REVIEW
怖いはずなのにどこか可笑しい絶妙なバランスの本作は、スティーヴン・キングの短編を原作としています。本作は、数々のヒットシリーズを生み出してきたジェームズ・ワンがプロデュース、『ロングレッグス』のオズグッド・パーキンスが監督と脚本を務めています。ちなみにオズグッド・パーキンスは俳優としても活躍していて、本作では、チップ伯父として出演しています。

監督デビュー作からホラー映画を撮っているオズグッド・パーキンス監督は、その背景やホラーの好みについて下記のように語っています。ちなみに下記の「父」というのは、アルフレッド・ヒッチコック監督作『サイコ』でノーマン・ベイツを演じたアンソニー・パーキンスです。
僕がホラー映画を作り始めた理由は―あんまり言いたくないけれど―ある意味父の影響があり、僕が撮るべきものだと思ったんだ。本当に好きなホラー映画もあったから、何度か作ったし、ホラーが嫌いというわけではない。ただ正直なことを言えば僕はホラー、特に新作のホラーは観に行かないんだ。昔の映画『顔のない眼』や『赤い影』とかは好きだけど。(映画公式資料)

ホラーの才能に恵まれたオズグッド・パーキンス監督のルーツを知ると、何だか宿命的なものを感じますね。また、映画公式資料には、「監督はこの映画の制作意図につながる根源的な記憶について、子どものころ家族と『グレムリン』を観に行ったことを振り返っている。幼いパーキンスは今まで見た中で最高の映画だと思ったのに、彼の母親がまあまあと思ったことに少年は激怒した。これは彼にとって至高の映画体験であり、彼が本作で蘇らせたい映画でもあるのだ」とあって、何だか納得しながらホッコリしちゃいました(笑)。私も『グレムリン』大好きです!それはさておき、『グレムリン』への思いは、怖いのに愉快な本作のテンションに繋がっているなと感じます。

双子のハルとビルは、姿を消した父が残していったサルのおもちゃを見つけます。そのおもちゃは、サルの背中についたゼンマイを巻くと、ドラムを叩くというシンプルなもの。そして、まだ動くのか確かめるためにゼンマイを巻いてからというもの、2人の周囲では異様な出来事が続くようになります。

このサルが不気味なのは、意図がわからない点です。ハルとビルは、周囲で起こる不穏な出来事とサルに何かがあると感じながらも因果関係はわからないまま怯えることになります。本作の見どころの1つは、次から次へと無作為に人が変死を遂げていく点です。ホラー好きな方は、変死の描写に溢れる遊び心に笑みがこぼれるでしょう(笑)。私はあるキャラクターが花瓶のようなものに足をツッコむところが細かすぎる小ネタでツボでした。

また、本作はキャストが魅力的です。大人になったハルとビルの双子を演じるのはテオ・ジェームズ。ハルとビルの子ども時代は、Netflixの人気ドラマ『スイート・トゥース: 鹿の角を持つ少年』などでも注目を集めるクリスチャン・コンヴェリーが演じています。母役は『シー・ハルク:ザ・アトーニー』のタチアナ・マズラニーが務めており、アダム・スコット、イライジャ・ウッドも出番が少ないながらクセのある役で印象を残しています。キャスト目当てで観るもよし、数々の変死シーンを堪能するという楽しみ方で終わってもよしとは思いつつ、何か意味を見出したい方に代わって、私なりの解釈も書いておきます。
ここからはあくまで私個人の解釈でネタバレを含みますので、鑑賞後にお読みください。

サルのおもちゃは他責思考の隠喩とも受け取れます。誰も悪くないのに誰かを悪いと思うことで、人は何かを乗り越えたりできる一方で、その恨みに囚われてしまう。そんなことを表したストーリーと解釈すると、グンと見応えが増すように思います。
デート向き映画判定

ホラー好きなら「そんなアホな(笑)!」「いわんこっちゃない(笑)!」なんて心の中でツッコミながら楽しめる一方で、ホラーが苦手な人にとってはかなりハードルが高いように感じます。でも、あまりにバラエティに富んだ死に様が描かれているので、だんだん慣れてくるかもしれません。ホラーも観られるようになりたいという願望をお持ちの方なら、デートで観ると楽しく鍛錬を積めそうです。
キッズ&ティーン向き映画判定

だいぶ刺激が強いので、R-15を観られる15歳で観たとして、本作を観た後、ホラー好きに転ぶか、トラウマになるかは読めません(苦笑)。一応、軽いホラーを複数観て慣れてから本作を観るほうが心に余裕をもって楽しめるのではないでしょうか。

『THE MONKEY/ザ・モンキー』
2025年9月19日より全国公開
R-15+
KADOKAWA
公式サイト
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TEXT by Myson
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情報は2025年9月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

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