REVIEW

ボーはおそれている【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ボーはおそれている』ホアキン・フェニックス

REVIEW

主人公ボーと母との電話の不可解な会話、災難続きのカオスな状況に、前半は何が起きているのかわからない怖さに襲われます。だから、ボーは一見危険だらけの社会に生きているのかと思いきや、さらに不気味な状況に陥り、周囲のキャラクターの意味深な言動に、異なる怖さも出てきます。これは一体何をいわんとする物語なのか、ずっと考えながら観ていて、一見混沌としたストーリーにじわじわとテーマが見えてきます。とはいえ、かなり脳みそを掻き回されるので(笑)、一度で咀嚼するのが難しく、何度も観るうちに発見がありそうなストーリーです。ただただ恐怖を味わって楽しむのはもちろん、勝手にいろいろ想像しながら観るのもおもしろい作品です。

ここからはあくまで私個人の解釈でネタバレを含みますので、鑑賞後にお読みください。

映画『ボーはおそれている』

『ボーはおそれている』というタイトル(原題も同じ意味)で、まさにイメージそのままのシーンが展開されるので、始めはボー自身の話として頭に入ってきます。ただ、ある出来事を経て、さらに異様な状況にボーが身を置かれると、ボーがただおそれているだけの話ではないとわかってきます。そこからさらにカオスな世界に誘われ(笑)、ボーの深層心理に潜りこんでいきます。そして、男性性や父性といったテーマが見えてきたと思ったら、それでは終わらず、さらにクライマックスで本題が見えてきます。
最後まで観ると、母性が最大のテーマなのだと私は感じました。強烈なストーリー展開から、母親の狂気的な愛情を描いているように見えて、裏を返すと子どもが生まれた瞬間から大人になってもずっと心が子どもに縛られ、すべてを捧げるにもかかわらず報われない母の悲痛な叫びのようにも受け取れます。冒頭のシーンがかなり重要で、子どもが生まれた瞬間に恐怖を体験した母親は正気でいられず、それが子どもにも大きな影響をもたらすというストーリーに思えます。
2回目、3回目と観てみると違った印象を持つのかもしれないし、他の方と意見交換しても楽しめそうです。ぜひ、皆さんもご自身の脳みそを掻き回されながらご覧ください(笑)。

デート向き映画判定

映画『ボーはおそれている』ホアキン・フェニックス

かなりエネルギーを消耗するので、デートの途中で気分転換に観るという流れよりも、映画をメインメニューとする日のデートで観るのが良いでしょう。ただし、かなりクセのある作品なので、普段あまり映画を観ない方を誘うと、どういう反応になるかが読めません(笑)。まだお互いに腹の探りあいのような会話をしている距離感の場合には向いていないと思います。お互いに好奇心旺盛か、映画好き同士なら鑑賞後の会話が弾みそうです。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『ボーはおそれている』パティ・ルポーン

映画好きのティーンの皆さんは、だんだんクセのある作品にも興味が出てくるお年頃ですよね。高校生、大学生になると、解釈が一筋縄ではいかない作品に見応えを感じるという方もいると思います。そんな皆さんに打ってつけの作品です。アリ・アスター監督の過去作を観た方は本作にも一定のイメージを抱くと思います。ただ、本作は『へレディタリー/継承』や『ミッドサマー』とは少し違うテンションです。前述2作のホラー的な怖さが苦手だったという方にとっては、本作は逆にチャレンジしやすい作品です。

映画『ボーはおそれている』ホアキン・フェニックス

『ボーはおそれている』
2024年2月16日より全国公開
R-15+
ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

© 2023 Mommy Knows Best LLC, UAAP LLC and IPR.VC Fund II KY. All Rights Reserved.

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2024年2月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『言えない秘密』京本大我/古川琴音 アイドルを観たい!知りたい!アイドル映画特集

こちらの記事では、アイドル出演作から、アイドルが原作を書いた作品、アイドルが主人公の作品、実在のアイドルがモデルとなっている作品まで、アイドルにまつわる作品をアレコレご紹介します!

映画『ミッシング』石原さとみ ミッシング【レビュー】

𠮷田恵輔監督、石原さとみ主演の本作は、行方不明になった6歳の娘を必死で探す夫婦と、その姿を報道するテレビ局の人間を通して…

映画『猿の惑星/キングダム』フレイヤ・アーラン 猿の惑星/キングダム【レビュー】

本作の宣伝で“完全新作”と称している通り、これまでとは異なるテンションが…

映画『不死身ラヴァーズ』見上愛/佐藤寛太 映画に隠された恋愛哲学とヒント集76:恋愛における過去・現在・未来の重要性

今回は、高木ユーナによる同名コミックを原作とし、松居大悟監督が10年以上温め続けてきたという『不死身ラヴァーズ』を題材に、恋愛における過去・現在・未来の重要性について考えます。

映画『またヴィンセントは襲われる』カリム・ルクルー またヴィンセントは襲われる【レビュー】

主人公のヴィンセントは、ある日突然、会社でインターンの男性に襲いかかられ…

海外ドラマ『三体』エイザ・ゴンザレス ポッドキャスト【だからワタシ達は映画が好き】8〜「最近観たNetflix作品」

『三体』は全部観た方とぜひ共有したい、とある伏線についての話で盛り上がっています…

映画『カラーパープル』タラジ・P・ヘンソン タラジ・P・ヘンソン【プロフィールと出演作一覧】

1970年9月11日アメリカ、ワシントンD.C.生まれ。俳優、プロデューサー、監督。2001年『サウスセントラルLA』で注目を集め…

映画『胸騒ぎ』 胸騒ぎ【レビュー】

『胸騒ぎ』というタイトルなので、最初から嫌な予感にアンテナが立ってしまい…

映画『トランスフュージョン』サム・ワーシントン トランスフュージョン【レビュー】

ティーンエイジャーの息子のお父さん役を演じているサム・ワーシントン…

映画『夢の中』山﨑果倫/櫻井圭佑 夢の中【レビュー】

本作は、『蝸牛』でMOOSIC LAB 2019短編部門グランプリほか4冠を達成した都楳勝監督による最新作です。主人公のタエコ(山﨑果倫)の…

部活・イベント

  1. 【ARUARU海ドラDiner】サムライデザート(カップデザート)
  2. 【ARUARU海ドラDiner】トーキョー女子映画部 × Mixalive TOKYO × SHIDAX
  3. 【ARUARU海ドラDiner】サポーター集会:パンチボール(パーティサイズ)
  4. 【ARUARU海ドラDiner】プレオープン
  5. 「ARUARU海ドラDiner」202303トークゲスト集合

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『MIRRORLIAR FILMS Season5』横浜流星 映画好きが推すイイ俳優ランキング【国内20代編】

今回は、国内で活躍する20代(1995年から2004年生まれ)のイイ俳優の中から、昨今活躍が目覚ましい方を編集部の独断で70名選抜し、正式部員の皆さんに投票していただきました。

映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』ティモシー・シャラメ 映画好きが選んだ2023洋画ベスト

正式部員の皆さんに2023年の洋画ベストを選んでいただきました。どの作品が2023年の洋画ベストに輝いたのでしょうか?

映画『テルマ&ルイーズ 4K』スーザン・サランドン/ジーナ・デイヴィス あの名作をリメイクするとしたら、誰をキャスティングする?『テルマ&ルイーズ』

今回は『テルマ&ルイーズ』のリメイクを作るとしたら…ということで、テルマ役のジーナ・デイヴィスとルイーズ役のスーザン・サランドンをそれぞれ誰が演じるのが良いか、正式部員の皆さんに聞いてみました。

REVIEW

  1. 映画『ミッシング』石原さとみ
  2. 映画『猿の惑星/キングダム』フレイヤ・アーラン
  3. 映画『またヴィンセントは襲われる』カリム・ルクルー
  4. 映画『胸騒ぎ』
  5. 映画『トランスフュージョン』サム・ワーシントン

PRESENT

  1. 映画『FARANG/ファラン』ナシム・リエス
  2. 映画『猿の惑星/キングダム』オリジナルTシャツ
  3. 映画『九十歳。何がめでたい』草笛光子
PAGE TOP