REVIEW
真藤順丈が直木賞を受賞した同名小説を、“るろうに剣心”シリーズや『レジェンド&バタフライ』を手掛けた大友啓史監督が映画化した本作では、沖縄がアメリカ領だった時代に、米軍基地から物資を奪い、住民に分け与えていた“戦果アギヤー”と呼ばれる若者達の姿が映し出されています。リーダーであるオン(永山瑛太)、幼馴染みのグスク(妻夫木聡)、レイ(窪田正孝)は、いつか大きな戦果を上げることを夢見ています。でも、ある日突然オンが姿を消してしまい、恋人のヤマコ(広瀬すず)やグスク、レイはそれぞれにオンの帰りを待つことになります。
上映時間191分という長尺の中に、沖縄がアメリカの統治下だった時代の物語がぎっしりと詰まっており、見応え抜群です。皆の英雄であったオンがなぜ消えてしまったのかというミステリー要素がありながら、残された3人がそれぞれの道を進み生きていく人間ドラマも見どころです。

また、3人の姿を通して当時の沖縄の人達が抱えていた想いも垣間見えてきます。例えば、刑事になったグスクがアメリカ人の犯罪者を追いかけるも、アメリカ側に引き渡さなければいけない状況など、彼らのやるせない気持ちがひしひしと伝わってきます。そういった多くの歴史的事件を本作を通して目の当たりにすることで、「こういうことが当時の沖縄で起きていたのか」と、切ない気持ちになる反面、今後同じことを繰り返さないようにすることの大切さも感じます。
他にも大規模なセットや小道具など、当時の雰囲気が丁寧に再現されていることにも驚かされます。そして、当時の沖縄の世界観に、妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太らが自然と溶け込んでいるのもさすがです。個人的には広瀬すずが演じたヤマコが女性として抱える想いや、ある事件に巻き込まれてしまう場面が特に印象に残っています。

戦争や歴史というシリアスなテーマがありながらも、途中クスッと笑える場面があったり、迫力あるアクションシーンなども観られ、大友監督の手腕により見事にエンタテインメントへと昇華されています。
また、トーキョー女子映画部の部活では大友監督を迎え、貴重なお話をたくさん伺いました。その詳細は部活リポートをご覧いただくとして、監督が沖縄の歴史と真摯に向き合い、ただならぬ思いで作り上げた熱意が伝わってきました。その熱意はそのまま映画にも反映されており、当時の沖縄で起きたことを決して他人事ではなく自分事として考え、今後の未来にも繋げたいと思いました。

歴史の知識の有無を問わず、観れば何か感じるものがあるのではないでしょうか。本作で描かれる歴史の物語は、現代社会の問題にも通ずる部分もあるので、本作を観て考えるきっかけにもなります。
デート向き映画判定

デートのムードを盛り上げるタイプの作品ではないので、じっくり観たい場合は1人か映画好きの友達と観るのがオススメです。もしデートで相手を誘う場合は、事前にテーマくらいは伝えておいたほうが親切かもしれません。カップルで観る場合は、ヤマコとオンが恋人関係であることから、オンの消息がわからなくなった後のヤマコの気持ちや行動に共感できる部分もありそうです。
キッズ&ティーン向き映画判定

若い世代の皆さんにもぜひ観て欲しいです。今は観光地として有名な沖縄で、かつてこんなことが起きていたと思うと衝撃的な部分がたくさんあるかもしれません。でも、きっと皆さんにとっても感じるものが多い作品だと思います。本作で描かれる歴史について、もし気になることがあったら鑑賞後にご自身で調べると勉強にもなりますよ。

『宝島』
2025年9月19日より全国公開
東映、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト
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©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会
TEXT by Shamy
豪華キャスト&スタッフ登壇!『宝島』東京プレミアイベント開催

レッドカーペットが敷かれた会場には、主演の妻夫木聡をはじめ、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太、塚本晋也、中村蒼、瀧内公美、 栄莉弥、尚玄、木幡竜、奥野瑛太、村田秀亮(とろサーモン)、デリック・ドーバーら超豪華キャストと大友啓史監督の14名が集結しました。会場には多くのファンが集まり、1時間以上に渡る交流が行われ、舞台挨拶ではそれぞれ本作への熱い想いを語りました。


“宣伝アンバサダー”として物語の舞台となる沖縄を皮切りに20都市以上を周り、本作に込めた想いを伝え続けてきた妻夫木聡は、その原動力について、「やっぱり僕は“映画の力”を信じたいんですよね。もしこの『宝島』に、誰かの人生や未来を変えられる力が1%でもあるのであれば、僕はその奇跡を信じたいし、目の当たりにしたいんです。そのためには“手渡しで届けないと”という想いがすごくありました」と語りました。

そして、これから本作をご覧になる方に向けて大友啓史監督は、「日本が高度経済成長に向かって豊かになる時代に、沖縄ではこんな世界があった。知らなければならないし、知るだけでなく感じなけれならないと思い『宝島』を作りました。映画の持つ魅力として、登場人物達の感情に自分の感情を重ねながら“沖縄を追体験できる”ことを、1人の人間としてやらなければいけないと思いました。歯を食いしばってやれることは精一杯やったし、俳優部もスタッフも皆がついてきてくれました。そしてまた、映画というのはコミュニケーションの最大のツールでもあります。皆さんが追体験したことをぜひ僕らに伝えて欲しいです。そこから何かが始まることがあるかもしれない。あの当時の沖縄には“気づき”がたくさんある。皆さんに何か持ち帰っていただいて、その声を届けて欲しいです。もしその声を多くの方に広げたいと思ってくれたのなら、大友組の1人としてぜひお願いします!」とコメント。

最後に妻夫木聡は、「映画は観てもらって初めて完成するものだと思っていましたが、全国キャラバンを通して、どんどん映画が大きく育っていることを日々感じています。映画としてのエンディングはあるけれど、本当のエンディングは僕達の、皆さんの未来なんじゃないかなと。映画というのはもしかしたら社会の中ではちっぽけなものかもしれません。でも、『宝島』という映画にはその力があるんだと本当に心から信じています。1人でも多くの方に届けてくれると嬉しいです」と話し、盛大なプレミアイベントが幕を閉じました。
関連作
「宝島」真藤順丈 著/講談社文庫
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情報は2025年9月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。
