REVIEW

ファミリア【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ファミリア』役所広司

家族になるとはどういうことか、本作を観るとさまざまな家族の形、家族の定義があると感じます。本作の主人公は、陶器職人の神谷誠治(役所広司)。妻は亡くなり、一人息子の学(吉沢亮)は仕事でアルジェリアに赴任中のため、誠治は山里で1人で暮らしています。誠治の住む隣町には在日ブラジル人が多く住んでおり、ある日トラブルに巻き込まれたマルコス(サガエルカス)は、地元を仕切るグループから追われ、逃走中にたまたま誠治の家を見つけます。そうして出会った誠治とマルコスは徐々に交流するようになりますが、2人は思わぬ事態に追い込まれていきます。
本作では、2つの大きな出来事が同時進行し、緊張感が張り詰めたシーンも多く、孤独な者同士が心を通わせ助け合う姿が温かく映るからこそ、その幸せが壊されないようにとドキドキしながら見守る思いで観てしまいます。やるせない出来事が多すぎて、観ていて切なくなりますが、それだけでは終わらないのが本作の魅力。暗くて冷たい社会でも、生き残れるのは人と人との絆があるからであり、この世もまだ捨てたものではないと思わせてくれます。
俳優陣の演技も見事で、サガエルカス、ワケドファジレ、アリまらい果、シマダアラン、スミダグスタボは皆今回が演技初挑戦というから驚き。特にマルコス役のサガエルカスは独特のオーラもあって今後の活躍にも期待です。また、主演の役所広司と友人役の佐藤浩市の2ショットシーンでは、2人の佇まいと貫禄にしびれます。
個人的な恨みと偏見を持つ者が無関係の弱者を痛めつける場面もいれば、ささやかな幸せを噛みしめる者達が交流する場面もあったり、まさに現代の縮図といえる作品です。緊張感が張りつめるなかでも、癒しや温かさを感じさせてくれます。年齢、性別、国籍問わず共感できると思います。

デート向き映画判定
映画『ファミリア』役所広司/吉沢亮/サガエルカス

シリアスなテーマで、バイオレンスシーンもあり、デートムービーとはいえません。ただ、家族の絆や人と人との繋がりがテーマになっていて、人生観を問う内容なので、カップルで観ると、お互いの感想で価値観が合うかどうか、少し計れる部分があるかもしれませんね。観るなら、映画鑑賞がメインのデートの日に観るとよいのではないでしょうか。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『ファミリア』役所広司/吉沢亮

PG-12なので大人と一緒なら小学生も観られますが、内容的に刺激が強い場面もあるので、やはり中学生以上になってから観るほうが良いと思います。本作には、大切な人のために一生懸命な人達が複数出てきます。簡単に真似ができることではありませんが、一つの心の在り方を知ることができると思います。

映画『ファミリア』役所広司/吉沢亮/MIYAVI/佐藤浩市

『ファミリア』
2023年1月6日より全国公開
PG-12
キノフィルムズ
公式サイト

©2022「ファミリア」製作委員会

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ 心理学から観る映画59:研究倫理に反する実験とその被害『エクスペリメント』『まったく同じ3人の他人』

『まったく同じ3人の他人』というドキュメンタリーを観ました。生き別れた三つ子が再会する感動のストーリーかと思いきや、驚愕の背景を知り、研究倫理について改めて考えさせられました。そこで今回は研究倫理をテーマとします。

映画『コンビニ・ウォーズ~バイトJK VS ミニナチ軍団~』ヴァネッサ・パラディ ヴァネッサ・パラディ【ギャラリー/出演作一覧】

1972年12月22日生まれ。フランス出身。

映画『ブルーボーイ事件』中川未悠/中村中/イズミ・セクシー/真田怜臣/六川裕/泰平史/錦戸亮 ブルーボーイ事件【レビュー】

高度成長期にあった1965年の東京では、街の浄化のため、警察はセックスワーカー達を厳しく取り締まっていました。ただ、セックスワーカーの中には性別適合手術(当時の呼称は性転換手術)を受けて女性的な体をした通称ブルーボーイが…

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人 君の顔では泣けない【レビュー】

高校1年生の夏、坂平陸(武市尚士)と水村まなみ(西川愛莉)はプールに一緒に落ちたことで体が入れ替わってしまいます。2人はすぐに元に戻ることができず15年を過ごし…

映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト スプリングスティーン 孤独のハイウェイ

物語の舞台は1982年。ブルース・スプリングスティーン(ジェレミー・アレン・ホワイト)は、名声を手に入れながらも、葛藤を抱えて…

映画『2つ目の窓』松田美由紀 松田美由紀【ギャラリー/出演作一覧】

1961年10月6日生まれ。東京都出身。

「第38回東京国際映画祭」クロージングセレモニー:受賞者 東京グランプリは『パレスチナ36』!第38回東京国際映画祭ハイライト

2025年10月27日(月)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開幕したアジア最大級の映画の祭典である第38回東京国際映画祭が、11月5日(水)に閉幕。今年も個性豊かな作品が多数出品され、さまざまなイベントが実施されました。以下に、第38回東京国際映画祭ハイライトをお届けします。

映画『平場の月』堺雅人/井川遥 平場の月【レビュー】

朝倉かすみ著の同名小説を実写化した本作は、『ハナミズキ』『花束みたいな恋をした』(2021年)などを手がけた土井裕泰が監督を務めて…

映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル ぼくらの居場所【レビュー】

カナダのトロント東部に位置するスカボローを舞台に、さまざまな背景を抱えた3組の親子の姿を…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画学ゼミ2025年11月募集用 AI時代における人間らしさの探求【映画学ゼミ第2回】参加者募集!

ネット化が進み、AIが普及しつつある現代社会で、人間らしさを実感できる映画鑑賞と人間にまつわる神秘を一緒に探求しませんか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  2. 映画学ゼミ2025年11月募集用
  3. 映画『おーい、応為』長澤まさみ

REVIEW

  1. 映画『ブルーボーイ事件』中川未悠/中村中/イズミ・セクシー/真田怜臣/六川裕/泰平史/錦戸亮
  2. 映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人
  3. 映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト
  4. 映画『平場の月』堺雅人/井川遥
  5. 映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル

PRESENT

  1. 映画『TOKYOタクシー』オリジナルパラパラメモ
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP