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『許された子どもたち』内藤瑛亮監督インタビュー

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映画『許された子どもたち』内藤瑛亮監督インタビュー

初の長編映画『先生を流産させる会』が物議を醸し、その後も『パズル』『ライチ☆光クラブ』『ミスミソウ』など、犯罪に手を染めてしまう少年少女をテーマとした作品を手掛け、このたび8年ぶりに自主映画『許された子どもたち』を制作した内藤瑛亮監督にリモート取材をさせて頂きました。本作を自主制作した経緯や、デリケートなテーマを扱う上で気を付けていることなどをお聞きしました。

<PROFILE>
内藤瑛亮(ないとう えいすけ)
1982年生まれ。愛知県出身。映画美学校フィクションコース11期修了。特別支援学校で教員として勤務しながら、自主映画の制作を始める。短篇『牛乳王子』が、学生残酷映画祭、スラムダンス映画祭をはじめ国内外の映画祭に招待される。初の長編映画『先生を流産させる会』が、カナザワ映画祭で話題となり、2012年に全国劇場公開され、論争を巻き起こす。その後、教員を退職し、以降、『パズル』『ライチ☆光クラブ』『ミスミソウ』など、罪を犯した少年少女をテーマにした作品を多く手掛ける。2020年、約8年ぶりとなる自主映画『許された子どもたち』を制作。

“被害者を生み出さないために、加害者を生み出さなければ良い”、そのためには加害者を理解する必要がある

映画『許された子どもたち』上村侑/黒岩よし/名倉雪乃

シャミ:
原作がある商業映画作品を撮った後に今回、改めて自主映画という形で本作を撮りたいと思った最大の理由はどんなところだったのでしょうか?

内藤瑛亮監督:
元々は、『先生を流産させる会』という作品が公開する前からあった企画なので、8年前から企画していたんです。当時は、いろいろな商業映画の話が来ていたので、この作品も商業映画として作れないかと思い、いろいろな映画会社やプロデューサーに交渉していたんです。ただ、内容をエンターテインメントにして欲しいとか、出演する子ども達をアイドルとか20歳を過ぎていてもある程度ネームバリューがある人なら良いですよとか、そういう条件を出されたんです。でも、それは僕がやりたい形ではないなと思い、望む形での出資がなかなか上手くいかない状況が続いていました。そうこうしているうちに、商業映画を撮っていき、2015年に川崎の中1殺害事件が起きたんです。あの事件を知って、自分がこの作品で描こうとしているところと繋がる面があり、且つ当初は想定していなかったような現代社会の問題みたいなのも、あの事件には突出しているなと感じました。半ば諦めていたような状況だったんですけど、そこでどうしても撮りたいという思いが募り、自主制作という形になっても、自分が望んだ形で制作しようと踏み切りました。

映画『許された子どもたち』阿部匠晟

シャミ:
かなり長いスパンで考えられていた作品だったんですね。本作はいじめの被害者ではなく、加害者とその家族にフォーカスした物語となっていましたが、なぜそうしたのでしょうか?

内藤瑛亮監督:
脚本を書いていた当初は、加害者家族と被害者家族とが同じくらいの割合だったんです。でもいろいろないじめや少年事件に関する文献を読んでいると、加害者家族に関するものが非常に少なかったんです。だいたい被害者家族か、加害者自身が語るものが多くて、加害者の家族がどうなっているのか、取材に答えている方が少なくて、どういう状況に加害者家族が置かれているのか、より興味を持ちました。あとは、やはりそういった事件で、“被害者を生み出さないために、加害者を生み出さなければ良い”と思って、そのためには加害者を理解する必要があると感じました。なので、決して加害者やその家族を擁護するという意味ではなくて、むしろ悲劇を起こさないためにそちらを考える必要があるなって思います。

映画『許された子どもたち』上村侑

シャミ:
なるほど〜。主人公の絆星(きら)は、人を殺してしまった時は加害者なわけですが、その前には逆にいじめられていたという背景もあって、なぜ今回は敢えてそういう設定にされたのでしょうか?

内藤瑛亮監督:
こういった事件が起こった時、加害者側がモンスターで普通の人間じゃないっていうところがフォーカスされがちで、そうすると安心感があると思うんです。「ああいう異常な背景を持つ人間だから、ああなってしまったんだ。自分達は大丈夫だ」と。でも、そうではないと思うんです。川崎の中1殺害事件の加害者のリーダー格の子も、かつてはいじめの被害者だったんです。しかも不良のカースト制度の中ではだいぶ低い位置にいて、事件前に地元のヤンキーグループからリンチを受けたりもしていたんです。なので、彼もまた被害者的な側面があったと。社会学者の内藤朝雄さんが、いじめの被害者が加害者に転じてしまう理由として、いじめ加害が一種の癒やし作業になっていると挙げていたんです。いじめることでかつての弱い自分を壊して、強い自分を作り替えていると。それは非常に間違った癒やし作業ではあるのですが、そういうことをしてしまう心理があるってことを我々が理解する必要があるんじゃないかと思いました。それで絆星の背景を今回の設定にしました。

シャミ:
今回、主人公の絆星だけでなく、親や周りにいる大人の存在の重要性も感じたのですが、監督が本作の大人達を通して1番伝えたかったことはどんなことでしょうか?

映画『許された子どもたち』黒岩よし

内藤瑛亮監督:
こういった事件が起きた時に日本人は親、家族に責任があると責めがちだと思うんです。加害者家族の支援団体っていうのが10年くらい前から日本にできまして、そこの方のインタビューとか文献を読んでいくと、理不尽なことが非常に多いなと思いました。例えば、ある夫婦がいて、旦那さんが職場の女性を盗撮して捕まってしまった時に、奧さんが土下座を求められて、責められたんです。「あなたが性的に旦那さんを満足させてないから旦那さんがこうなったんだ」と怒られてしまったそうです。でも奧さん自身は何も罪を犯していないわけじゃないですか。日本ってどこか犯罪者の家族にも責任があるって思いがちで、そうなると加害者自身の責任の所在っていうのをうやむやにしてしまうし、家族っていう共同体に責任を求めるその社会全体がある種歪みを生んでいるんじゃないかなと思ったんです。あともう1つは、日本の場合、教育とかしつけが母親の責任だと思われがちで、それによってお母さんが追い詰められていったりすることもあると。大津のいじめ事件の時に、加害者のお母さんが「うちの子は悪くないんです」ってビラを配ったことがありまして、それをこの映画のシーンにも反映しているのですが、その行為とかビラの文面とか、ちょっと一面的で、「どうなの?」と思う部分もあるんですけど、お母さんがそうやって追い詰められている背景もあるんです。“モンスターペアレント”とか、“毒親”っていう言葉があって、その言動だけ見ると確かに理不尽な親だなと思いますが、その背景に社会的な構造の問題っていうのがあると思って描いています。

シャミ:
もし監督が絆星の親だったとしたら、彼とどう接していたと思いますか?

内藤瑛亮監督:
その質問は実は、オーディションを受けた大人の役者にも聞いたことなんですよ。皆結構困惑していましたね。僕も今ふと聞かれて、結構難しいなと思いました(笑)。本当に目の前でそうなった時に受け入れられるのかっていう不安はあると思うんですけど、受け入れていきたいなとは思います。共に贖罪の道を歩んで行こうと。この作品を作っていくなかで、実際の事件で加害者側が謝罪に行くエピソードをいくつか読んだのですが、なかなか被害者家族からは受け入れてもらえないんですよね。家まで行って、「仏壇に手を合わさせてください」って頼んでも、「それは結局自分のために謝ろうとしているんじゃないか?謝罪はポーズであって自己満足じゃないか?」って指摘されていると。でも続けていくことで、被害者側も許すわけではないんだけど、受け入れるレベルまでは行って、仏壇に手を合わすまではさせてくれたということでした。だから、すごく時間がかかると思うんです。謝罪の仕方も決してこれが正解っていうものはないので、すごい長期戦になるっていうのを覚悟して、子どもと向き合わなければいけないと思います。子どもも親も心が折れてしまうような辛い状況もあるかも知れないけど、そこは耐えていかないといけませんよね。この作品の加害者家族の場合は、耐えられなくて折れてしまうわけなんですけど、そういった時に加害者家族をバッシングするのは逆効果だと思うんです。贖罪に向かおうとしていても、そのバッシングがあっては、経済的にも精神的にも支えきれなくなってしまうので。本当は社会が支えていかなければならないと思います。

映画『許された子どもたち』門田麻衣子

シャミ:
今回出演を希望する中学生を対象に2ヶ月に渡るワークショップを開催されたそうですが、その最大の効果はどんな点だったと思いますか?

内藤瑛亮監督:
まずは彼らと信頼関係を築けたという点があります。あとは、彼らから出てきたアイデアを脚本に取り入れることができたんです。具体的には、謝罪の場面を即興で演じてもらったんです。被害者家族と加害者役で、加害者側が謝罪を求める設定で、2人1組で演技してもらって、その謝罪の仕方、受け止め方、台詞は全部子ども達に考えてもらいました。絆星が土下座をするのを無理矢理立たされたり、友達が亡くなった場所に手向けられた花束を何度放り投げられても緑夢(ぐりむ)が取りに行くっていうシーンも子ども達からのアイデアを取り入れたりしました。あとは、いじめのロールプレイで、加害者役と被害者役を決めて、役名を抽象的なものにするというのをやってもらいました。例えばアイスクリームさんとか。それで、「お前、甘いんだよ」「お前うんこみたいな形だな」とか、その役名にちなんだことを皆で罵倒するのですが、そうやっていくうちにだんだんといかにウケるフレーズを言うかっていう心理になってきて、どんどん言葉が攻撃的になっていって、最終的にめちゃくちゃ楽しい雰囲気で終わったんです。でも、終わった後に皆で振り返って、「今、人を傷付けることでめちゃくちゃ楽しんじゃったね。それは恐ろしいことだよね」と。いじめっていうのはそれくらい不条理なものであって、やる側にとっては娯楽性があって、一種のエンターテインメントになってしまう高揚感がある。その恐ろしさを皆に実感してもらって、この作品のいじめの場面とかに反映しました。

映画『許された子どもたち』阿部匠晟

シャミ:
なるほど〜。監督にとっても出演した子ども達にとってもいろいろ効果的な部分があったんですね。本作も含め監督のこれまでの作品でもデリケートなテーマを扱った作品が多くありますが、そういう作品を撮る上で、気を付けている点、大切にされていることなどあれば教えてください。

内藤瑛亮監督:
最初に撮った『先生を流産させる会』っていう作品が、実際の事件を題材にしていて、あの時にご批判の声もあったんです。それはあの事件が、実際は男子生徒が犯人だったのですが、映画では女子生徒に変更したことで、「男の罪を女になすり付けているんじゃないか」とか「男子生徒の短絡的な暴力性に無関心なのはどうなのか」、「ミソジニー(=女性嫌悪、女性蔑視)じゃないのか」などの批判を受けて、当時僕は“ミソジニー”っていう言葉も知らなくて、男の罪を女になすりつけることになるという発想もなかったのですが、そういった考えに及ばず不勉強だったことはすごく反省しました。それで、ミソジニーに関する文献などを読んで、今も勉強しているのですが、女性差別をする意識がなくても無自覚で女性を傷付けてしまうことが結構あるんだなと思いました。特に今はまだ男社会で、そういった意識とか考えが内面化してしまっているんだなと。文献の中の指摘で、「女性嫌悪をする背景には男らしさの呪縛があるのではないか」とあって、これはなるほどなと思いました。男らしくない弱い自分というのを受け入れられなくて、悩みがあっても相談できなくて、暴力的になって強い自分を過剰に作ってしまうとか。それは今作の絆星にもそういうところがあるなと思ったんです。だから批判を受けたことで自分をいろいろ改めることができて、考えを深めることができました。この作品自体は『先生を流産させる会』以前からあった企画ですけど、この8年間で悩んだことを反映できたのは、良かった面だと思います。

シャミ:
では、監督ご自身のことをお聞きしたいのですが、以前に特別支援学校の教師をされていたそうで、一見今とは全然違う職種ではあるのですが、そういった経験が映画の現場で活かされているなと感じる点はありますか?

内藤瑛亮監督:
障がいの特性によって、子ども達にかける言葉、声かけの仕方が全然違うんです。あるいは、その日の状態によっても違うし。その難しさの一方で、この声かけがこの子には適しているんだって見つけられる嬉しい瞬間もありました。それは役者を演出する時にも似ていて、役者も人によってどういう声かけをしたら良いのかっていうのが違うんですよね。単純な動きを説明するだけのほうが良い役者、テイク1がすごく良い人とか、役者の資質というものを見極めて、言葉を選んだり、スタイルを変えていかなきゃいけないなと、そこは子どもの指導の時と似ているなと思います。

映画『許された子どもたち』上村侑/名倉雪乃

シャミ:
そうなんですね。少し話題が変わりますが、監督が何か影響を受けた監督や作品などはありますか?

内藤瑛亮監督:
僕は黒沢清監督が好きです。映画を撮り始めてよく感じるのですが、日本の映画って予算的にどうしても関東近郊で撮影をすることが多いんです。そうすると画にならない風景が多くて、カメラをどう置けば良いのかとか、なかなか難しくて。でも、黒沢監督の画って常に映画的だし、一発で黒沢監督の画だってわかるんですよね。そのすごさに憧れています。あとは、監督として働き始めてからも、「黒沢監督の現場がすごく良かった」って言うキャストやスタッフにたくさん会うんですよ。映画業界は古い体質なので、憧れていた人に実際に会ったら嫌な面があったなんてこともあるにはあるんですけど(笑)、黒沢監督だけは日に日に尊敬の念が増していくというか、現場エピソードを聞いてカッコ良いなって思うことや、人としてすごいなって思うことが多いですね。

シャミ:
今後撮ってみたいテーマやジャンルの作品はありますか?

内藤瑛亮監督:
今1つ企画している作品が、今回の『許された子どもたち』の母子関係にも繋がるもので、母と息子の共依存関係からさらに1つ進んだ感じの作品ができるかなと。一見すると「毒親」と見られてしまう母親が抱えている痛みみたいなもののをより深く追求できる作品にしたいなと思っています。さらにもう1つ、さっきお話したミソジニーについて、女性側からそういった問題点を明かす作品が結構出てきていると思うんですが、自分が男である以上、男性側からそういった問題に対する問題提起をするべきだろうと思っていて、今企画しています。

映画『許された子どもたち』内藤瑛亮監督インタビュー

シャミ:
楽しみにしています!最後にこれからご覧になる方に向けて、本作をどう観て欲しいか、1番観て欲しいポイントを教えてください。

内藤瑛亮監督:
こういった恐ろしい事件を目にした時に、自分自身とか自分の家族が被害者になったことを想像することは多くあると思うんです。一方で加害者家族になる可能性はあまり考えないと思います。自分の家族がそんなことをするはずがないって思っているかも知れないけれど、それって実際に加害者家族になった人も同じはずです。今は新型コロナウィルスが蔓延していて、移されちゃうんじゃないかって不安に思うことはあると思うんですけど、同時に自分が誰かに感染させてしまうリスクもあるはずなんですよね。そちらにはなかなか考えが至らないことってがあって、それともちょっと似ているんじゃないかと思います。なぜ人は被害者になることは容易に受け入れられるのに、加害者になることは受け入れ難いのか、そういったことをこの作品を観て考えてみて欲しいと思います。

2020年5月1日取材 TEXT by Shamy

映画『許された子どもたち』上村侑

『許された子どもたち』
2020年6月1日より全国順次公開
PG-12
監督:内藤瑛亮
出演:上村侑/黒岩よし/名倉雪乃/阿部匠晟/池田朱那/大嶋康太/清水凌/住川龍珠/津田茜/西川ゆず/野呈安見/春名柊夜/日野友和/美輪ひまり/茂木拓也/矢口凜華/山崎汐南/地曵豪/門田麻衣子/三原哲郎/相馬絵美
配給:SPACE SHOWER FILMS

中学1年生で不良少年グループのリーダー市川絆星(いちかわ きら)は、ある同級生を日常的にいじめていた。次第にいじめはエスカレートしていき、ある日、絆星は彼を殺してしまう。一度は警察に犯行を自供したが、息子の無罪を信じる母親の説得により否認に転じる。そして少年審判では、無罪に相当する“不処分”が決定する。絆星は自由を得るが、世間からは激しくバッシングされ…。

公式サイト 映画批評&デート向き映画判定

©2020「許された子どもたち」製作委員会

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