取材&インタビュー

『あなたの番です 劇場版』福原充則さんインタビュー

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映画『あなたの番です 劇場版』福原充則さんインタビュー

大ヒットドラマ『あなたの番です』と、この度映画化された『あなたの番です 劇場版』の脚本を担当された福原充則さんにインタビューをさせていただきました。視聴者や観客が「犯人は誰?」「あそこに伏線があった?」と盛り上がる作品ということで、以前から脚本家の方に聞いてみたかった質問もぶつけてみました。

<PROFILE>
福原充則(ふくはら みつのり):脚本家
2002年に“ピチチ5(クインテット)”を旗揚げし、主宰と脚本、演出を務める他、”ニッポンの河川”や”ベッド&メイキングス”など複数のユニットを立ち上げ、幅広く活動している。「あたらしいエクスプロージョン」では第62回岸田國士戯曲賞を受賞。また、テレビドラマではCBC『占い師 天尽』、NTV『視覚探偵 日暮旅人』、BSジャパン『極道めし』、NTV24時間テレビドラマスペシャル『ヒーローを作った男 石ノ森章太郎物語』、などで脚本を執筆。映画は『琉神マブヤー THE MOVIE 七つのマブイ』、『血まみれスケバンチェーンソー』シリーズなど。2015年には、『愛を語れば変態ですか』で映画監督デビュー。『あなたの番です』シリーズでは、ドラマ、劇場版を通して全ての脚本を手掛けた。脚本を担当する最新作の連続ドラマ『逃亡医F』は2022年1月15日(土)より日テレ系にて放送が開始される。


作り手が決めたことに乗っかるだけじゃ楽しくない

映画『あなたの番です 劇場版』原田知世/田中圭/西野七瀬/横浜流星

マイソン:
ドラマが大ヒットして話題騒然となった当時を振り返り、印象に残っている周囲の反応、ファンの反応はありましたか?

福原充則さん:
役者さん達は半年間撮影していたので、他の仕事場に行った際「犯人誰?」と聞かれたり、町中で役名で声をかけられるといったことはあったみたいです。僕はとにかくパソコンの前でひたすら脚本を書いていて外にも出なかったし、皆さんの反応を知るのが怖くて気にしないようにしていたので何も変わらずです(笑)。

マイソン:
そうだったんですね(笑)。劇場版について、既存ファンに向けてというのはもちろんありつつ新しい観客を取り込むことも想定されていると思いますが、劇場版から初めて観る観客が喜びそうなポイントはありますか?

映画『あなたの番です 劇場版』原田知世/田中圭

福原充則さん:
〝わからない〟ということを楽しんで欲しいですね。「これって何?」「隣の席の人、笑ってるけどどうして?」というところが出てくると思うんですけど、ドラマを観てから映画を観るのも、映画を観た後にドラマを観るのも、順番が違うだけで両方観てもらえれば変わらないかなと。ドラマだって結局1話ですべてがわかるわけではなくて、少しずつわかっていくので。映画は2時間20分で終わるんですけど、映画から観る方は〝それぞれのキャラクターの、20話ぶんの膨大なスピンオフがある〟と思うとすごくドラマも楽しめると思うんです。映画の中で気に入ったキャラクターがいたら、その人はドラマでは20話かけて別の人生を生きていて、Hulu(扉の向こう)も合わせると30話ぶんくらいのスピンオフがあるので、かなり深入り出来ると思います。ただ、劇場版は周囲の方の反応を楽しむというのも含めて、映画館で観てもらいたいですね。

マイソン:
ドラマと劇場版で、脚本の書きやすさって変わりますか?

福原充則さん:
群像劇ではあるのでドラマのほうがそれぞれに脱線しやすいし、サブストーリーは作りやすいです。ドラマだと〝犯人は誰か?〟というのと関係なく、生瀬勝久さんが演じる田宮淳一郎が劇団を旗揚げして公演して…というところまで広げてるので、そういうことはやりやすいですね。

マイソン:
遊びやすいというか(笑)。

福原充則さん:
そうですね。ドラマは部屋でテレビで誰かとしゃべりながら観たり家事をしながら観たりするけど、劇場版は映画館で集中して観られる環境じゃないですか。だから映画は敢えてちょっとわかりづらいというか、余白を残したまま書けるなと思いました。

映画『あなたの番です 劇場版』

マイソン:
なるほど。あと伏線があるストーリーとか考察するのがおもしろいストーリーって、書いてと頼まれても書き手の得意不得意がすごく出るジャンルなのかなと思ったのですが。

福原充則さん:
僕は得意ではないですよ。ただ、こんな言い方をしていいのかわからないですけど(笑)、伏線の回収とかって、作家なら誰でもできると思いますよ。したいか、したくないか好みがあるだけで。…で、僕は「伏線なんて回収したらダサい」「なんで、回収してるの?」「どうして、まるく収めてるの?」と言われる環境で育ってきたんですよね…。

マイソン:
そうなんですね(笑)!でも回収しようと思えば、振り返ってあの部分はここに繋げるというやり方もできる?

福原充則さん:
結末を決めてから、遡って「伏線の回収、すごい!」と言われるための前振りを、足していくだけですからね。もちろん、それを面白く書けるかどうかは別の問題ですよ。作家なら誰でも出来ますと言いましたが、僕は苦手です!

マイソン:
ハハハハ(笑)!まあでも観客が勝手に考察を膨らませたり、伏線を回収してくれるってこともありますよね?

映画『あなたの番です 劇場版』田中圭/横浜流星

福原充則さん:
あるんじゃないですかね。でもそれって大事なことですよね。僕がお客さんの立場だったら、作り手が決めたことに乗っかるだけじゃ楽しくないんですよね。だからお客さんの想像の中で完結してほしいと思っています。

マイソン:
これは実際物語を書いている方に前から聞きたかったことだったので、生のお声が聞けて嬉しいです。あと、ドラマも映画も秋元康さんが企画・原案とのことですが、福原さんの視点で秋元康さんらしさが出ていると思うポイントってどんなところですか?

福原充則さん:
かなり具体的なところまでアイデアをいただいてます。とにかく観る方を楽しませようということをずっと考えてらっしゃる方ですね。テレビ番組が家族の間で、友達の間で話題にのぼるっていうのが昔からあると思うんですが、そういうことを大事にしているのかなって思いました。作品をコミュニケーションツールにしようとしている、っていうところがすごく興味深かったです。そういう意味では『あなたの番です』はすごくうまくいったんじゃないかなと思います。作品を観ている時間だけでなく観終わった後の時間にあれこれ話して楽しみ尽くせるっていう。

マイソン:
お話をお聞きしていると、制作の現場や会議を見るだけでもおもしろそうですね(笑)。では話題が変わりますが、福原さんの中で、書くのが好きなストーリー、観るのが好きなストーリーって違いはありますか?

福原充則さん:
う〜ん、同じかもしれないですね。

マイソン:
こういうストーリーが好きって思ったきっかけとかってありますか?

映画『あなたの番です 劇場版』竹中直人/生瀬勝久

福原充則さん:
1つはすごくくだらないことに労力を使っているような、技術とか制作費を何に使おうかって時に、すごくばかばかしいことに使っている作品が好きです。お金をかけてすごく壮大な作品を作るというよりは、「このコメディ映画ってそんなにお金がかかってるの?」みたいなのに感動しますね、笑うだけじゃなくて。ホラー映画もそうで、僕は幽霊、心霊系はすごく苦手なんですけどスプラッターものは好きで、1990年代くらいまでのCGを使っていないような作品って、「よくこんなホンモノみたいに作ったな」と感動しちゃうんですよね。「これって、どうやって腹を突き破ってエイリアンが出てきたんだろう?」とか。ゾンビ映画とかもそういう部分に感動しますね。あとは作り手個人の顔が見えるものが好きです。そういうのが合わさった作品でいうと『悪魔のいけにえ』がすごく好きなんですけど、ホラーとしてもおもしろいですし、映っているものよりも撮っている人が怖そうでおもしろいというか(笑)。フィルムがすごく荒くて、さらに僕の世代だと、レンタルされすぎてすり切れたVHSで観ているっていうのもあると思うんですけど、その映像をカメラの画角の外にいる監督やスタッフさんが撮っているわけじゃないですか。それを想像すると、どういうつもりでこれを撮ってるんだろうとか、そこに人間性が垣間見えるとおもしろいと思っちゃいますね。だから、映画も演劇も作ってる人が何を考えているのかがわかれば、別につまらなくてもいいというか。

マイソン:
確かに何考えて撮ってるんだろうって想像させる映画もおもしろいですよね。では最後にこれまでにいち観客として大きな影響を受けた映画や、俳優、監督がいらっしゃったら教えてください。

福原充則さん:
もう10年以上『ブルース・ブラザース』って答えてるんですけど、他にも作品をあげると…、アレックス・コックスの『レポマン』ですかね。『レポマン』は相当影響を受けた気がします。

マイソン:
特にどんなところに影響を受けたんですか?

福原充則さん:
『レポマン』って子どもの頃に初めて観たB級映画なんです。主演のエミリオ・エステベスも超カッコ良かったですし、表現的にもパンクで、音楽として聴いていたパンクを、音楽じゃないジャンルでも表現できるんだなと思いました。当時子どもだったので、そこから2年くらい経てば、パンクがそもそもファッション的なルーツからきてるとか、〝生き方としてのパンク〟という考え方があることに気付いていくんですけど、当時の僕にとってはただの音楽のジャンルだったのでそれが映像としてこういう見せ方があるんだなっていうのと、B級って価値観ですかね、別にA級の映画より劣っているわけじゃなくて、優先するものの順位が違うだけなんだっていう。じゃあお前はなにを優先させるんだ?って突きつけられて、田舎の中学生だった僕は衝撃を受けたわけです(笑)。

映画『あなたの番です 劇場版』福原充則さんインタビュー

マイソン:
その時からこういうお仕事をしたいと思っていたんですか?

福原充則さん:
ずっとそうですね。映画監督になりたかったので。その前は絵描きになりたかったんです。小学校の文集では、ゴッホかゴーギャンになりたいって書きました(笑)。保育園の文集では、猪木か馬場(ジャイアント馬場)になりたいって書いたのも覚えてて、プロレスは全然見ていなかったのに強いってだけで。

マイソン:
ハハハハ(笑)。でも今こうして映像の世界に辿りついてますよね。

福原充則さん:
細々とやってます。

マイソン:
私も『レポマン』観てみます。本日はありがとうございました。

2021年11月17日取材 PHOTO&TEXT by Myson

映画『あなたの番です 劇場版』原田知世/田中圭/西野七瀬/横浜流星/浅香航大 奈緒/山田真歩/三倉佳奈/大友花恋/金澤美穂/坪倉由幸(我が家)/中尾暢樹/小池亮介/井阪郁巳/荒木飛羽/前原滉/大内田悠平/バルビ―/袴田吉彦/片桐仁/真飛聖/和田聰宏/野間口徹/皆川猿時/門脇麦/酒向芳/田中哲司/徳井優/田中要次/長野里美/阪田マサノブ/大方斐紗子/峯村リエ/竹中直人/木村多江/生瀬勝久

『あなたの番です 劇場版』
2021年12月10日より全国公開
企画・原案:秋元康
脚本:福原充則
監督:佐久間紀佳
出演:原田知世 田中圭
西野七瀬 横浜流星
浅香航大 奈緒 山田真歩 三倉佳奈 大友花恋 金澤美穂 坪倉由幸(我が家)
中尾暢樹 小池亮介 井阪郁巳 荒木飛羽 前原滉 大内田悠平 バルビ―
袴田吉彦 片桐仁 真飛聖 /和田聰宏 野間口徹 皆川猿時 / 門脇麦 酒向芳            
田中哲司 徳井優 田中要次 長野里美 阪田マサノブ 大方斐紗子 峯村リエ
竹中直人 / 木村多江 生瀬勝久
配給:東宝

菜奈(原田知世)と翔太(田中圭)は“キウンクエ蔵前”に引っ越してから2年後に晴れて結婚。2人は住民会を通じて仲良くなったマンションの住人達を船上のウェディングパーティーに招待するが、クルーズ船内で殺人事件が起こってしまう。

公式サイト  REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定

©2021『あなたの番です 劇場版』製作委員会

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