REVIEW

ママをやめてもいいですか!?【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ママをやめてもいいですか!?』

本作は、子育ての綺麗事ではない実態を捉え、妻の声、夫の声の両方を発信しているドキュメンタリーです。まずは産後うつを経験したお母さん達の日常を映し出し、忙しい毎日の中でママ達がどんな気持ちになっているのかを伝えています。世の中の価値観からくる重圧や苦しみ、夫に対する不満、愛情をうまく子どもに伝えられないもどかしさなど、その感情はさまざまで、第三者が思っている以上に、世のお母さん達はプレッシャーを強く抱えているのがわかります。また、お母さん達の言葉からは、「子どもと一緒にいる=幸せ」「子どもといて1人じゃないから孤独なわけがない」「子どもと一日中遊んで楽しんでいる」という誤解と、そう思ってはいけないという罪悪感が、お母さんを窮屈にしているのかもしれないと気付かされます。そして、そういった苦しみが、子どもを愛しているかどうかに紐付けられてしまうことで、余計に誰にも相談できなくなっている現状も見えてきます。
さらに本作では夫の気持ちにもフォーカスしています。妻に認められたい気持ち、妻を助けたいけれど何をやったら良いのかわからず戸惑う気持ち、仕事だって家族のためであることを理解してもらいたい気持ちなどが吐露されていて、お父さんなりの苦悩も見えます。お母さん達からすれば、子どもの面倒だけで大変なのに大人の夫にまで気を使う余裕がないというのが本音かもしれませんが、本作を観ていると、“夫婦”で子育てをする上で、夫婦のコミュニケーションを向上させることも大切なんだと実感できます。人間を育てるわけですから、そりゃ大ごとだし、一筋縄ではいかないですよね。
本作では、夫婦の問題だけでなく、お母さん達が子どもだった頃のお話なども出てきて、親の影響が自分の子育てにどう影響するかにも迫っています。愛をどう伝えれば良いかわからずに大人になったお母さん達が苦悩しながら乗り越えていく姿、それを受ける子どもの素直な表情を見ていると、勇気も湧いてきます。子育てをいろいろな視点で捉えているので、今子育て中の方も、子育てが終わった方も、まだ経験がない人も共感できますよ。

デート向き映画判定
映画『ママをやめてもいいですか!?』

カメラがあるので、微妙な空気が流れる夫婦の会話も大炎上まではいきませんが、ありのままが映っていて、客観視する良いきっかけにできそうです。男性の物事の見方、女性の物事の見方の違いもすごくよくわかるので、すれ違いが多くなっているカップルや夫婦は、これを機に自分達のコミュニケーションを見直してみるのも良いかもしれません。これから結婚するカップルや、子どもを持とうとしている夫婦で観て、自分達の子育てをシミュレーションするのも良いでしょう。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『ママをやめてもいいですか!?』

毎日忙しくて、怒っているばかりに見えるお母さん達の本音がわかります。お母さんが自分達のことを好きなのか不安になっている子ども達も登場しますが、なぜ気持ちがすれ違っているのかをお互いに知って、関係性が変わっていく様子が見られます。よその家と比べてしまうことがあるかもしれませんが、皆それぞれに抱えているものが違います。見た目の態度だけで判断せずに、いろいろな視点を持つ意味でも本作を観てみると良いですよ。

映画『ママをやめてもいいですか!?』

『ママをやめてもいいですか!?』
2020年2月29日より劇場公開/自主上映会&オンライン配信中
インディゴ・フィルムズ
公式サイト

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『悪い夏』北村匠海 『悪い夏』一般試写会 5組10名様ご招待

映画『悪い夏』一般試写会 5組10名様ご招待

映画『ゆきてかへらぬ』広瀬すず/木戸大聖/岡田将生 ゆきてかへらぬ【レビュー】

鈴木清順監督の大正浪漫三部作といわれる『ツィゴイネルワイゼン』『陽炎座』『夢二』や、相米慎二監督の『セーラー服と機関銃』などを手掛けた名脚本家、田中陽造のオリジナル脚本『ゆきてかへらぬ』は…

映画『奇麗な、悪』瀧内公美 奇麗な、悪【レビュー】

中村文則による原作「火」を映画化した本作は…

映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』アンソニー・マッキー キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド【レビュー】

ファルコンことサム・ウィルソン(アンソニー・マッキー)は、元祖キャプテン・アメリカのスティーブ・ロジャース(クリス・エヴァンス)から盾を託され…

映画『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』 ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-【レビュー】

2017年9月に始動した音楽原作キャラクターラッププロジェクト“ヒプノシスマイク”は…

映画『ファーストキス 1ST KISS』松たか子 松たか子【ギャラリー/出演作一覧】

1977年6月10日生まれ。東京都出身。

映画『ファイアーブランド ヘンリー8世最後の妻』アリシア・ヴィキャンデル/ジュード・ロウ ファイアーブランド ヘンリー8世最後の妻【レビュー】

REVIEW政治的手腕を発揮しながらも、暴君としてイギリス史に悪名を刻んだヘンリー8世には…

映画『聖なるイチジクの種』ソヘイラ・ゴレスターニ/マフサ・ロスタミ/セターレ・マレキ 聖なるイチジクの種【レビュー】

REVIEWイランでは2022年に、ある若い女性がヒジャブ(髪の毛を覆う布)を付けておらず…

映画『コメント部隊』ソン・ソック コメント部隊【レビュー】

情報社会になった現代、大きな組織による世論操作が行われているのではないかと…

映画『リアル・ペイン〜心の旅〜』キーラン・カルキン キーラン・カルキン【ギャラリー/出演作一覧】

1982年9月30日生まれ。アメリカ出身。

部活・イベント

  1. 【ARUARU海ドラDiner】サムライデザート(カップデザート)
  2. 【ARUARU海ドラDiner】トーキョー女子映画部 × Mixalive TOKYO × SHIDAX
  3. 【ARUARU海ドラDiner】サポーター集会:パンチボール(パーティサイズ)
  4. 【ARUARU海ドラDiner】プレオープン
  5. 「ARUARU海ドラDiner」202303トークゲスト集合

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』トム・ホランド/ゼンデイヤ 映画好きが選ぶマーベル映画ランキング

2025年もマーベルシリーズ最新作が公開されます。そこでこれまでのマーベルシリーズも合わせて盛り上げたいということで、ランキングを実施しました。

映画『ベルヴィル・ランデブー』 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.3

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

映画『ネクスト・ゴール・ウィンズ』マイケル・ファスベンダーほか トーキョー女子映画部が選ぶ 2024年ベスト10&イイ俳優MVP

毎年恒例のこの企画では、トーキョー女子映画部の編集部マイソンとシャミが、個人的なベスト10と、イイ俳優MVPを選んでご紹介します。

REVIEW

  1. 映画『ゆきてかへらぬ』広瀬すず/木戸大聖/岡田将生
  2. 映画『奇麗な、悪』瀧内公美
  3. 映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』アンソニー・マッキー
  4. 映画『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』
  5. 映画『ファイアーブランド ヘンリー8世最後の妻』アリシア・ヴィキャンデル/ジュード・ロウ

PRESENT

  1. 映画『悪い夏』北村匠海
  2. 映画『ロングレッグス』マイカ・モンロー
  3. 映画『TATAMI』アリエンヌ・マンディ
PAGE TOP