石井裕也が監督を務め、池松壮亮、オダギリジョーが出演する本作は、韓国を舞台に描かれ、95%以上の韓国スタッフ、キャストのチームで作られました。妻を亡くしたばかりの剛(池松壮亮)は幼い息子(佐藤凌)を連れて、兄が待つ韓国へ着の身着のままでやってきます。でも、兄の透(オダギリジョー)から剛に韓国に来て一緒に仕事をしようと誘ったにも関わらず、透はのらりくらりとしていて、剛の不安を煽るばかり。ただ、透は自信たっぷりで剛は透を信じて仕事を手伝います。そんななか、3人の運命を狂わす出来事が起き…。ここからは映画でご覧いただくとして、剛親子にとっては言葉も全く通じない韓国で不安ばかりの状況ですが、新たな出会いによって改めて哀しみと向き合い、人生を見つめ直すきっかけを得ていきます。また剛達と出会うソル(チェ・ヒソ)、ジョンウ(キム・ミンジェ)、ポム(キム・イェウン)きょうだいも、それぞれ抱えていた思いをお互いにぶつけ、再び心を通わせていきます。
石井裕也監督作には一貫して人生の苦い部分がリアルに描かれていて、本作にもそれは貫かれています。ただ、苦いだけで終わらず、自分で切り拓く余地があることや、人との出会いによって人は癒されていくことを物語っていて、温かさが伝わってくる作品となっています。そして、葛藤の末にすぐに答えを見つけられなくても、ゆっくりゆっくり進めばいいじゃないかというメッセージも込められていて、何だかホッとさせられます。そして、タイトルになっている“アジアの天使”が、必ずしもイメージ通りではないところが逆に救いとなっている点もユニークで、だからこそ人間次第なんだと思わせる説得力にもなっています。本作は自分が大切にしていたものを失い、どうすれば良いかわからずに心がさまよう人達の姿を描いています。コロナ禍の世界には今そういった人で溢れていると思いますが、ふと心を少し軽くしてくれる作品です。
![デート向き映画判定](https://www.tst-movie.jp/wp-asset/wp-content/uploads/2019/03/bar_date.png)
![映画『アジアの天使』池松壮亮/オダギリジョー](https://www.tst-movie.jp/wp-asset/wp-content/uploads/2021/06/202107asianotenshi-sub-2shot-suwarikomu600.png)
ずっと今のままじゃいられないとわかっていても、怖くて前に進めない人はたくさんいると思います。既に好きな人がいるけど最初の一歩が踏み出せない人、まだ相手もおらず、そもそも恋ができるかわからない状況で自信がなくなっている人は、少し前向きな気持ちになれると思います。1人でじっくり観るのもオススメですし、友達以上恋人未満の2人なら背中を押してもらえそうです。
![キッズ&ティーン向き映画判定](https://www.tst-movie.jp/wp-asset/wp-content/uploads/2019/03/bar_kidsteen.png)
![映画『アジアの天使』池松壮亮/チェ・ヒソ/オダギリジョー/キム・ミンジェ/キム・イェウン/佐藤凌](https://www.tst-movie.jp/wp-asset/wp-content/uploads/2021/06/202107asianotenshi-sub-syokutaku600.png)
皆さんは、剛の息子、学ぶの目線、ソルの妹ポムの目線が、身近に感じられるのではないでしょうか。基本的には大人向けの作品ではありますが、幼い頃に大事な人を亡くして寂しい思いをしている学やポムの気持ちは、誰にでも共感できると思います。親や自分を大切にしてくれる人を気遣って、逆に自分の気持ちを言えないでいる人もいると思いますが、本作を一緒に観ることで普段は言えないことを言えるきっかけにできるかもしれません。
![映画『アジアの天使』池松壮亮/チェ・ヒソ/オダギリジョー/キム・ミンジェ/キム・イェウン/佐藤凌](https://www.tst-movie.jp/wp-asset/wp-content/uploads/2021/06/202107asianotenshi-poster400.png)
『アジアの天使』
2021年7月2日より全国公開
クロックワークス
公式サイト
©2021 The Asian Angel Film Partners
TEXT by Myson
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