直木賞を受賞した経歴があるのに、なぜか小さな街でドライバーとして働いている津田伸一(藤原竜也)が主人公のこの物語は、最初から注意深く観てください。現実と物語の世界の境界線が曖昧なところがまさに魅力で、小説の中の出来事のはずが現実にすごくリンクしていて、どんなカラクリになっているのか考えながら観るところにおもしろさがあります。
また、一見結びつきそうにない人達があるものを通して繋がっていき、別の顔が見えるところにゾッとさせるものがあり、観ているこちらも何に巻き込まれてしまったのかわからずにゾクゾクするスリルを味わえます。そして、実際の小説家の方々の中にも現実世界からヒントを得ていることはあると思いますが、内容によっては結構ヒヤヒヤするストーリーもあるのではないかと想像が膨らみます。皆さんも本作で小説家の日常を疑似体験してみてください。
ちらっとエロチックなシーンは出てきますが、気まずいほどではないと思います。謎解きなので、鑑賞後の会話のネタにもなるでしょう。本作は直木賞作家、佐藤正午の同名小説を映画化したもので、映像化不可能と言われていたそうなので、本が好きな人を誘うと一層興味を持ってもらえるかもしれません。
頭が柔らかい皆さんの中には謎解きが好きな人もいますよね。1人でじっくり観るのも良いですが、自分はどこで何に気付いたとか、観終わった後にいろいろと話すのも楽しいと思うので、友達や家族を誘ってみてはどうでしょうか。原作はもちろん、劇中で登場する本にも興味を持ったら、ぜひ読んで観てください。
『鳩の撃退法』
2021年8月27日より全国公開
松竹
公式サイト
©2021「鳩の撃退法」製作委員会 ©佐藤正午/小学館
TEXT by Myson