REVIEW

ソフト/クワイエット【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ソフト/クワイエット』ステファニー・エステス/オリヴィア・ルッカルディ/エレノア・ピエンタ/メリッサ・パウロ

ブラムハウスが手がける、この社会派スリラーはどこにでもある現実を描いているからこそ、恐ろしさが半端ありません。登場人物はごく普通の主婦、会社員、教師といった顔ぶれ。でも、彼女達は、過激な思想を持った白人至上主義者です。幼稚園で教師をしているエミリー(ステファニー・エステス)は、白人至上主義のグループ「アーリア人団結をめざす娘たち」の集会を開きます。そこへエミリーを含め6人の女性が集まります。彼女達は日常で感じる逆差別について話したり、人種差別だけではなく、フェミニズムについても異議を唱えます。そして、集会がお開きになった後、さらに恐ろしい光景が繰り広げられます。
彼女達はあたかも正論のように話すので、それなら一旦彼女達の言い分も理解できるところがあるのか観てみようという気持ちになるかもしれません。ただ、その後に映し出される彼女達の本性を観ると、譲歩しようとした気持ちを返してくれと思うはずです。彼女達は自分がうまくいかない理由を、逆差別のせいにしています。また、結局人種は関係なく人間性の問題だとわかります。彼女達のように、多様性を受け入れられない人間は、たとえ同じ人種だけの社会になっても、うまくやっていけないことが一目瞭然です。敵がいなくなれば、また新たな敵を自分から作り、自分が不幸である言い訳に使うだけなのです。
社会的弱者と、あたかも逆差別の被害者であるかのように自分を正当化しようとしているだけの者との大きな違いは、後者は自己中心的であることです。それは本作に登場する女性達の間のやり取りのあちこちに垣間見ることができます。彼女達は、結局は人と本当の関係を築けない人間です。映画公式サイトには、ベス・デ・アラウージョ監督が本作を作った背景も詳しく載っています。ぜひ監督の思いも合わせて読んで欲しいです。
本作には人種差別だけではなく、女性としての在り方もテーマとして含まれています。私達日本人にも身近なストーリーです。全編ワンショットで紡がれる緊張感たっぷりでリアルなスリルをぜひ味わってください。これが映画の中のことだけであって欲しいと思うはずです。

デート向き映画判定
映画『ソフト/クワイエット』ダナ・ミリキャン

本作に登場するエミリー夫妻のやり取りも衝撃的です。カップルで観ると、複雑な心境になるでしょう。エミリーが抱えているのはとても根深い問題で、結婚してからこういう本性がわかると最悪です。相手に危険な思想がある気配を感じている方は、一旦自分の恋愛関係を冷静に見直すために1人で観ることをオススメします。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『ソフト/クワイエット』シシー・リー

とても大切なことを学べる作品です。若い皆さんからすると、大人ってクレイジーだと思う部分が大いにあると思います。本作に登場するエミリー達は、反面教師として観てください。その上で、どんな人間関係を築いていきたいか、どんな社会を望むのか考えてみてください。そうすれば、自分の価値観も見えてくると思います。

映画『ソフト/クワイエット』ステファニー・エステス

『ソフト/クワイエット』
2023年5月19日より全国順次公開
アルバトロス・フィルム
公式サイト

© 2022 BLUMHOUSE PRODUCTIONS, LLC. All Rights Reserved.

TEXT by Myson

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師』ヨナス・ダスラー ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師【レビュー】

第二次世界大戦下のドイツに実在した牧師、ディートリヒ・ボンヘッファーは、ナチスに支配された教会やユダヤ人達を救おうと奮闘…

映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』SUMIRE 佐藤菫【ギャラリー/出演作一覧】

1995年7月4日生まれ。東京都出身。

映画『プレデター:バッドランド』エル・ファニング プレデター:バッドランド【レビュー】

おもしろい!いろいろユニーク!“プレデター”シリーズは…

映画『モンテ・クリスト伯』ピエール・ニネ モンテ・クリスト伯【レビュー】

アレクサンドル・デュマ・ペールの傑作小説「巌窟王」を映画化した本作は…

映画『秒速5センチメートル』松村北斗 映画レビュー&ドラマレビュー総合アクセスランキング【2025年10月】

映画レビュー&ドラマレビュー【2025年10月】のアクセスランキングを発表!

映画『旅と日々』シム · ウンギョン/堤真一 旅と日々【レビュー】

つげ義春の「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」を原作に、『ケイコ 目を澄ませて』『夜明けのすべて』などを手がけた三宅唱監督が映画化…

映画『風のマジム』肥後克広 肥後克広【ギャラリー/出演作一覧】

1963年3月15日生まれ。沖縄県出身。

【20周年記念ボイスシネマ声優口演ライブ2025】羽佐間道夫、山寺宏一ほか 人気声優達が真剣勝負!会場が終始笑いに包まれた【20周年記念ボイスシネマ声優口演ライブ2025】本番リポート

発起人である羽佐間道夫のもと、山寺宏一、林原めぐみほか錚々たる人気声優達がズラリと顔を揃えたライブは今年で20周年を迎えました…

映画『あの時、愛を伝えられなかった僕の、3つの“もしも”の世界。』ホン・サビン/シン・ジュヒョブ あの時、愛を伝えられなかった僕の、3つの“もしも”の世界。【レビュー】

物語の始まりは、1995年の韓国、テグ。学校でいじめられていたドンジュン…

映画『8番出口』河内大和 河内大和【ギャラリー/出演作一覧】

1978年12月3日生まれ。山口県出身。

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年11月募集用 AI時代における人間らしさの探求【映画学ゼミ第2回】参加者募集!

ネット化が進み、AIが普及しつつある現代社会で、人間らしさを実感できる映画鑑賞と人間にまつわる神秘を一緒に探求しませんか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年11月募集用
  2. 映画『おーい、応為』長澤まさみ
  3. AXA生命保険お金のセミナー20251106ver3

REVIEW

  1. 映画『ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師』ヨナス・ダスラー
  2. 映画『プレデター:バッドランド』エル・ファニング
  3. 映画『モンテ・クリスト伯』ピエール・ニネ
  4. 映画『秒速5センチメートル』松村北斗
  5. 映画『旅と日々』シム · ウンギョン/堤真一

PRESENT

  1. 映画『TOKYOタクシー』オリジナルパラパラメモ
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP