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オールド・フォックス 11歳の選択【レビュー】

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映画『オールド・フォックス 11歳の選択』バイ・ルンイン/リウ・グァンティン

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2023年に引退を表明したホウ・シャオシェンの最後のプロデュース作品といわれる本作は、バブル期の台湾を舞台にしています。監督を務めたのは、ホウ・シャオシェン監督の『フラワーズ・オブ・シャンハイ』で助監督を務め、本作で長編4作目となるシャオ・ヤーチュエン。シャオ・ヤーチュエン監督は本作で第60回台北金馬映画祭最優秀監督賞を受賞しています。

映画『オールド・フォックス 11歳の選択』バイ・ルンイン/リウ・グァンティン

本作の主人公は、台北郊外に父と2人で暮らす、11歳の少年リャオジエ(バイ・ルンイン)です。冒頭で金融関連の報道が流れ、それが11歳の少年とどうかかわるのか予想がつかないまま観始めて、社会の経済状況が想像以上にリャオジエに影響をもたらしていく様子に驚きます。物語の舞台となる1989年から1990年にかけて、台湾にバブル期が到来し、リャオジエが住む土地も価格が高騰していきます。そして、リャオジエの父リャオタイライ(リウ・グァンティン)がいつか理髪店を開こうとコツコツ貯金をしているなか、店を買えるかどうかで一喜一憂する出来事が起こります。

映画『オールド・フォックス 11歳の選択』バイ・ルンイン

父が理髪店を開店するのを楽しみにしているリャオジエは、ひょんなことから家の家主で不動産を複数所有しているシャ(アキオ・チェン)と出会います。その後、どんな展開があるのかは観てのお楽しみとして、本作では負け組と勝ち組の生き方に葛藤する11歳の少年の姿が描かれています。視点を変えると、経済的な豊かさと人間としての豊かさの対比ともいえます。どちらの生き方が良いのか、どちらの生き方が幸せなのかを描く上で、父リャオタイライとシャの立場を対比させていると同時に、まだ子どものリャオジエと、子どもの頃の自分の姿をリャオジエに重ねて見るシャの立場を対比させている描写も見事です。

映画『オールド・フォックス 11歳の選択』リウ・グァンティン/アキオ・チェン

最大の見どころはシャの成功哲学をリャオジエが子どもながらにどう自分のものにしていくかという点です。クライマックスではリャオジエの生き方を大きく左右する展開があり、それは究極の選択にも見えます。この難題にリャオジエがどう答えを出すのか、最後の最後に明かされるのでお楽しみに。

デート向き映画判定

映画『オールド・フォックス 11歳の選択』リウ・グァンティン/門脇麦

さりげなく描かれるラブストーリーにも、人生観を問うスタンスが見てとれます。誰に感情移入するかによって、自ずと相手の人生観がわかると思います。将来を共にしようとちらっとでも考えている相手なら、敢えて一緒に観て感想を聞いてみると、深いところで相性が合うか参考にできる情報が得られるかもしれません。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『オールド・フォックス 11歳の選択』バイ・ルンイン/アキオ・チェン

リャオジエと同世代の皆さんは、リャオジエの目線で子どもの世界と大人の世界を客観的に眺められると思います。子どもの頃は特に贅沢な生活に憧れるかもしれませんが、リャオジエはさらに視座を高くして世の中を見る機会を得ます。彼が葛藤する姿を見て何を感じるかを考えてみることで、自分の価値観を見つめるきっかけにもなると思います。

映画『オールド・フォックス 11歳の選択』バイ・ルンイン/リウ・グァンティン

『オールド・フォックス 11歳の選択』
2024年6月14日より全国公開
東映ビデオ
公式サイト

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©2023 BIT PRODUCTION CO., LTD. ALL RIGHT RESERVED

TEXT by Myson

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