取材&インタビュー

『思い、思われ、ふり、ふられ』原作者:咲坂伊緒さんインタビュー

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『思い、思われ、ふり、ふられ』実写&アニメーションポスター

人気コミック「思い、思われ、ふり、ふられ」が、実写版、アニメ版となって劇場公開!今回は本作の原作者である咲坂伊緒さんにインタビューをさせて頂きました。若者を主人公にした数々の人気作を生み出した咲坂さんは普段どんな視点で社会を見ていらっしゃるのかなど、いろいろと質問をぶつけてみました。

<PROFILE>
咲坂伊緒(さきさか いお):原作者
東京都出身。1999年に「サクラ、チル」でデビュー。「ストロボ・エッジ」や「アオハライド」で注目を集める。「思い、思われ、ふり、ふられ」は、第63回小学館漫画賞少女向け部門を受賞し、実写とアニメーションそれぞれで映画化。

映画『思い、思われ、ふり、ふられ』原作者:咲坂伊緒さんインタビュー

あの世界の色の変わり方って、本当に10代の時だけだった気がします

映画『思い、思われ、ふり、ふられ』浜辺美波/北村匠海/福本莉子/赤楚衛二

マイソン:
普段、作品のインスピレーションはどんなことから得られているのでしょうか?

咲坂伊緒さん:
その時の世の中の雰囲気とか、特に私が描いているのは中高生がメインの物語なので、その時こういうことで行き詰まってそうだなとか、辛そうだなっていうもの、そこを描いたら皆が楽になるのかなっていうのから発想したりしています。

マイソン:
例えばカフェとかで中高生がいると、目が行くところはありますか?

咲坂伊緒さん:
やっぱり制服の着こなしとかを見ちゃいますね(笑)。会話を聞くチャンスが最近にはないので、それはわからないのですが、仕草とかは見ていますね。女の子の友達といる時と、彼氏と2人で歩いている時との、同じ子ではないのでどういう違いがあるのかわかりませんが、出している空気感の違いを感じますよね(笑)。

マイソン:
確かに空気感は違いそうですね(笑)。劇中で、ふられるのがわかっていても告白するべきか、ちゃんとふられたほうが前に進めるのかっていう話題も出てきて、自分ならどうするだろうと考えながら観ました。こういう問いかけ要素のある部分は、咲坂さんご自身の答えが最初からあって描いているのか、もしくは逆に一緒に考えながら描いているのか、いかがでしょうか?

咲坂伊緒さん:
答えがあるのかっていうとキャラによっても違うので、この子はこの選択をしたっていう1つの事実みたいなものですね。でも物語としての大事な部分っていうのは、押さえ込まれた状況から、それでも抜け出したい、1歩前に進みたいというバネみたいな力の部分が動いた時です。そこが1番読んでいる人の心もスッとする部分なので、それをやらせるためには無理かも知れないことを構造上やらせがちではあります。

映画『思い、思われ、ふり、ふられ』北村匠海/福本莉子

マイソン:
確かに「どうなるどうなる?」っていうところが醍醐味ですものね。では、高校生の恋愛と大人の恋愛の決定的な違いはどういうところだと思いますか?

咲坂伊緒さん:
頭の中で恋愛が占める割合が決定的に違うと思います。大人ってそんなに四六時中考えないですけど、中高生の頃って、ふとした時に「あれ、あの人は今何やってるんだろう?」とか思ったりしますよね。

マイソン:
ティーンの恋愛でここが好きみたいなところはありますか?

咲坂伊緒さん:
例えば好きな人が同じ学校だったら、廊下を歩いているのを見かけた時のあの世界の色の変わり方って、本当に10代の時だけだった気がしますね。ちょっとしたことで傷ついたりして、男の子が違う女の子と話しているだけで「2人は付き合っているのかな?」とか思ったり、聞けば良いじゃんって思うんですけどね(笑)。ああいう感じは本当に愛しいですよね。友達のことを思い出しても、自分のことを思い出しても、あんな感じにはもうなれないと思うと本当に大事だなって思います。

マイソン:
確かにそうですよね。本作には高校生の青春や恋愛のキュンキュンがありつつ、家族にまつわるお話でギュンとなるところもあって、大人目線で観ても共感できる部分がありました。作者としては、主人公達と同じ目線、大人目線、俯瞰した目線など、どんな目線で描かれたのでしょうか?

映画『思い、思われ、ふり、ふられ』浜辺美波/福本莉子

咲坂伊緒さん:
私は主人公と同じ目線で描いたことはないですね。読む時もそうなのですが、主人公になりきるっていうのはよくわからなくて、それは自分で描いていてもそれが普通だと思っていたのですが、タイプがあるっていうのを後から知りました。だから本当に俯瞰で見ている気がします。その人になりきってしまったら、周りが見えなくなりそうだから。時には寄り添わないといけない時もありますが、基本的には俯瞰で捉えるようにしています。

マイソン:
今回『アオハライド』に続き、三木孝浩監督による映画化となりましたが、三木監督の演出で好きな部分はどんなところでしょうか?

咲坂伊緒さん:
元々色味が好きでした。ちょっと落ち着いた、はしゃぎ過ぎてない感じが良いんですよね、映像的に。ちゃんとカッコ良い作品にするぞっていうのが、1本1本に見えるのは良いですよね。物の配置とかも私は好みですね。

マイソン:
映画化されると決まった時の心境はどうでしたか?

咲坂伊緒さん:
もし次も映画化があったら、三木監督が良いと思っていたので、三木監督にやってもらえるっていうのがわかった時は、めちゃくちゃ嬉しかったです。以前「もし次があったら、また三木監督に撮ってもらうのが夢です」とお伝えしていたので、「本当に現実になった!言っておいて良かった」と思いました。その反面、2人の女の子が対等に主人公というのもあったので、脚本にする段階ですごく難しいだろうなと思ったんです。3幕構成にするにもどうやったらできるの?って。しかも女の子2人共主人公だけど、そこにくっついてくる男の子も必要だから四者四様なわけですよね。それをこの幕の構成にどうやったら分けられるんだろう、無理じゃないかなって私は思ったんです(笑)。でも、それは脚本家さんにお任せして。

映画『思い、思われ、ふり、ふられ』浜辺美波/北村匠海/福本莉子/赤楚衛二

マイソン:
実はそんな心境でもあったんですね(笑)。出来上がった作品を観てどうでしたか?

咲坂伊緒さん:
上手いこと考えてきたなって思いました。本当に何というか、個々なんですけど繋がっているから上手く回っているなと感じました。

コミック編集者:
春夏秋冬を上手く使っているなっていうのは思いましたね。それぞれの季節ごとにメインの心情、人物が変わっていく構成は、本当に天才だと思いました。

咲坂伊緒さん:
あの構成は素晴らしいですよね。

マイソン:
少しお話が変わりますが、すごく時代の変化が早くて、若者達の姿や背景も変わってくると思うんですが、時代ごとで若者のイメージに変化はありますか?

咲坂伊緒さん:
やっぱりその時代ごとに今の若者はこういう傾向にありますって言われたら、「お〜」って思いがちなんですけど、どうなんでしょうね。多少はあるんだろうけど、「そんなに違います?」って思います。テレビで言っていることは、今の時代に言っているからそう見えるようになっているだけで、「皆元々それを持っていませんか?」ということも多いので、テレビの言葉によってただあぶり出されてしまっただけみたいな。私もそうなんだと思わされていることもあるのかなと思うんですけど、どう思いますか?

映画『思い、思われ、ふり、ふられ』浜辺美波/北村匠海

マイソン:
そうですね、例えば伝達手段で使っているのがポケベル、ガラケー、スマホかっていうくらいで、時代が変わっても、共感したりする日常の出来事は同じなのかなって思います。

咲坂伊緒さん:
それこそ恋愛に関しては、本当にそう思いますよね。読者の方からお手紙をもらって、「こんな恋をしています」って書いてあっても、全く同じなんですよね。告白の方法が変わっていたりはするんですけど、感情面では何1つ変わっていないなというのがあります。

マイソン:
では最後の質問で、原作者さんだからこそ言える本作の通な観方があれば教えてください。

咲坂伊緒さん:
そうですね、いかに両方(実写とアニメーション)の映画が無駄なく作られているのかということを、原作ではこんなに長いページを使ったのに、こうやって映画としてまとめられるんだっていう驚きを感じて欲しいですね(笑)。

コミック編集者:
アニメはアニメならではで、実写は実写で生身の役者さんが演じているならではの表現が、両方共やる意味が本当にあったというのがよくわかると思います。人間関係や自分ではどうしようもないことに悩んでいるという本作のエッセンスみたいなものは、どちらの映画にも共通してあって、その表現方法がアニメーションは、こういう動きでこういう感情の動きを表現するんだっていうのがあるし、実写は役者さんが1回噛み砕いて演じていて、実写は実写、アニメはアニメならではの表現を使って本作の原作にある大事なものを表現してくださっています。だから全部観るとより楽しめるというのを編集者としては思いました。

咲坂伊緒さん:
そうですね。全部観てもらうと同じじゃないけど、絶対にがっかりさせないと思います。それは漫画を描いていて、動かない画だからできないことをアニメーションが叶えてくれているし、この人達がリアルにいたらどんな感じなんだろうというのを実写が叶えてくださっているので、それぞれに良いところがギューギューに詰まっていると思います。だから全部観て欲しいです。

マイソン:
ありがとうございました!

2020年7月3日取材 TEXT by Myson

映画『思い、思われ、ふり、ふられ』浜辺美波/北村匠海/福本莉子/赤楚衛二

『思い、思われ、ふり、ふられ』
8月14日より全国公開
監督・脚本:三木孝浩
出演:浜辺美波/北村匠海/福本莉子/赤楚衛二/上村海成/三船海斗/古川雄輝/戸田菜穂
配給:東宝

朱里、由奈、理央、和臣は、同じマンションに住み同じ学校に通う高校1年生。このタイプの全く異なる4人の運命が複雑に絡み合い、恋をしたり、将来のことや家族のことに悩みを抱えたり、問題にぶつかりながら、それぞれに成長していく。

公式サイト 映画批評&デート向き映画判定

アニメーション映画『思い、思われ、ふり、ふられ』

アニメーション映画『思い、思われ、ふり、ふられ』
9月18日より全国公開
配給:東宝

公式サイト

© 2020「思い、思われ、ふり、ふられ」製作委員会 © 咲坂伊緒/集英社

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

Netflix映画『ジェイ・ケリー』ジョージ・クルーニー/アダム・サンドラー ジェイ・ケリー【レビュー】

ジョージ・クルーニー、アダム・サンドラー、ローラ・ダーン、ビリー・クラダップ、ライリー・キーオ、ジム・ブロードベント、パトリック・ウィルソン、グレタ・ガーウィグ、エミリー・モーティマー、アルバ・ロルバケル、アイラ・フィッシャーなど、これでもかといわんばかりの豪華キャストが…

映画『ロストランズ 闇を狩る者』ミラ・ジョヴォヴィッチ ロストランズ 闇を狩る者【レビュー】

“バイオハザード”シリーズでお馴染みの2人、ミラ・ジョヴォヴィッチとポール・W・S・アンダーソン夫妻が再びタッグを組み、“ゲーム・オブ・スローンズ”の原作者、ジョージ・R・R・マーティンの短編小説を7年の歳月をかけて映画化…

映画『ウィキッド ふたりの魔女』シンシア・エリヴォ/アリアナ・グランデ トーキョー女子映画部が選ぶ 2025年ベスト10&イイ俳優MVP

2025年も毎年恒例の企画として、トーキョー女子映画部の編集部マイソンとシャミが、個人的なベスト10と、イイ俳優MVPを選んでご紹介します。

人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集 人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集!

ネットの普及によりオンラインで大抵のことができ、AIが人間の代役を担う社会になったからこそ、逆に人間らしさ、人間として生きる醍醐味とは何かを映画学の観点から一緒に探ってみませんか?

映画『スワイプ:マッチングの法則』リリー・ジェームズ スワイプ:マッチングの法則【レビュー】

リリー・ジェームズが主演とプロデューサーを兼任する本作は…

映画『サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行』アルテュス/アルノー・トゥパンス/ルドヴィク・ブール サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行【レビュー】

パラリンピックやハンディキャップ・インターナショナルのアンバサダーを務めるアルテュスが…

映画『消滅世界』蒔田彩珠/眞島秀和 眞島秀和【ギャラリー/出演作一覧】

1976年11月13日生まれ、山形県出身。

映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン Fox Hunt フォックス・ハント【レビュー】

“狐狩り隊(=フォックス・ハント)”と呼ばれる経済犯罪捜査のエリートチームが、国を跨いだ巨額の金融詐欺事件の真犯人を追い詰めるスリリングな攻防戦が描かれた本作は…

Netflix映画『フランケンシュタイン』オスカー・アイザック フランケンシュタイン【レビュー】

メアリー・シェリー著「フランケンシュタイン」はこれまで何度も映像化されてきました。そして、遂にギレルモ・デル・トロ監督が映画化したということで…

映画『大命中!MEは何しにアマゾンへ?』リュ・スンリョン/チン・ソンギュ/イゴール・ペドロゾ/ルアン・ブルム/JB・オリベイラ 大命中!MEは何しにアマゾンへ?【レビュー】

『大命中!MEは何しにアマゾンへ?』という邦題がいい感じで「どういうこと?」と好奇心をそそります(笑)…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『ウィキッド ふたりの魔女』シンシア・エリヴォ/アリアナ・グランデ トーキョー女子映画部が選ぶ 2025年ベスト10&イイ俳優MVP

2025年も毎年恒例の企画として、トーキョー女子映画部の編集部マイソンとシャミが、個人的なベスト10と、イイ俳優MVPを選んでご紹介します。

人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集 人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集!

ネットの普及によりオンラインで大抵のことができ、AIが人間の代役を担う社会になったからこそ、逆に人間らしさ、人間として生きる醍醐味とは何かを映画学の観点から一緒に探ってみませんか?

映画『チャップリン』チャーリー・チャップリン『キッド』の一場面 映画好きが選んだチャーリー・チャップリン人気作品ランキング

俳優および監督など作り手として、『キッド』『街の灯』『独裁者』『ライムライト』などの名作の数々を生み出したチャーリー・チャップリン(チャールズ・チャップリン)。今回は、チャーリー・チャップリン監督作(短編映画を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

学び・メンタルヘルス

  1. 人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集
  2. 映画『殺し屋のプロット』マイケル・キートン
  3. 映画学ゼミ2025年12月募集用

REVIEW

  1. Netflix映画『ジェイ・ケリー』ジョージ・クルーニー/アダム・サンドラー
  2. 映画『ロストランズ 闇を狩る者』ミラ・ジョヴォヴィッチ
  3. 映画『スワイプ:マッチングの法則』リリー・ジェームズ
  4. 映画『サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行』アルテュス/アルノー・トゥパンス/ルドヴィク・ブール
  5. 映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン

PRESENT

  1. 映画『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』チャージングパッド
  2. 映画『ただ、やるべきことを』チャン・ソンボム/ソ・ソッキュ
  3. 映画『グッドワン』リリー・コリアス
PAGE TOP