REVIEW

裸足になって【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『裸足になって』リナ・クードリ

パピチャ 未来へのランウェイ』の主演リナ・クードリとムニア・メドゥール監督が再タッグを組んだ作品です。また、『コーダ あいのうた』でろう者の俳優で初めてアカデミー助演男優賞を獲得したトロイ・コッツァーが製作総指揮を務めています。
本作は『パピチャ〜』と同じく、内戦の傷跡が残るアルジェリアで、社会的に弱い立場ながら夢と希望を持って生きる女性達の姿を映しています。主人公は、バレエダンサーとして可能性を秘めたフーリア(リナ・クードリ)。フーリアは母に車を買うため、ある方法でコツコツと貯金をしています。でも、ある出来事がきっかけで大怪我を負い、トラウマを抱え、話せなくなってしまいます。本作は絶望の淵に立たされたフーリアが試練を乗り越え再生する物語です。
フーリアはリハビリをするなかで、ろう者の女性達と出会います。さまざまな事情を抱えながらも明るく過ごしている彼女達の姿にフーリアは励まされていきます。そんなフーリアに転機となる出来事が起きます。そして、フーリアにとって、ダンスが彼女の“言葉”となり、再び生きる意味を見出していきます。大怪我の前と後で、フーリアのダンスに違いが見えます。技術的な違いというよりも、フーリアにとってのダンスの意味が変わったのが伝わってきます。ここで、リナ・クードリの見事な表現力が発揮されています。
アルジェリアの治安が良くない点、警察が頼りにならない点も弱者が生きづらい状況を作っています。そうなると、国外に行くか、祖国に残るかという話題が付きもので、一見国外に出たほうが良いのではと思ってしまいます。ただ、フーリアの覚悟を観ていると、どういう状況であれ祖国で暮らしたいと思う気持ちは当事者にならないとわからないと実感します。この物語でフーリアは一度に多くのものを失います。それはどれもとても大きなものです。それでもアルジェリアで生きると決めた彼女が、最後に見せる姿はとても逞しく美しく映ります。今もアルジェリア、そして世界中で彼女のように戦う人々がいることを教えてくれる作品です。

デート向き映画判定
映画『裸足になって』リナ・クードリ

ロマンチックな展開はなく、シリアスな内容なので、1人でじっくり観るほうが向いていると思います。でも、フーリアが再生していく姿には勇気をもらえます。もしパートナーが、目指すものがありながら壁にぶつかったり、希望を失っていたら、一緒に観て、静かに励ますのも良いかもしれません。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『裸足になって』リナ・クードリ

本作の主人公フーリアの日常を観て、平和に好きなことに時間を費やせる日常は当たり前ではない、とても貴重で有り難いことだと知るきっかけになると良いなと思います。もし、今打ち込めるものがあるなら、なぜそれをやりたいのか、夢中になれるのか改めて考えてみるのも良いでしょう。例えばフーリアのように自分が踊る真の意味、意義を見つけられたら、揺るぎない力を得られるように思います。

映画『裸足になって』リナ・クードリ

『裸足になって』
2023年7月21日より全国順次公開
ギャガ
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

©THE INK CONNECTION – HIGH SEA – CIRTA FILMS – SCOPE PICTURES FRANCE 2 CINÉMA – LES PRODUCTIONS DU CH’TIHI – SAME PLAYER, SOLAR ENTERTAINMENT

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人 君の顔では泣けない【レビュー】

高校1年生の夏、坂平陸(武市尚士)と水村まなみ(西川愛莉)はプールに一緒に落ちたことで体が入れ替わってしまいます。2人はすぐに元に戻ることができず15年を過ごし…

映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト スプリングスティーン 孤独のハイウェイ

物語の舞台は1982年。ブルース・スプリングスティーン(ジェレミー・アレン・ホワイト)は、名声を手に入れながらも、葛藤を抱えて…

映画『2つ目の窓』松田美由紀 松田美由紀【ギャラリー/出演作一覧】

1961年10月6日生まれ。東京都出身。

「第38回東京国際映画祭」クロージングセレモニー:受賞者 東京グランプリは『パレスチナ36』!第38回東京国際映画祭ハイライト

2025年10月27日(月)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開幕したアジア最大級の映画の祭典である第38回東京国際映画祭が、11月5日(水)に閉幕。今年も個性豊かな作品が多数出品され、さまざまなイベントが実施されました。以下に、第38回東京国際映画祭ハイライトをお届けします。

映画『平場の月』堺雅人/井川遥 平場の月【レビュー】

朝倉かすみ著の同名小説を実写化した本作は、『ハナミズキ』『花束みたいな恋をした』(2021年)などを手がけた土井裕泰が監督を務めて…

映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル ぼくらの居場所【レビュー】

カナダのトロント東部に位置するスカボローを舞台に、さまざまな背景を抱えた3組の親子の姿を…

映画『ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師』ヨナス・ダスラー ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師【レビュー】

第二次世界大戦下のドイツに実在した牧師、ディートリヒ・ボンヘッファーは、ナチスに支配された教会やユダヤ人達を救おうと奮闘…

映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』SUMIRE 佐藤菫【ギャラリー/出演作一覧】

1995年7月4日生まれ。東京都出身。

映画『プレデター:バッドランド』エル・ファニング プレデター:バッドランド【レビュー】

おもしろい!いろいろユニーク!“プレデター”シリーズは…

映画『モンテ・クリスト伯』ピエール・ニネ モンテ・クリスト伯【レビュー】

アレクサンドル・デュマ・ペールの傑作小説「巌窟王」を映画化した本作は…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年11月募集用 AI時代における人間らしさの探求【映画学ゼミ第2回】参加者募集!

ネット化が進み、AIが普及しつつある現代社会で、人間らしさを実感できる映画鑑賞と人間にまつわる神秘を一緒に探求しませんか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年11月募集用
  2. 映画『おーい、応為』長澤まさみ
  3. AXA生命保険お金のセミナー20251106ver3

REVIEW

  1. 映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人
  2. 映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト
  3. 映画『平場の月』堺雅人/井川遥
  4. 映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル
  5. 映画『ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師』ヨナス・ダスラー

PRESENT

  1. 映画『TOKYOタクシー』オリジナルパラパラメモ
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP