REVIEW

シンシン/SING SING【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『シンシン/SING SING』コールマン・ドミンゴ

REVIEW

エンタテインメントの力は、観る側だけではなく作り手にも発揮されることがわかるストーリーです。本作は、ニューヨークに実在する最重警備の収監施設“シンシン刑務所”で行われている、舞台演劇による更生プログラム“RTA”に参加する収監者達の実話です。

映画公式資料によると、「キャストの85パーセント以上は元々シンシンに収監され、RTAプログラムを経験した人々」で、出演者は本人役で登場しています。そのうちの一人、メインキャストのクラレンス・マクリンは「現在、RTAプログラムのコンサルタント兼アンバサダーとして勤めているほか、MGMTに所属しプロの俳優として活動をスタートさせている」そうです。グレッグ・クウェダー監督は「この作品には数名はプロの俳優がほしかったのですが、キャストの大半は実際のプログラムの卒業生である必要がありました。その点、私たちには自信がありましたね。才能ある人々がそこにいるとわかっていたからです」と、彼等の演技力への信頼を語っています。

映画『シンシン/SING SING』コールマン・ドミンゴ/ショーン・サン・ホセ

本作を観ると、収監者の中には、不当に逮捕され収監されている人がいることがわかります。重罪で有罪となった人であっても、更生したいと頑張っている人がいることもわかります。劇中ではあるキャラクターの「俺たちは人間に戻るために集まってる」という言葉がすごく心に響きました。このセリフの前後にはそのキャラクターが経験した壮絶な状況が語られており、人間が感情を失う恐ろしさを実感します。

映画『シンシン/SING SING』コールマン・ドミンゴ

だからこそ、さまざまな感情と向き合う機会となる、舞台演劇による更生プログラムは有効なのだと思います。実際に、ドラマセラピーという心理療法があるのも、同じような背景があるからだと考えられます。また、RTAプログラムは「アメリカ国内において、収監後ふたたび刑務所に戻ってくる人の割合は60パーセントを超えているが、RTAの卒業生が刑務所に戻ってくる割合は5パーセント未満」という目覚ましい結果を出していて、「いまでは、ニューヨーク州全体の6つの刑務所に存在してい」るとのことです(映画公式資料)。

そして、本作で主演と製作を務め、第97回アカデミー賞で主演男優賞にノミネートされたコールマン・ドミンゴは、もともと教育的演劇でキャリアをスタートしたという経歴を持っており、「地元サンフランシスコのベイエリアの高校をいくつも訪れては演じる一方で、HIV、エイズ、紛争解決といった重要な問題について子供たちに教えた」と語っています(映画公式資料)。こうした背景を知ると、まさに彼にとって運命的な作品に思えます。

映画『シンシン/SING SING』コールマン・ドミンゴ

本作では、舞台演劇を作り上げていく過程が更生に役立っているのはもちろんのこと、そもそも不当に収監されている人が精神的不調に陥るのを防ぐ役割を果たしている様子も伝わってきます。主人公のジョン・“ディヴァインG”・ウイットフィールド(コールマン・ドミンゴ)は、自分の無罪を証明しようとするだけではなく、仲間達の裁判がうまくいくように手伝っています。それでも、収監されている立場としては無力感を味わう状況が出てきます。他のメンバーにもさまざまな葛藤が出てきます。そんな時に、RTAプログラムに参加していることがどう影響を及ぼすのか、ぜひこの実話を観て確かめてください。

デート向き映画判定

映画『シンシン/SING SING』コールマン・ドミンゴ/ショーン・サン・ホセ/ポール・レイシー

ロマンチックな要素は全くありませんが、人間同士が助け合う姿に心が温かくなるので、デートで観るのも良いでしょう。シェイクスピアの戯曲や有名なセリフが話題に挙がったり、演じる上でどんな感情が難しいかなど議論されるシーンもあるので、もともと演劇に興味があるカップルなら一層楽しめると思います。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『シンシン/SING SING』コールマン・ドミンゴ

収監されている人達の背景はさまざまで、克服しなければいけない課題も異なります。そんななか、舞台演劇を作り上げていく過程で、どんな化学反応が生まれるかを観ると、人と人との繋がりが本当に大切だと気づけるでしょう。また、収監されている人の中には不当に逮捕された人もいるなか、逮捕された事実だけでレッテルを貼ってはいけないこともわかります。

映画『シンシン/SING SING』コールマン・ドミンゴ/クラレンス・マクリン/ショーン・サン・ホセ

『シンシン/SING SING』
2025年4月11日より全国順次公開
ギャガ
公式サイト

ムビチケ購入はこちら
映画館での鑑賞にU-NEXTポイントが使えます!無料トライアル期間に使えるポイントも

© 2023 DIVINE FILM, LLC. All rights reserved.

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2025年4月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『ナチス第三の男』ジャック・オコンネル ジャック・オコンネル【ギャラリー/出演作一覧】

1990年8月1日生まれ。イギリス出身。

映画『ハルビン』ヒョンビン ハルビン【レビュー】

『KCIA 南山の部長たち』『インサイダーズ/内部者たち』のウ・ミンホが監督と、『ソウルの春』の制作スタッフとタッグを組んだ本作は…

映画『ハルビン』ジャパンプレミア:ヒョンビン、リリー・フランキー、ウ・ミンホ監督 リリー・フランキーがヒョンビンの優しさを感じたエピソードとは?『ハルビン』来日ジャパンプレミア

ヒョンビン主演のサスペンス・アクション映画『ハルビン』が、7月4日より全国公開となります。その公開を記念し、ヒョンビンとウ・ミンホ監督が来日し、さらに本作で伊藤博文役を演じたリリー・フランキーが登壇するジャパンプレミアが行われました。

映画『サブスタンス』デミ・ムーア デミ・ムーア【ギャラリー/出演作一覧】

1962年11月11日生まれ。アメリカ、ニューメキシコ州出身。

映画『アスファルト・シティ』ショーン・ペン/タイ・シェリダン アスファルト・シティ【レビュー】

ニューヨークのブルックリンを舞台に救急隊員が直面する日常を描いた本作は、シャノン・バーク著「Black Flies」(2008)を原作として、『暁に祈れ』のジャン=ステファーヌ・ソヴェール監督が映画化…

映画『Mr.ノボカイン』レイ・ニコルソン レイ・ニコルソン【ギャラリー/出演作一覧】

1992年2月20日生まれ。アメリカ出身。

映画『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』綾野剛/柴咲コウ/亀梨和也 でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男【レビュー】

怖い、ものすごく怖い。いろんな意味で本当に…

映画『おいしくて泣くとき』美村里江 美村里江【ギャラリー/出演作一覧】

1984年6月15日生まれ。埼玉県出身。

映画『ババンババンバンバンパイア』吉沢亮/板垣李光人 ババンババンバンバンパイア【レビュー】

運命的な出会いから、銭湯に住み込みで働いている450歳のバンパイア森蘭丸(吉沢亮)は、銭湯の一人息子、李仁(板垣李光人)が童貞のまま18歳になるのを…

映画『君がトクベツ』畑芽育/大橋和也 心理学から観る映画55:推し活がもたらす幸福感『君がトクベツ』

今や「推し活」「推し」という言葉はすっかり浸透しました。なぜ、人が推し活にハマるのかといえば、きっと幸福感があるからでしょう。そこで、今回は推し活が与える幸福感について、『君がトクベツ』のストーリーをもとに考えます。

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』トム・クルーズ 映画好きが選んだトム・クルーズ人気作品ランキング

毎度さまざまな挑戦を続け、人気を博すハリウッドの大スター、トム・クルーズ。今回は、トム・クルーズ出演作品(日本劇場未公開作品を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

映画『シークレット・アイズ』キウェテル・イジョフォー/ジュリア・ロバーツ /ニコール・キッドマン 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.5

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

映画『プラダを着た悪魔』アン・ハサウェイ/メリル・ストリープ 元気が出るガールズムービーランキング【洋画編】

正式部員の皆さんに“元気が出るガールズムービー【洋画編】”をテーマに、好きな作品を選んでいただきました。果たしてどんな結果になったのでしょうか?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『君がトクベツ』畑芽育/大橋和也
  2. 映画でSEL:告知1回目
  3. 映画『親友かよ』アンソニー・ブイサレートピシットポン・エークポンピシット

REVIEW

  1. 映画『ハルビン』ヒョンビン
  2. 映画『アスファルト・シティ』ショーン・ペン/タイ・シェリダン
  3. 映画『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』綾野剛/柴咲コウ/亀梨和也
  4. 映画『ババンババンバンバンパイア』吉沢亮/板垣李光人
  5. 映画『メガロポリス』アダム・ドライバー/ナタリー・エマニュエル

PRESENT

  1. 特製『平成狸合戦ぽんぽこ』ふんわりキーホルダー正吉
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP