REVIEW

透明人間

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『透明人間』エリザベス・モス

この物語には2種類の怖さがあり、1つは透明人間にまでなって主人公セシリアを追ってくるエイドリアンという男の存在です。物語の序盤でまず彼の暴力性を表現するシーンがシンプルかつストレートにわかるように描かれ、その後、彼が透明人間になった時「あの強い腕力の男が姿も見せないまま暴力を振るってきたら太刀打ちできない」ということに説得力を与えています。でも彼の本当の怖さは、腕力ではなく、狡猾で頭が良く、心理的に人を追い詰めることで相手を操る力にあります。彼はセシリアを取り戻すために、巧妙な手口を使い、セシリアが精神的に異常だと周囲に思わせようとさまざまな罠を仕組んできます。透明人間なんて誰も信じないので、セシリアの身近で起こるトラブルは、周囲からすれば彼女が起こしたようにしか見えません。そうやって、どんどんとセシリアは孤立し、そこにいないはずのエイドリアンの仕業だと必死に訴えるほど、常軌を逸しているように見られてしまう様子がとても恐ろしいのです。もうほんとにエイドリアンがやりたい放題なので、最初から最後まで緊張感が切れることがありませんが、最後の最後はスカッとしますので、頑張って完走してください!
そしてやっぱり気になるのは、透明人間はどういう仕組みで透明になってるのかということ。過去に透明人間が登場する映画は何作かあって、1つはケヴィン・ベーコンの『インビジブル』が浮かびますが、本作の透明人間の仕組みはまたあれとは違うように思いました。

ここから、本作の透明人間の構造のお話をするので、何も知りたくない方は観終わってから読んでください。

公式資料を見てみると、不可視性の技術はすでに存在しているが、まだ小規模の物でしか実現できておらず、特殊効果チームは映画的ではないと判断し、代わりに光学技術に基づいたアイデアを思いついたとありました。こうして、特殊効果スタジオ、オッド・スタジオは本作のために見事な透明スーツを生み出したとされていますが、構造としては「エイドリアンのスーツは何百もの小さなカメラでできていて、すべてのカメラで周辺の映像を撮影しつつ、後ろ側のカメラで撮影したものをホログラムで前側に映し出すことができる。(中略)スーツを着ている人物の背景を正面に映し出すことで、その人物は透明人間になることができる(公式資料から抜粋」とのことです。SF映画に登場する最新技術が、何年も経って現実社会に出現することはこれまでもあるので、近い将来実現するかも知れないですね。そう思うと一層リアリティが増して、「透明人間、怖っ!」となりますね。そして透明人間なので、音響で驚かされるシーンも印象的で、私は何度もイスから浮きました(笑)。それにしても、やっぱりブラムハウス・プロダクションズの映画はおもしろい!日本で知名度の高い俳優はあまり出ていませんが、ジェイソン・ブラムがプロデューサー、リー・ワネルが監督、エリザベス・モスが主演というだけで、映画ファンは十分期待できますよね。その期待を裏切らない本作のスリルをぜひ味わってください。

デート向き映画判定
映画『透明人間』エリザベス・モス

吊り橋効果が抜群なので、自然に2人の距離は縮まるでしょう。でも、どちらかが相手を束縛気味のカップル、若干ストーカーになりつつある関係の場合は、薄々「自分達もこんな関係じゃん」って思いながら観てしまい、不穏な空気になるでしょう。なので、心おきなく観たい人は友達と観てください。1人で観に行くのも良いですが、ドキッとする場面で自然に身体が反応したりして、観終わった後にいろいろ誰かとリアクションを報告したくなるので、複数名で観るほうが楽しいのではとは思います。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『透明人間』エリザベス・モス

フランケンシュタイン、狼男に並び、透明人間もモンスターの代表格なので、キッズやティーンの皆さんこそ好きだろうなと思います。PG-12なので12歳未満の人は保護者と一緒に観てくださいということになりますが、親子で観て気まずいことはそれほどなさそうなので大丈夫でしょう。ただ、「ワオ!」となるホラー的シーンはあるので、耐えられる自信がないキッズは無理をせず大きくなってから観てください。中高生はその辺は大丈夫かなと思うので、ぜひ観て観てください。

映画『透明人間』エリザベス・モス

『透明人間』
2020年7月10日より全国公開
PG-12
東宝東和
公式サイト

© 2020 Universal Pictures

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人 君の顔では泣けない【レビュー】

高校1年生の夏、坂平陸(武市尚士)と水村まなみ(西川愛莉)はプールに一緒に落ちたことで体が入れ替わってしまいます。2人はすぐに元に戻ることができず15年を過ごし…

映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト スプリングスティーン 孤独のハイウェイ

物語の舞台は1982年。ブルース・スプリングスティーン(ジェレミー・アレン・ホワイト)は、名声を手に入れながらも、葛藤を抱えて…

映画『2つ目の窓』松田美由紀 松田美由紀【ギャラリー/出演作一覧】

1961年10月6日生まれ。東京都出身。

「第38回東京国際映画祭」クロージングセレモニー:受賞者 東京グランプリは『パレスチナ36』!第38回東京国際映画祭ハイライト

2025年10月27日(月)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開幕したアジア最大級の映画の祭典である第38回東京国際映画祭が、11月5日(水)に閉幕。今年も個性豊かな作品が多数出品され、さまざまなイベントが実施されました。以下に、第38回東京国際映画祭ハイライトをお届けします。

映画『平場の月』堺雅人/井川遥 平場の月【レビュー】

朝倉かすみ著の同名小説を実写化した本作は、『ハナミズキ』『花束みたいな恋をした』(2021年)などを手がけた土井裕泰が監督を務めて…

映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル ぼくらの居場所【レビュー】

カナダのトロント東部に位置するスカボローを舞台に、さまざまな背景を抱えた3組の親子の姿を…

映画『ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師』ヨナス・ダスラー ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師【レビュー】

第二次世界大戦下のドイツに実在した牧師、ディートリヒ・ボンヘッファーは、ナチスに支配された教会やユダヤ人達を救おうと奮闘…

映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』SUMIRE 佐藤菫【ギャラリー/出演作一覧】

1995年7月4日生まれ。東京都出身。

映画『プレデター:バッドランド』エル・ファニング プレデター:バッドランド【レビュー】

おもしろい!いろいろユニーク!“プレデター”シリーズは…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画学ゼミ2025年11月募集用 AI時代における人間らしさの探求【映画学ゼミ第2回】参加者募集!

ネット化が進み、AIが普及しつつある現代社会で、人間らしさを実感できる映画鑑賞と人間にまつわる神秘を一緒に探求しませんか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年11月募集用
  2. 映画『おーい、応為』長澤まさみ
  3. AXA生命保険お金のセミナー20251106ver3

REVIEW

  1. 映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人
  2. 映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト
  3. 映画『平場の月』堺雅人/井川遥
  4. 映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル
  5. 映画『ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師』ヨナス・ダスラー

PRESENT

  1. 映画『TOKYOタクシー』オリジナルパラパラメモ
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP