REVIEW

ヒトラーvs.ピカソ 奪われた名画のゆくえ

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ヒトラーvs.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』トニ・セルヴィッロ

歴史的に芸術作品と政治がいかに絡まり合っていたかを紐解くドキュメンタリー。正直なところ、もう少し知識を持って観れば、もっと理解が深まったはずと感じたので、皆さんにはせめて公式サイトでキーワードだけでもチェックしておくことをオススメします。もっと言うと、パンフレットに登場人物の紹介が載っているなら、鑑賞後に買うのではなく、観賞前に買って目を通してから観るほうが良いと思います。それにしても、世界的な芸術作品が政治や戦争の名の下に、ヒトラーやその部下、周囲の人達の個人的な欲によって奪われ、利用されていたとは悲しいですね。今でもなお、正当な持ち主のもとに返ることなく行方不明になっている作品が多くあるようで、子孫の代まで闘いを余儀なくされていますが、それだけ芸術作品に力があるということなんですよね。だからこそ、パブロ・ピカソが遺した「壁を飾るために描くのではない。絵は盾にも矛にもなる、戦うための手段だ」という言葉が胸に刺さります。皮肉にも、私のような美術、芸術に疎い人間は、こういった悲しい歴史を本作のような映画を通して知ることで、芸術作品の価値の高さに改めて気付かされるわけですが、権力、武力ではない“武器”だってあるのだということを、今平和な時代にいる私達はもっと自覚しなければいけないのだなとも感じます。

デート向き映画判定
映画『ヒトラーvs.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』アドルフ・ヒトラー

アートに興味のあるカップルなら、こういった視点の映画を観るのも、会話のネタが増えて良いのではないでしょうか。一方、そこまで美術にも歴史にもくわしくない人を誘うと、人物名や芸術作品の名前などが多数出てくるので、取り残されてしまう可能性があります。誘う人を選ぶ映画だという意味では、デート向きとは言えないかなと思います。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『ヒトラーvs.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』

歴史の授業で習う範囲を越えて、もっとコアな内容に触れており、美術という観点から綴られているドキュメンタリーなので、歴史を知る入口として、こういうところから興味を広げていくのもアリだと思います。ただ、そもそも基本的な歴史的知識がないとついていけない内容なので、せめて中学生以上向けかなと思います。

映画『ヒトラーvs.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』

『ヒトラーvs.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』
2019年4月19日より全国順次公開
クロックワークス、アルバトロス・フィルム
公式サイト

©2018 – 3D Produzioni and Nexo Digital – All rights reserved

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

「Kodansha Studios 設立発表会見」野間省伸(株式会社講談社 代表取締役社長)、 クロエ・ジャオ(Kodansha Studios 最高クリエイティブ責任者)、 ニコラス・ゴンダ(Kodansha Studios COO) 映画業界に新風を吹かせられるか?2025新レーベル発足および官民の取組みまとめ

今回は近日発足された新レーベルをまとめて紹介します。

映画『果てしなきスカーレット』 果てしなきスカーレット【レビュー】

細田守が原作、脚本、監督を担当した本作は、16世紀のデンマークの王女、スカーレットが主人公です。細田監督は…

映画『ブラックフォン2』イーサン・ホーク/メイソン・テムズ ブラックフォン2【レビュー】

2022年に作られたシリーズ1作目『ブラック・フォン』から4年後を描いた本作でも…

映画『金髪』白鳥玉季さんインタビュー 『金髪』白鳥玉季さんインタビュー

今回は『金髪』で生徒の板緑役を演じた白鳥玉季さんにインタビューさせていただきました。“金髪デモ”を起こすキーパーソンである板緑を演じた感想や、撮影裏でのエピソードを直撃しました。

映画『TOKYOタクシー』倍賞千恵子/木村拓哉 TOKYOタクシー【レビュー】

クリスチャン・カリオン監督『パリタクシー』を原作とした本作は、東京にある柴又から神奈川の葉山にある高齢者施設までの道のりを舞台に、山田洋次監督が映画化…

映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ 心理学から観る映画59:研究倫理に反する実験とその被害『エクスペリメント』『まったく同じ3人の他人』

『まったく同じ3人の他人』というドキュメンタリーを観ました。生き別れた三つ子が再会する感動のストーリーかと思いきや、驚愕の背景を知り、研究倫理について改めて考えさせられました。そこで今回は研究倫理をテーマとします。

映画『コンビニ・ウォーズ~バイトJK VS ミニナチ軍団~』ヴァネッサ・パラディ ヴァネッサ・パラディ【ギャラリー/出演作一覧】

1972年12月22日生まれ。フランス出身。

映画『ブルーボーイ事件』中川未悠/中村中/イズミ・セクシー/真田怜臣/六川裕/泰平史/錦戸亮 ブルーボーイ事件【レビュー】

高度成長期にあった1965年の東京では、街の浄化のため、警察はセックスワーカー達を厳しく取り締まっていました。ただ、セックスワーカーの中には性別適合手術(当時の呼称は性転換手術)を受けて女性的な体をした通称ブルーボーイが…

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人 君の顔では泣けない【レビュー】

高校1年生の夏、坂平陸(武市尚士)と水村まなみ(西川愛莉)はプールに一緒に落ちたことで体が入れ替わってしまいます。2人はすぐに元に戻ることができず15年を過ごし…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  2. 映画学ゼミ2025年11月募集用
  3. 映画『おーい、応為』長澤まさみ

REVIEW

  1. 映画『果てしなきスカーレット』
  2. 映画『ブラックフォン2』イーサン・ホーク/メイソン・テムズ
  3. 映画『TOKYOタクシー』倍賞千恵子/木村拓哉
  4. 映画『ブルーボーイ事件』中川未悠/中村中/イズミ・セクシー/真田怜臣/六川裕/泰平史/錦戸亮
  5. 映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人

PRESENT

  1. 映画『TOKYOタクシー』オリジナルパラパラメモ
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP