REVIEW

アネット【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『アネット』アダム・ドライバー/マリオン・コティヤール

ダークファンタジー・ロック・オペラと称しているこの作品、一体どんな内容なのかと思ったら、文字通りダークファンタジー・ロック・オペラでありつつ、このテンションでそのテーマを描くのかと意外性が感じられます。そして冒頭から個性むき出しで、レオス・カラックス監督ってやっぱりどこか違うというワクワク感を与えてくれます。
物語の舞台はロサンゼルス。独特な世界観で人気を得ているスタンダップ・コメディアンのヘンリー(アダム・ドライバー)と、国際的に有名なオペラ歌手アン(マリオン・コティヤール)は恋に落ち、世間から大きな注目を浴びます。やがて2人は結婚し、娘を授かります。幸せの絶頂にいるように見えた一家でしたが、徐々にヘンリーとアンの関係に暗雲が立ちこめます。映画の世界観は独特でとてもドラマチックでありながらも、2人に起こる変化は世の中の多くの夫婦にとって珍しいことではありません。だからこそ、すごく親近感を持って感情移入して観ることができます。一方で、とても映画的で気になる描写をしている部分があり、そこにこそ本作で1番伝えたかったメッセージがあるように感じます。その気になる描写は最終的にすごく意味が出てくるところなので詳細は伏せておきます。
ここからは私の解釈ですが、ポスタービジュアルや予告編ではヘンリーとアンのラブストーリーの部分を前に打ち出していますが、タイトルはヘンリーでもアンでもなく『アネット』です。ここで一旦???となる方もいらっしゃるでしょう。物語の途中で誰のことなのかは明かされるわけですが、そこから先を観ていくとカップルの話からどんどんもっと深いストーリーへと入っていくのがわかります。結末で謎の描写に隠されていた意図に気付いて「だからか〜」と納得できると同時に、かなり強烈なメッセージが込められていたことにハッとさせられます。また、ある人物のセリフに対して、「ヘンリーはわかるとして、アンも?」と一瞬思ってしまいますが、よくよく考えると確かに2人ともそれぞれの立場で自分本位であることに気付かされます。ネタバレを避けて抽象的な表現に留めているので、読者の皆さんには「何のことやら?」と思われていそうですが(苦笑)、映画を観ていただければ「このことか!」とわかっていただけるはずです。
そして、レオス・カラックス監督の手腕も見事ですが、主演のアダム・ドライバーとマリオン・コティヤールが何とも素晴らしい!改めて2人の演技力の高さを実感でき、すごくリアルなシーンに引き込まれます。いろいろな意味ですごくおもしろい作品なので映画好きの皆さん必見ですよ。

デート向き映画判定
映画『アネット』アダム・ドライバー/マリオン・コティヤール

エンタテインメント性が抜群なのでそういった点ではデート向きとも言えますが、カップルにとって生々しい内容でもあるので、観た後にどんな影響が出るかは読めません(苦笑)。関係が安定しているカップルなら大丈夫かもしれませんが、内心今の関係に疑問を抱きはじめているとしたら、一緒に観るのはやめておいたほうが良さそうです。また結婚を意識しつつも、この人で良いのかと迷っている方も1人で観てじっくりいろいろなことをシミュレーションすることをオススメします。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『アネット』アダム・ドライバー/マリオン・コティヤール

大人の恋愛と結婚後を描いたストーリーなので、ヘンリーやアンの気持ちにはまだピンとこない部分があるかもしれませんが、皆さんは別のある人物の視点で観て共感できる部分があると思います。解釈力と想像力をフル稼働したほうが一層楽しめる作品なので、表面的なところだけを観ると若干キョトンとしてしまう可能性があります。そういう点も踏まえて、観終わってからいろいろと語れるように友達を誘って観るのも良いでしょう。

映画『アネット』アダム・ドライバー/マリオン・コティヤール

『アネット』
2022年4月1日より全国公開
PG-12
ユーロスペース
公式サイト

© 2020 CG Cinéma International / Théo Films / Tribus P Films International / ARTE France Cinéma / UGC Images / DETAiLFILM / Eurospace / Scope Pictures / Wrong men / Rtbf (Télévisions belge) / Piano

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『流麻溝十五号』余佩真(ユー・ペイチェン) 流麻溝十五号【レビュー】

本作の原作は、曹欽榮(ツァオ・シンロン)と鄭南榕基金会による「流麻溝十五號:綠島女生分隊及其他」です…

映画『ツイスターズ』オリジナルハンディファン 『ツイスターズ』オリジナルハンディファン 2名様プレゼント

映画『ツイスターズ』オリジナルハンディファン 2名様プレゼント

映画『このろくでもない世界で』ホン・サビン/ソン・ジュンギ このろくでもない世界で【レビュー】

冒頭から緊張感のあるシーンで始まる本作は、ろくでもない世界でもがく18歳の少年を主人公に…

映画『OUT』公開初日舞台挨拶、杉本哲太 杉本哲太【プロフィールと出演作一覧】

1965年7月21日生まれ。神奈川県出身。『白蛇抄』(1983)で映画デビューし…

映画『あのコはだぁれ?』清水崇監督インタビュー 『あのコはだぁれ?』清水崇監督インタビュー

昨年話題となった『ミンナのウタ』のDNAを引き継ぐ最新作『あのコはだぁれ?』。今回は本作を手掛けた…

映画『デッドプール&ウルヴァリン』ライアン・レイノルズ/ヒュー・ジャックマン デッドプール&ウルヴァリン【レビュー】

たくさん言いたいことはありながら、ネタバレになるので言えないことが多過ぎ…

映画『時々、私は考える』デイジー・リドリー 時々、私は考える【レビュー】

主人公のフラン(デイジー・リドリー)はとても静かだけれど、ここぞという時には…

映画『お隣さんはヒトラー?』デヴィッド・ヘイマン/ウド・キアー お隣さんはヒトラー?【レビュー】

タイトルは『お隣さんはヒトラー?』で、物語の舞台は1960年のコロンビア…。「むむむ?アドルフ・ヒトラーって…

映画『ロイヤルホテル』ジュリア・ガーナー/ジェシカ・ヘンウィック ロイヤルホテル【レビュー】

『アシスタント』のキティ・グリーン監督と、主演を務めたジュリア・ガーナーが再びタッグを組んだ本作は…

映画『チャレンジャーズ』ゼンデイヤ 映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外10代、20代編】個性部門

映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外10代、20代編】番外編として、今回は<個性部門>のランキングを発表します。特に個性が光る俳優としてどの俳優に投票が集まったのでしょうか?

部活・イベント

  1. 【ARUARU海ドラDiner】サムライデザート(カップデザート)
  2. 【ARUARU海ドラDiner】トーキョー女子映画部 × Mixalive TOKYO × SHIDAX
  3. 【ARUARU海ドラDiner】サポーター集会:パンチボール(パーティサイズ)
  4. 【ARUARU海ドラDiner】プレオープン
  5. 「ARUARU海ドラDiner」202303トークゲスト集合

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『チャレンジャーズ』ゼンデイヤ 映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外10代、20代編】個性部門

映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外10代、20代編】番外編として、今回は<個性部門>のランキングを発表します。特に個性が光る俳優としてどの俳優に投票が集まったのでしょうか?

Netflix映画『悪魔はいつもそこに』トム・ホランド 映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外10代、20代編】演技力部門

映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外10代、20代編】番外編として、今回は<演技力部門>のランキングを発表します。演技派揃いのなか、どのような結果になったのでしょうか。

海外ドラマ『THE GREAT 〜エカチェリーナの時々真実の物語〜』エル・ファニング 映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外10代、20代編】雰囲気部門

映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外10代、20代編】番外編として、今回は<雰囲気部門>のランキングを発表します。雰囲気の良さが特に評価されているのは、どの俳優でしょうか。

REVIEW

  1. 映画『流麻溝十五号』余佩真(ユー・ペイチェン)
  2. 映画『このろくでもない世界で』ホン・サビン/ソン・ジュンギ
  3. 映画『デッドプール&ウルヴァリン』ライアン・レイノルズ/ヒュー・ジャックマン
  4. 映画『時々、私は考える』デイジー・リドリー
  5. 映画『お隣さんはヒトラー?』デヴィッド・ヘイマン/ウド・キアー

PRESENT

  1. 映画『ツイスターズ』オリジナルハンディファン
  2. 映画『サユリ』
  3. 映画『ボストン1947』ハ・ジョンウ/イム・シワン
PAGE TOP