REVIEW
“ゴッドファーザー”シリーズ、『地獄の黙示録』など、映画史を語る上で欠かせない巨匠フランシス・フォード・コッポラ監督が、私財を投じて製作した本作は、40年もの構想を経て完成しました。

1979年、『地獄の黙示録』で映画監督として名声を確立した1980年代初頭に、コッポラは「ローマ共和国の貴族ルキウス・セルギウス・カティリナが国家転覆を目論んだ『カティリナの陰謀』に関する本を読んだ」のを機に本作を着想し、脚本は「300回は書き直したに違いない」といいます。2001年には、ロバート・デ・ニーロ、ポール・ニューマン、レオナルド・ディカプリオ、ユマ・サーマン、ジェームズ・ガンドルフィーニ、ラッセル・クロウなど錚々たるキャストで台本の読み合わせがスタートしたものの、9.11アメリカ同時多発テロの勃発によって中断。それから再開する策を探り続けたものの、2007年に一度断念する覚悟に至りました。でも、80歳になった頃、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックを機に、プロジェクトを再始動。コッポラは自己資金のみで製作することを決意し、先祖代々受け継がれるワイン事業の一部を売却するなどして資金を工面し、1億2000万ドル(約186億円)を投じて、自身の制作会社アメリカン・ゾエトロープにて、他に例をみない大型インディペンデント作品を生み出したのことです。(映画公式資料)

これだけの苦難を乗り越えて完成させるには、並々ならぬ執念がなければできないのは当然で、作品を観れば思い入れの深さがヒシヒシと伝わってきます。本作の舞台は、21世紀のアメリカ。ニューヨークに似たその街は、“アメリカ共和国の大都市ニューローマ”とされていて、ローマ帝国の重厚感を纏った近未来の世界となっています。その世界観は本当に独特で、造詣の深さと独創性が見事に融合していて圧倒されます。情景も、キャラクター達の衣裳やそこらじゅうにある小物もすべて美しくて、コッポラ率いるチームの職人技が光っています。

そして、キャストの豪華さが半端ありません。アダム・ドライバー、ジャンカルロ・エスポジート、ナタリー・エマニュエル、オーブリー・プラザ、シャイア・ラブーフ、ジョン・ヴォイト、ローレンス・フィッシュバーン、タリア・シャイア、ジェイソン・シュワルツマン、ダスティン・ホフマンといった新旧の実力派が名を連ねています。本作の世界観を見事に体現した俳優陣の演技にも魅了されます。

カエサル、キケロなどキャラクターの名前から古代ローマの史実が比喩として引用されているのは読み取れるでしょう。そうして描かれるストーリーからは、現代のアメリカ、ひいては国を問わない現代社会に対するメッセージが伝わってくるとともに、最後に改めて本作に込められたメッセージが語られます。それも踏まえて、本作にただの映画ではない重みを感じ、コッポラがどうしても伝えたい思いがあったとわかります。そして、映画の力を信じているのだなと感じ、その思いに胸が熱くなります。年齢を重ねる毎に観返すと伝わってくるものも変わりそうで、またじっくり味わってみたいと思える作品です。
デート向き映画判定

映画好きにとってはたまらない要素がたくさんあるので、映画好きカップルは特にデートで観ると盛り上がれそうです。歴史、哲学、が好きな方にもビビッとくるポイントがあるでしょうし、芸術的な面に目がいく方もいるでしょう。わかりやすいストーリーとはいえない点で万人向けの作品とはいえないものの、見どころが複数あるので、直感で2人とも観たいと思えばデートで観るのもアリだと思います。
キッズ&ティーン向き映画判定

随所にこだわりが見えるので、さまざまな視点で楽しめそうではありつつ、正直なところストーリーは少々難解に感じるかもしれません。ただし、社会科の授業でローマ史を学んだばかりの皆さんにとっては逆に、史実に出てくる人物像と結びつけて解釈しながら観やすい部分もあるのかもしれません。とはいえ、PG-12という点も踏まえると、中学生以上になって自分で興味を持った時に観るほうが良い気がします。

『メガロポリス』
2025年6月20日より全国公開
PG-12
ハーク、松竹
公式サイト
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TEXT by Myson
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