REVIEW

ニューオーダー【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ニューオーダー』ネイアン・ゴンザレス・ノルビンド

あ〜怖い!ホラーではないし、世の中が一瞬にして混沌とした世界に変わっていく様子を淡々と映しているだけなのに、これと同じことがどこかで起きているとリアルに感じてゾッとします。まず、冒頭で意味深なシーンが並べられ、何が起こっているのかわからない不安を観る者に与えます。次に物語の舞台は豪邸へ移り、そこで行われている結婚式では和やかで幸せそうな空気が流れています。そして、ある出来事をきっかけに、メインキャラクターの人となりが見えてくるのですが、突然物語が急展開を見せます。目の前の世界が一瞬にして秩序を失い、そこには常識もなければ良心もない世界が広がります。だから、素直にキャラクターそれぞれを観察して物語を追っていたら、「さっきのあのやり取りは何だったんだ!」と、見事にフェイントにかけられてしまうでしょう。本作は徹底的に絶望を見せつける点で、かなりのパンチ力があります。
“新しい世界”では、欲望に駆られた野蛮な人間達が武力によって権力をかざし、常識では考えられない愚行が蔓延します。貧困層vs.富裕層という構図にも見えますが、そうとも言い切れない状況になっていくのがさらに恐ろしくて、弱肉強食にもいろいろな形があることがわかります。また、1人が絶対的に大きな権力を握っているというよりも、身分や立場を問わず、皆が少しずつ腐った部分を持っていることで、それが幾重にも重なり国を完全に蝕んでしまうという状況が巧みに表現されています。これは、日本にいる私達にとっても他人事とはいえません。今、コロナ禍ということもあり、皆がさまざまなことでストレスを溜めています。それが膿となって、こういう状況を生まないように、反面教師的に多くの方に観て欲しいです。

デート向き映画判定
映画『ニューオーダー』ネイアン・ゴンザレス・ノルビンド

ズドーンと重い気持ちになるので、ウキウキして過ごしたいデートの日には不向きです。ただ、観終わった後に誰かと話したくなるストーリーなので、映画が好きなカップル、議論好きのカップルなら、デートで観るのもアリなのではないでしょうか。ただし、あからさまに映らないまでも、想像するとゾッとするシーンや痛々しいシーンはいくつかあるので、元気な時に観ることをオススメします。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『ニューオーダー』

人に敬意を払えないこと、人を信頼できないことが、どういう結果を生むのかを想像させられるストーリーです。食うか食われるかのどちら側になるかということではなく、どちらの側も生まないためにできることはないか、本作を観て考えることは有意義だと思います。

映画『ニューオーダー』ネイアン・ゴンザレス・ノルビンド

『ニューオーダー』
2022年6月4日より全国順次公開
PG-12
クロックワークス
公式サイト

© 2020 Lo que algunos soñaron S.A. de C.V., Les Films d’Ici

TEXT by Myson

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『ペンギン・レッスン』スティーヴ・クーガン ペンギン・レッスン【レビュー】

『ペンギン・レッスン』というタイトルが醸し出す世界観、スティーヴ・クーガンやジョナサン・プライスといった名優がメインキャストに名を連ねていることからして…

映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』水上恒司/木戸大聖/八木莉可子/綱啓永/JUNON(BE:FIRST)/中沢元紀/曽田陵介/萩原護/髙橋里恩/山下幸輝/濱尾ノリタカ/上杉柊平 WIND BREAKER/ウィンドブレイカー【レビュー】

にいさとる作の同名漫画を原作とする本作は、不良グループが街を守るというユニークな設定…

映画『ナイトフラワー』北川景子 北川景子【ギャラリー/出演作一覧】

1986年8月22日生まれ。兵庫県出身。

映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人 映画レビュー&ドラマレビュー総合アクセスランキング【2025年11月】

映画レビュー&ドラマレビュー【2025年11月】のアクセスランキングを発表!

映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの/宮沢氷魚 映画に隠された恋愛哲学とヒント集80:おしどり夫婦こそ油断禁物!夫婦関係の壊れ方

どんなに仲が良く、相性の良さそうな2人でも、夫婦関係が壊れていく理由がわかる3作品を取り上げます。

映画『マルドロール/腐敗』アントニー・バジョン マルドロール/腐敗【レビュー】

国民を守るためにあるはずの組織が腐敗し機能不全となった様を描いた本作は、ベルギーで起き、1996年に発覚したマルク・デュトルー事件を基に…

映画『消滅世界』蒔田彩珠 消滅世界【レビュー】

ジェンダー、セックスのどちらにおいてもこれまでの常識を覆す価値観が浸透した世界を描いた本作は、村田沙耶香著の同名小説を原作として…

映画『ナイトフラワー』森田望智 森田望智【ギャラリー/出演作一覧】

1996年9月13日生まれ。神奈川県出身。

映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの/宮沢氷魚 佐藤さんと佐藤さん【レビュー】

同じ佐藤という苗字のサチ(岸井ゆきの)とタモツ(宮沢氷魚)は、セリフにも出てくるように「結婚しても離婚しても佐藤」です…

映画『楓』福士蒼汰/福原遥 『楓』カバーアーティスト、十明による“楓”生歌唱付き&サプライズゲスト登壇!特別試写会 9組18名様プレゼント

映画『楓』カバーアーティスト、十明による“楓”生歌唱付き&サプライズゲスト登壇!特別試写会 9組18名様プレゼント

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年12月募集用 人間特有の感情や認知の探求【映画学ゼミ第3回】参加者募集!

今回は、N「湧き起こる感情はあなたの性格とどう関連しているのか」、S「わかりやすい映画、わかりにくい映画に対する快・不快」をテーマに実施します。

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年12月募集用
  2. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  3. 映画学ゼミ2025年11月募集用

REVIEW

  1. 映画『ペンギン・レッスン』スティーヴ・クーガン
  2. 映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』水上恒司/木戸大聖/八木莉可子/綱啓永/JUNON(BE:FIRST)/中沢元紀/曽田陵介/萩原護/髙橋里恩/山下幸輝/濱尾ノリタカ/上杉柊平
  3. 映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人
  4. 映画『マルドロール/腐敗』アントニー・バジョン
  5. 映画『消滅世界』蒔田彩珠

PRESENT

  1. 映画『楓』福士蒼汰/福原遥
  2. 映画『楓』旅からはじまるトラベルポーチ
  3. 映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン
PAGE TOP