REVIEW

正欲【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『正欲』稲垣吾郎

REVIEW

朝井リョウの小説を、稲垣吾郎、新垣結衣、磯村勇斗、佐藤寛太等の豪華キャストで映画化した本作は、フェティシズムをテーマに、人に理解されがたい性欲、思想、感情を描いています。先入観を避けるために、どんなフェティシズムを取り上げているのかは伏せるとして、この物語には、マジョリティの観点で語られる“普通”“常識”が、マイノリティの人達に対してどれだけ窮屈さ、生きづらさを与えているかが綴られています。
昨今、多様性という言葉が飛び交うようになりつつも、多様性の範囲として語られている事柄は氷山の一角であると同時に「多様性」という言葉が都合良く濫用されている現実にも気付かされます。また、誰もが必ず人と違う一面を持っているはずなのに、性的な話になると簡単にはいかない。人は生きていく上で性の話題から逃れられないのだなと実感します。さらに、多様性を認めようという風潮が高まっているとしても、性の話となると、どんな多様性も認めようというわけにはいかない現実にふと引き戻される展開があります。この物語はそういった辛辣さと正直さで、一筋縄ではいかない問題に向き合う覚悟を観る者に問うてきます。
また、“正欲”というタイトルが指すものは、広い意味での人間の欲求も含まれているように受け取れます。本作に登場する子ども達、親達の「こうなりたい」「こうなって欲しい」という欲望も含めて、正しい欲求、正しい欲望とは何なのかを考えさせられます。本作はセンセーショナルなテーマを扱っており、そこに最初は目がいきます。ただ、根本には、誰もが何かしらのポイントで感じる疎外感とどう向き合うかが描かれているように思えます。この物語は、疎外感に気付かないように世の中の“普通”に合わせて生きる人が大半であるなか、疎外感に向き合ってありのままの自分を受け容れようともがく人達の物語です。結果的には普遍的なテーマで描かれいて、誰にとっても自分事として観られると思います。

デート向き映画判定
映画『正欲』新垣結衣

誰かと一緒に生きていきたいと思っているなら、一緒に生きていく上でここが合わないと辛いという、とても大切なテーマが描かれています。今交際中のパートナーと将来ずっと一緒にいたいと思うなら、一緒に観て感想を述べ合うと人生観が合うか検討材料が得られそうです。どんなポイントで受容、拒絶の反応を見せるのかによって、根本的に合わない相手かどうかもわかるのではないでしょうか。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『正欲』佐藤寛太/東野絢香

さまざまな立場のキャラクターがいるので、誰かしらに感情移入できると思います。ただ、表面的なところだけを観て誤解して欲しくない部分もあるので、せめて中学生くらいになってから観るほうが、より理解できるように思います。デリケートな内容なので、内容を茶化しそうな友達と観るのはやめておいたほうが良いでしょう。1人でじっくり観るか、正直に感想を述べ合う友達と観るのが良いと思います。

映画『正欲』稲垣吾郎/新垣結衣/磯村勇斗

『正欲』
2023年11月10日より全国公開
ビターズ・エンド
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

©2021 朝井リョウ/新潮社 ©2023「正欲」製作委員会

TEXT by Myson


関連作

書籍「正欲」朝井リョウ著/新潮文庫

Amazonで書籍を購入する

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2023年11月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『ストレンジ・ダーリン』ウィラ・フィッツジェラルド ストレンジ・ダーリン【レビュー】

6章からなる本作は、ユニークな構成となっています…

映画『DROP/ドロップ』メーガン・フェイヒー/ブランドン・スクレナー ブランドン・スクレナー【ギャラリー/出演作一覧】

1990年6月26日生まれ。アメリカ出身。

映画『スーパーマン』デイビッド・コレンスウェット スーパーマン【レビュー】

ジェームズ・ガン監督らしい表現によって、全く新しい“スーパーマン”が観られます。冒頭の演出からして…

映画『親友かよ』アンソニー・ブイサレート アンソニー・ブイサレート【ギャラリー/出演作一覧】

2004年9月27日生まれ。タイ、バンコク出身。

映画『逆火』北村有起哉 逆火【レビュー】

主人公の野島浩介(北村有起哉)は、感動を呼び話題となっている自伝小説の映画化作品の助監督を務めています。野島は作品に活かすため…

映画『アマチュア』来日ジャパンプレミア:レイチェル・ブロズナハン レイチェル・ブロズナハン【ギャラリー/出演作一覧】

1990年7月12日生まれ。アメリカ生まれ。

映画『顔を捨てた男』セバスチャン・スタン 顔を捨てた男【レビュー】

社会が自分を見る目と、自分自身が自分を見る目がいかにして人の心理や生き方、ひいてはウェルビーイングに影響するのかを…

映画『キャンドルスティック』阿部寛 キャンドルスティック【レビュー】

金融をテーマとした映画に、なぜ“『キャンドルスティック』というタイトルが…

映画『スーパーマン』デイビッド・コレンスウェット 映画好きが選んだDCコミックス映画ランキング

今回は正式部員の皆さんに好きなDCコミックス映画について投票していただきました。“スーパーマン”や“バットマン”など人気シリーズが多くあるなか、上位にはどんな作品がランクインしたのでしょう?

映画『夏の砂の上』オダギリジョー/髙石あかり/松たか子/満島ひかり 夏の砂の上【レビュー】

松田正隆による戯曲を映画化した本作は、演出家の玉田真也が監督、脚本を務め、オダギリジョーが…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『スーパーマン』デイビッド・コレンスウェット 映画好きが選んだDCコミックス映画ランキング

今回は正式部員の皆さんに好きなDCコミックス映画について投票していただきました。“スーパーマン”や“バットマン”など人気シリーズが多くあるなか、上位にはどんな作品がランクインしたのでしょう?

映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』トム・クルーズ 映画好きが選んだトム・クルーズ人気作品ランキング

毎度さまざまな挑戦を続け、人気を博すハリウッドの大スター、トム・クルーズ。今回は、トム・クルーズ出演作品(日本劇場未公開作品を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

映画『シークレット・アイズ』キウェテル・イジョフォー/ジュリア・ロバーツ /ニコール・キッドマン 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.5

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『君がトクベツ』畑芽育/大橋和也
  2. 映画でSEL:告知1回目
  3. 映画『親友かよ』アンソニー・ブイサレートピシットポン・エークポンピシット

REVIEW

  1. 映画『ストレンジ・ダーリン』ウィラ・フィッツジェラルド
  2. 映画『スーパーマン』デイビッド・コレンスウェット
  3. 映画『逆火』北村有起哉
  4. 映画『顔を捨てた男』セバスチャン・スタン
  5. 映画『キャンドルスティック』阿部寛

PRESENT

  1. 特製『平成狸合戦ぽんぽこ』ふんわりキーホルダー正吉
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP