REVIEW

異端者の家【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『異端者の家』ヒュー・グラント/ソフィー・サッチャー/クロエ・イースト

REVIEW

タブーにかなり踏み込んでいる印象で、とても驚きました。宗派を問わずキリスト教徒が多い国では特に物議を醸すであろう内容です。監督、脚本を務めたのは、『クワイエット・プレイス』(2018)の原案・脚本家として注目を浴び、イーライ・ロスがプロデュースした『ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷』(2019)の監督・脚本や、アダム・ドライバー主演『65/シックスティ・ファイブ』(2023)の監督・脚本・製作を手掛けてきた、スコット・ベックとブライアン・ウッズです。

何が起こるかわからずに観るほうが、本作に登場する2人のシスター・バーンズ(ソフィー・サッチャー)とシスター・パクストン(クロエ・イースト)と同じ感覚になれると思いつつ、この記事の下部に、映画公式資料にあった本作の原点とされるエピソードを載せておきます。鑑賞前に読むか、後に読むかで印象が変わるかもしれません。私は鑑賞前は極力情報を入れないようにしているので、下記のエピソードは鑑賞後に読みました。本作のイメージとリンクするからこそ、当時のベック監督とウッズ監督は相当怖い思いをしただろうと感じました。

映画『異端者の家』ヒュー・グラント

本作は、宗教とは何か、信仰とは何かに深く切り込むセリフが満載の会話劇ともいえます。そこまで言っちゃって大丈夫かとヒヤヒヤさせられる表現が出てくるシーンを観ると、かなり挑戦的な作品だとわかるでしょう。でも正直なところ、極論と思える発言にも一理あると思わせる要素があって、だからこそリード(ヒュー・グラント)という人物が恐ろしく見えてきます。

テーマがとても深く、ヒュー・グラント、ソフィー・サッチャー、クロエ・イーストの3人の見事な演技が功を奏し、見応えのあるストーリーとなっています。心理的な怖さが一番強いものの、視覚的に怖いシーンも一部出てきます。ただ、ホラーで括って観ず嫌いにならないで欲しいです。無宗教の方であっても、信じるとは何かを考えさせられる機会となり得るので、ぜひご覧ください。


映画『異端者の家』ソフィー・サッチャー/クロエ・イースト

ベック監督とウッズ監督は幼馴染みで、本作は以下の2人の実際の経験にインスピレーションを得ています。

この物語の原点は、2人が大学で短編映画をつくっていたティーンエイジャーの頃の出来事にある。アイオワで短編映画のロケ地を探していた時、白い柵で囲まれた優しい老夫婦が暮らす家のドアをノックした。古風な趣のある清潔で美しい家に招かれ、紅茶と会話でもてなされたが、それだけで終わらなかった。
「老夫婦はこの上なく控えめな人たちでした。我々は、隕石が衝突して地球上のあらゆる生命が絶滅するという短編映画の内容について話していると、老夫婦は紅茶をすすりながら相槌を打ち『隕石が来るのは知ってる。2〜3ヵ月後にやって来て人類を全滅させる』と言ったんです。すると会話に不穏な雰囲気が忍び寄り、家に閉じ込められたような感覚を覚えたんです」とウッズは当時を振り返る。 (映画公式資料)

デート向き映画判定

映画『異端者の家』ヒュー・グラント/ソフィー・サッチャー/クロエ・イースト

信仰している宗教がある方と観る場合は、お互いにどこまで踏み込んだ発言をして大丈夫かがわからずに気まずくなる可能性はあります。一方で、普段はあまり取り上げない話題で話す機会になるので、お互いの理解を深めたい場合は、敢えて一緒に観ても良いのではないでしょうか。無宗教であっても、感想の中に各々の価値観が出てくると思うので、長く付き合える相手かどうかを試す機会として、一緒に観るのもアリかもしれません。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『異端者の家』ソフィー・サッチャー/クロエ・イースト

R-15なので、15歳未満の方は観られません。極基本的なところだけでもキリスト教について知っておけばストーリーにはついていけるでしょう。でも、興味を持ったら、さらに調べてみると、一層細かい要素がストーリーに散りばめられていることがわかると思います。本作は極論を用いて宗教観に深く切り込みつつ、最終的には観る側に解釈を委ねる内容です。スピリチュアルな視点、学問的な視点などさまざまな視点で観てください。

映画『異端者の家』ヒュー・グラント/ソフィー・サッチャー/クロエ・イースト

『異端者の家』
2025年4月25日より全国公開
R-15+
ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト

ムビチケ購入はこちら
映画館での鑑賞にU-NEXTポイントが使えます!無料トライアル期間に使えるポイントも

© 2024 BLUEBERRY PIE LLC. All Rights Reserved.

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2025年4月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『サリー』エスター・リウ 『サリー』特別試写会イベント 5組10名様ご招待

映画『サリー』特別試写会イベント 5組10名様ご招待

映画『THE END(ジ・エンド)』ティルダ・スウィントン/ジョージ・マッケイ/モーゼス・イングラム/ブロナー・ギャラガー/ティム・マッキナリー/レニー・ジェームズ/マイケル・シャノン THE END(ジ・エンド)【レビュー】

REVIEWいつも通り観賞前にほぼ何も情報を入れず、登場人物はいつの時代にどこに住んでいる…

映画『シェルビー・オークス』 シェルビー・オークス【レビュー】

かつて繁栄しながらも今は廃墟と化しているシェルビー・オークスという町で…

映画『ナイトフラワー』渋谷龍太 渋谷龍太【ギャラリー/出演作一覧】

1987年5月27日生まれ。東京都出身。

映画『悪魔祓い株式会社』マ・ドンソク/ソヒョン/イ・デヴィッド 悪魔祓い株式会社【レビュー】

本作は、『悪人伝』や“犯罪都市”シリーズ、ハリウッド映画『エターナルズ』などでお馴染みのマ・ドンソクが…

映画『ツーリストファミリー』シャシクマール/シムラン/ミドゥン・ジェイ・シャンカル/カマレーシュ・ジャガン/ヨーギ・バーブ 『ツーリストファミリー』特別試写会 10組20名様ご招待

映画『ツーリストファミリー』特別試写会 10組20名様ご招待

Netflixシリーズ『イクサガミ』岡田准一 イクサガミ【レビュー】

今村翔吾著のベストセラー「イクサガミ」シリーズを原作とする本シリーズでは、岡田准一が主演、プロデューサー、アクションプランナー、藤井道人、山口健人、山本透が監督と脚本を担当…

映画『TOKYOタクシー』蒼井優 蒼井優【ギャラリー/出演作一覧】

1985年8月17日生まれ。福岡県出身。

映画『バーフバリ エピック4K』来日舞台挨拶イベント、プラバース、ショーブ・ヤーララガッダ(プロデューサー) プラバース、ショーブ・ヤーララガッダ来日!『バーフバリ エピック4K』には追加シーンも

2025年に劇場公開10周年を迎える大ヒット作『バーフバリ 伝説誕生』と『バーフバリ2 王の凱旋』を一つの作品として再編集し、壮大な物語を4K映像で体験できる『バーフバリ エピック4K』の日本公開を目前にして、バーフバリ役のプラバースと、プロデューサーのショーブ・ヤーララガッダが来日しました。

映画『楓』福士蒼汰/福原遥 楓【レビュー】

残酷過ぎて、切な過ぎて、優し過ぎて、どうしましょ(笑)。ネタバレを避けると、ほぼ何も書けませんが…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年12月募集用 人間特有の感情や認知の探求【映画学ゼミ第3回】参加者募集!

今回は、N「湧き起こる感情はあなたの性格とどう関連しているのか」、S「わかりやすい映画、わかりにくい映画に対する快・不快」をテーマに実施します。

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年12月募集用
  2. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  3. 映画学ゼミ2025年11月募集用

REVIEW

  1. 映画『THE END(ジ・エンド)』ティルダ・スウィントン/ジョージ・マッケイ/モーゼス・イングラム/ブロナー・ギャラガー/ティム・マッキナリー/レニー・ジェームズ/マイケル・シャノン
  2. 映画『シェルビー・オークス』
  3. 映画『悪魔祓い株式会社』マ・ドンソク/ソヒョン/イ・デヴィッド
  4. Netflixシリーズ『イクサガミ』岡田准一
  5. 映画『楓』福士蒼汰/福原遥

PRESENT

  1. 映画『サリー』エスター・リウ
  2. 映画『ツーリストファミリー』シャシクマール/シムラン/ミドゥン・ジェイ・シャンカル/カマレーシュ・ジャガン/ヨーギ・バーブ
  3. 映画『楓』旅からはじまるトラベルポーチ
PAGE TOP