REVIEW

燕 Yan

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『燕 Yan』水間ロン/山中崇

本作は、日本と台湾を舞台に、離ればなれになった家族が、それぞれ苦しみを抱えながら再会し、少しずつ成長していく姿を描いています。監督は、『ユリゴコロ』『新聞記者』『サヨナラまでの30分』などの作品で撮影監督を務めてきた今村圭佑で、本作が初監督作品となっています。全体的に柔らかいタッチの映像が美しく、台湾の雰囲気にも合っていて、主演の水閒ロンをはじめとしたキャストもその世界観に溶け込んでいて、すごく幻想的な作品です。 本作の主人公は台湾人の母と日本人の父を持ち、台湾生まれ日本育ちという背景があるのですが、幼少の頃は名前や、台湾人のお母さんに持たされるお弁当の中身のことなどを友達に指摘されて、「どうして皆と同じじゃないんだろう」と、居心地の悪さを感じています。2つの国の文化を持っていることは、客観的に見るとすごく素敵なことだと感じるのですが、主人公にとってはいろいろな葛藤があり、“自分は何人(なにじん)なのか”という問いを抱えながら生きていて、観ていて切ない気持ちになる場面もありました。物語としては、大人になった彼が、あることをきっかけに台湾にいる兄に会いに行き…という点に焦点が当てられているので、彼が家族に対してどんな感情を抱いているのか、また、彼自身のアイデンティティがどうなっているのかなどに注目しながら観て欲しいと思います。
アート系の作品ではありますが、ストーリー自体がしっかりしているので、展開に置いていかれることもなく、かなり観やすかったです。観賞後の余韻も心地良いので、ゆったりしたい気分の時に観るのも良いと思います。

デート向き映画判定
映画『燕 Yan』水間ロン

物語自体に恋愛要素はありませんが、アイデンティティを問う物語なので、デートで一緒に観て、観賞後はこれを機にお互いの家族や幼少期の話など、よりパーソナルな部分について話し合うこともできそうです。もし相手やご自身が主人公と同じように多国籍な家庭で育ったなら、本作の主人公についてどう思ったのか、自分の場合はどうなのかなど、これを機に聞いてみるor話してみるのも良いと思います。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『燕 Yan』山中崇

台湾の美しい風景と共にゆったりと物語が進んでいくので、キッズが集中して観るのはちょっと難しいかも知れませんが、ティーンの方々にはぜひ観て欲しいです。国際化が進むに連れ、主人公と同じように両親の国籍が違ったり、海外育ちだったり、外国人だったりと、いろいろな人が皆さんの周りにいると思います。本作では多文化のアイデンティティを持つ主人公の葛藤が描かれていますが、そんな彼の姿を観て、もし主人公の立場だったら、また、友達だったらどう接するのかなど考えて欲しいと思います。将来的には、もはや誰が何人とか、どこ出身なのかなどが関係ない世の中になったら良いですよね。そのためにもまずは相手を知るということを本作で学びましょう。

映画『燕 Yan』水間ロン/山中崇

『燕 Yan』
2020年6月5日より全国順次公開
公式サイト

©2019「燕 Yan」製作委員会

TEXT by Shamy

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

ポッドキャスト:トーキョー女子映画部チャンネルアイキャッチ202509 ポッドキャスト【トーキョー女子映画部チャンネル】お悩み相談「なんとなく孤独、これでいいの?」

今回も、正式部員の皆さんからいただいたお悩み相談を2件取り上げました。最後に、2025年10月劇場公開作品の中で特にオススメの3作品を紹介しています。

映画『ローズ家~崖っぷちの夫婦~』オリヴィア・コールマン/ベネディクト・カンバーバッチ ローズ家~崖っぷちの夫婦~【レビュー】

REVIEW昔、同じような設定の映画があった気がすると思っていたら、やはり元ネタはマイケル…

映画『恋に至る病』長尾謙杜/山田杏奈 恋に至る病【レビュー】

斜線堂有紀による小説を、長尾謙杜と山田杏奈をW主演に迎え映画化した本作。転校生の宮嶺(長尾謙杜)は…

映画『爆弾』山田裕貴/佐藤二朗 『爆弾』一般試写会 10組20名様ご招待

映画『爆弾』一般試写会 10組20名様ご招待

映画『おーい、応為』長澤まさみ 心理学から観る映画58:遺伝と環境がヒトに与える影響『おーい、応為』

今回は、葛飾北斎の娘、お栄(長澤まさみ)の半生を描いた『おーい、応為』を題材に、遺伝と環境が才能に与える影響について考えてみます。

海外ドラマ『ウェンズデー シーズン2』ジェナ・オルテガ ジェナ・オルテガ【ギャラリー/出演作一覧】

2002年9月27日生まれ。アメリカ出身。

映画『愚か者の身分』北村匠海/林裕太/綾野剛 愚か者の身分【レビュー】

闇ビジネスに関するニュースが増えてきた日本において、本作で描かれているような出来事は…

映画『次元を超える』窪塚洋介/松田龍平 次元を超える【レビュー】

キービジュアルとタイトル、「人はどこから来て、どこへ行くのか」という意味深なキャッチコピーだけで観たくなったのは…

映画『見はらし世代』黒崎煌代 黒崎煌代【ギャラリー/出演作一覧】

2002年4月19日生まれ。兵庫県出身。

映画『ヒポクラテスの盲点』 ヒポクラテスの盲点【レビュー】

新型コロナウイルスワクチンの被害が起こっている現実に着目した、中立した立場の取材に基づくドキュメンタリー…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

AXA生命保険お金のセミナー20251106ファイナンシャルプランナーversion ファイナンシャルプランナーから学ぶ【明るい未来のための将来設計とお金の基本講座】女性限定ご招待!

本セミナーでは、「NISA・iDeCoなどの資産形成」「子どもの教育資金」「将来受け取る年金」「住宅購入・住宅ローン」「保険」など、将来に役立つお金の知識や情報、仕組みやルールについて、ファイナンシャルプランナーの先生が初めての方でもわかりやすく優しく教えてくれます。

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『おーい、応為』長澤まさみ
  2. AXA生命保険お金のセミナー20251106ファイナンシャルプランナーversion
  3. 映画学ゼミ:アイキャッチ1/本の上の犬と少女

REVIEW

  1. 映画『ローズ家~崖っぷちの夫婦~』オリヴィア・コールマン/ベネディクト・カンバーバッチ
  2. 映画『恋に至る病』長尾謙杜/山田杏奈
  3. 映画『愚か者の身分』北村匠海/林裕太/綾野剛
  4. 映画『次元を超える』窪塚洋介/松田龍平
  5. 映画『ヒポクラテスの盲点』

PRESENT

  1. 映画『爆弾』山田裕貴/佐藤二朗
  2. 映画『モンテ・クリスト伯』ピエール・ニネ
  3. AXA生命保険お金のセミナー20251106ファイナンシャルプランナーversion
PAGE TOP