REVIEW

マエストロ:その音楽と愛と【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
Netflix映画『マエストロ:その音楽と愛と』ブラッドリー・クーパー

REVIEW

製作にスティーヴン・スピルバーグ、マーティン・スコセッシという重鎮が名を連ね、ブラッドリー・クーパーが監督、主演を務める本作は、指揮者、作曲家、ピアニストとして音楽史に名を刻んだレナード・バーンスタイン(ブラッドリー・クーパー)と妻のフェリシア・モンテアレグレ・コーン・バーンスタイン(キャリー・マリガン)の物語です。レナードは1943年、25歳という若さで、ニューヨーク・フィルハーモニックの指揮者を代役で務め、華々しいデビューを飾ります。その後フェリシアと出会い、1951年に2人は結婚。始めは順調に結婚生活を送っていました。ただ、レナードにはもう一つの側面がありました。その側面については、序盤でさりげなく触れているので、フェリシアとの結婚が最初から単純なものではなかったことは察しがつくと思います。
レナードは音楽家としてめきめきと出世していきます。フェリシアも俳優として実力を発揮しながら、子育てに追われ、レナードを支えるためにも家庭に入ります。夫の才能を潰さないようフェリシアが支えている様子が健気に映る一方で、やはり彼女も限界に近づいていきます。彼女が何より辛かったことは後半になるにつれて明かされていきます。

Netflix映画『マエストロ:その音楽と愛と』ブラッドリー・クーパー/キャリー・マリガン

才能ある人物と人生を共にしようとする時、パートナーも大きなものを背負うのだなと、本作を観て実感します。レナード本人が周囲の大きな期待から重責を負っているのは当然ながら、影で支えるフェリシアも多くのことに耐えています。2人の様子を観ていると、絆は強固なものであるのが伝わってくると同時に、絆が深いからこそフェリシアは一層苦しかったのではないかと感じます。
ネタバレにならないように濁して書いているので、お伝えしづらい部分もありますが(苦笑)、2人が生きた時代の風潮も大いに影響しているとはいえ、現代でも同じように悩む方達はいるはずです。でも、本作を最後まで観て、結局2人の愛は本物だったと感じました。“愛の形”へのこだわりは捨てられないとしても、愛することはやめられない。本作は、そんな2人の素敵なラブストーリーです。
そして、本作ではブラッドリー・クーパーのなりきりぶりも見どころです。まず、『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』『スキャンダル』で2度のオスカー(メイクアップ&ヘアスタイリング賞)を受賞したカズ・ヒロ(辻一弘)が担当した特殊メイクに要注目。特殊メイクとブラッドリー・クーパーの演技力で、20代から晩年のレナードが蘇ります。また、指揮者、ピアニストとしてのパフォーマンスも見事。個人的には、終盤で学生に教えるシーンで指揮でこれほど演奏が変わるのかと驚き、それを体現するブラッドリー・クーパーのスゴさも実感しました。
レナードは「ウェスト・サイド・ストーリー」など名作ミュージカルの楽曲もたくさん作曲しています。劇中で流れる音楽にも耳を澄ませてください。

デート向き映画判定

Netflix映画『マエストロ:その音楽と愛と』ブラッドリ ー・クーパー/キャリー・マリガン

とてもロマンチックでありながら、切ないラブストーリーです。パートナーがアーティストでなくても、レナードとフェリシアと同じような関係性のカップルは、本作を観て自分達についていろいろと思考を巡らせることになるでしょう。2人で一緒に観てこれを機にじっくり話し合うのも良し、1人でじっくり観て自分の恋愛観を見つめ直すのも良いでしょう。

キッズ&ティーン向き映画判定

Netflix映画『マエストロ:その音楽と愛と』ブラッドリー・クーパー/キャリー・マリガン

レナードが音楽家として活躍する姿は観ていて憧れる方もいるかもしれません。一方で、常に世の中の注目を集めることで家族関係に影響が及ぶ様子も見られるので、名誉や地位がもたらすものがメリットだけではないとわかるでしょう。皆さんはレナードとフェリシアを親に持つ子ども達の目線で観ることもできるでしょうし、将来の恋愛像の1つとして観ることもできると思います。

Netflix映画『マエストロ:その音楽と愛と』ブラッドリー・クーパー

『マエストロ:その音楽と愛と』
2023年12月20日よりNetflixにて配信中
公式サイト

TEXT by Myson

第96回アカデミー賞®ノミネート:作品賞、主演男優賞(ブラッドリー・クーパー)、主演女優賞(キャリー・マリガン)、脚本賞、撮影賞、音響賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞(カズ・ヒロ)、計7部門

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』水上恒司/木戸大聖/八木莉可子/綱啓永/JUNON(BE:FIRST)/中沢元紀/曽田陵介/萩原護/髙橋里恩/山下幸輝/濱尾ノリタカ/上杉柊平 WIND BREAKER/ウィンドブレイカー【レビュー】

にいさとる作の同名漫画を原作とする本作は、不良グループが街を守るというユニークな設定…

映画『ナイトフラワー』北川景子 北川景子【ギャラリー/出演作一覧】

1986年8月22日生まれ。兵庫県出身。

映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人 映画レビュー&ドラマレビュー総合アクセスランキング【2025年11月】

映画レビュー&ドラマレビュー【2025年11月】のアクセスランキングを発表!

映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの/宮沢氷魚 映画に隠された恋愛哲学とヒント集80:おしどり夫婦こそ油断禁物!夫婦関係の壊れ方

どんなに仲が良く、相性の良さそうな2人でも、夫婦関係が壊れていく理由がわかる3作品を取り上げます。

映画『マルドロール/腐敗』アントニー・バジョン マルドロール/腐敗【レビュー】

国民を守るためにあるはずの組織が腐敗し機能不全となった様を描いた本作は、ベルギーで起き、1996年に発覚したマルク・デュトルー事件を基に…

映画『消滅世界』蒔田彩珠 消滅世界【レビュー】

ジェンダー、セックスのどちらにおいてもこれまでの常識を覆す価値観が浸透した世界を描いた本作は、村田沙耶香著の同名小説を原作として…

映画『ナイトフラワー』森田望智 森田望智【ギャラリー/出演作一覧】

1996年9月13日生まれ。神奈川県出身。

映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの/宮沢氷魚 佐藤さんと佐藤さん【レビュー】

同じ佐藤という苗字のサチ(岸井ゆきの)とタモツ(宮沢氷魚)は、セリフにも出てくるように「結婚しても離婚しても佐藤」です…

映画『楓』福士蒼汰/福原遥 『楓』カバーアーティスト、十明による“楓”生歌唱付き&サプライズゲスト登壇!特別試写会 9組18名様プレゼント

映画『楓』カバーアーティスト、十明による“楓”生歌唱付き&サプライズゲスト登壇!特別試写会 9組18名様プレゼント

映画『兄を持ち運べるサイズに』柴咲コウ/オダギリジョー/満島ひかり/青山姫乃/味元耀大 兄を持ち運べるサイズに【レビュー】

原作は、村井理子が書いたノンフィクションエッセイ「兄の終い」…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年12月募集用 人間特有の感情や認知の探求【映画学ゼミ第3回】参加者募集!

今回は、N「湧き起こる感情はあなたの性格とどう関連しているのか」、S「わかりやすい映画、わかりにくい映画に対する快・不快」をテーマに実施します。

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年12月募集用
  2. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  3. 映画学ゼミ2025年11月募集用

REVIEW

  1. 映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』水上恒司/木戸大聖/八木莉可子/綱啓永/JUNON(BE:FIRST)/中沢元紀/曽田陵介/萩原護/髙橋里恩/山下幸輝/濱尾ノリタカ/上杉柊平
  2. 映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人
  3. 映画『マルドロール/腐敗』アントニー・バジョン
  4. 映画『消滅世界』蒔田彩珠
  5. 映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの/宮沢氷魚

PRESENT

  1. 映画『楓』福士蒼汰/福原遥
  2. 映画『楓』旅からはじまるトラベルポーチ
  3. 映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン
PAGE TOP