして、2人は異なる状況で記憶に苦しめられています。言い換えると、2人の辛さは、忘れられない面、忘れてしまう面という記憶の表と裏に紐付いています。

映画『あの歌を憶えている』ピーター・サースガード/ブルック・ティンバー

そんな2人の出会いはこれまでの日常が変わるきっかけとなり、閉じていた蓋が開き、問題の根っこと向き合うことになりながらも、ゆっくりと再生していく道が見えるラストには、とても温かい空気が漂います。途中辛いシーンもあるものの、最後には救いがあるので、デトックスをしたい方は観てみてください。

デート向き映画判定

映画『あの歌を憶えている』ジェシカ・チャステイン/ピーター・サースガード

重い内容なので初デートで観るには不向きに思います。ただ、心の中に抑えてきた感情があるきっかけで吹き出し、最終的に良い変化を招く過程を描いているので穏やかな気持ちになれます。なので、パートナーが何か1人で抱えてそうな様子だったら、一緒に観るのもありかもしれません。ただ、無理矢理何か聞き出すようなことはしないほうが良いでしょう。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『あの歌を憶えている』ジェシカ・チャステイン/ブルック・ティンバー

主人公シルヴィアの娘アナは、皆さんと年齢が近く、子ども目線で親の問題を見つつ、自分も少なからず大人達の影響を受けるので、共感できる部分があると思います。親は子どもに辛い思いをさせたくないからこそ、自分自身の辛い経験が子育てや教育方針に反映されているケースは少なくないでしょう。事情がわからずにただ厳しくされると反抗したくなるものの、本作を観ると少し視野が広がり、大人に対する視点も変わるかもしれません。

映画『あの歌を憶えている』ジェシカ・チャステイン/ピーター・サースガード

『あの歌を憶えている』
2025年2月21日より全国順次公開
セテラ・インターナショナル
公式サイト

ムビチケ購入はこちら
映画館での鑑賞にU-NEXTポイントが使えます!無料トライアル期間に使えるポイントも

© DONDE QUEMA EL SOL S.A.P.I. DE C.V. 2023

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2025年2月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『金髪』白鳥玉季さんインタビュー 『金髪』白鳥玉季さんインタビュー

今回は『金髪』で生徒の板緑役を演じた白鳥玉季さんにインタビューさせていただきました。“金髪デモ”を起こすキーパーソンである板緑を演じた感想や、撮影裏でのエピソードを直撃しました。

映画『TOKYOタクシー』倍賞千恵子/木村拓哉 TOKYOタクシー【レビュー】

クリスチャン・カリオン監督『パリタクシー』を原作とした本作は、東京にある柴又から神奈川の葉山にある高齢者施設までの道のりを舞台に、山田洋次監督が映画化…

映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ 心理学から観る映画59:研究倫理に反する実験とその被害『エクスペリメント』『まったく同じ3人の他人』

『まったく同じ3人の他人』というドキュメンタリーを観ました。生き別れた三つ子が再会する感動のストーリーかと思いきや、驚愕の背景を知り、研究倫理について改めて考えさせられました。そこで今回は研究倫理をテーマとします。

映画『コンビニ・ウォーズ~バイトJK VS ミニナチ軍団~』ヴァネッサ・パラディ ヴァネッサ・パラディ【ギャラリー/出演作一覧】

1972年12月22日生まれ。フランス出身。

映画『ブルーボーイ事件』中川未悠/中村中/イズミ・セクシー/真田怜臣/六川裕/泰平史/錦戸亮 ブルーボーイ事件【レビュー】

高度成長期にあった1965年の東京では、街の浄化のため、警察はセックスワーカー達を厳しく取り締まっていました。ただ、セックスワーカーの中には性別適合手術(当時の呼称は性転換手術)を受けて女性的な体をした通称ブルーボーイが…

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人 君の顔では泣けない【レビュー】

高校1年生の夏、坂平陸(武市尚士)と水村まなみ(西川愛莉)はプールに一緒に落ちたことで体が入れ替わってしまいます。2人はすぐに元に戻ることができず15年を過ごし…

映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト スプリングスティーン 孤独のハイウェイ

物語の舞台は1982年。ブルース・スプリングスティーン(ジェレミー・アレン・ホワイト)は、名声を手に入れながらも、葛藤を抱えて…

映画『2つ目の窓』松田美由紀 松田美由紀【ギャラリー/出演作一覧】

1961年10月6日生まれ。東京都出身。

「第38回東京国際映画祭」クロージングセレモニー:受賞者 東京グランプリは『パレスチナ36』!第38回東京国際映画祭ハイライト

2025年10月27日(月)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開幕したアジア最大級の映画の祭典である第38回東京国際映画祭が、11月5日(水)に閉幕。今年も個性豊かな作品が多数出品され、さまざまなイベントが実施されました。以下に、第38回東京国際映画祭ハイライトをお届けします。

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  2. 映画学ゼミ2025年11月募集用
  3. 映画『おーい、応為』長澤まさみ

REVIEW

  1. 映画『TOKYOタクシー』倍賞千恵子/木村拓哉
  2. 映画『ブルーボーイ事件』中川未悠/中村中/イズミ・セクシー/真田怜臣/六川裕/泰平史/錦戸亮
  3. 映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人
  4. 映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト
  5. 映画『平場の月』堺雅人/井川遥

PRESENT

  1. 映画『TOKYOタクシー』オリジナルパラパラメモ
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP