REVIEW
ソフィア・コッポラ監督は、1985年に出版されたプリシラ・プレスリー著「私のエルヴィス」(原題:“Elvis and Me”)を下敷きとして、現在のプリシラと対話を重ね、本作の脚本を制作したそうです(映画公式資料より)。本作は、伝説のスーパースター、エルヴィス・プレスリーの隣に寄り添いながら、彼との関係に苦しみ、やがて自立した女性に成長していくプリシラの姿を描いています。
後にエルヴィス・プレスリーの妻となるプリシラが彼に出会ったのは14歳の頃。1959年当時、既にスターとして知られていたエルヴィスは一般兵士として陸軍に配属され、ドイツに赴任中にプリシラと知り合います。プリシラとエルヴィスの年の差は10歳、しかもエルヴィスはスターであり、2人が交際するにはさまざまなハードルがありました。でも、そうした状況に若さで暴走しそうなところを、エルヴィスはプリシラを大切にし、彼女の両親の理解を得るために真摯な態度を示します。
本作を観ていて、まずケイリー・スピーニーが演じるプリシラのあまりの可愛らしさに魅了されます。そして、落ちついた態度とどこか母性を感じさせる雰囲気にエルヴィスは惹かれ、彼女を大切にしたいと思ったのだろうと想像できます。とはいえ、10代の女の子にとってエルヴィスと恋に落ちるなんて夢のような出来事だったはず。だからこそ、シンデレラストーリーの主人公になったと思ったら、実際にはスターのパートナーとして生きる苦労に直面し、さまざまなことを受け容れていくのは余計にハードだったと思います。そうしたプリシラを取り巻く光と影が本作では見事に描かれています。
またプリシラにとって絶対的な存在であるエルヴィスの意向に合わせようと振る舞いつつ、彼女は抑圧されても自我と自立心を失わずにいた点が印象的です。14歳からある意味運命に縛られ、エルヴィスの影の存在のように過ごしてきながら、1973年、彼女が28歳の時に大きな決断をできたのは、最初から彼女が自立した女性であったからではないかと思います。だから、ラストで改めてエルヴィスは根本ではそうした彼女の芯の強さに惹かれたのかもしれないなと実感できます。
本作ではプリシラのファッションやヘアメイクも見どころです。資料によると「劇中のウェディングドレスはシャネル、エルヴィスのタキシードやニットなどの衣装はヴァレンティノ」とあり、観て楽しめるのはもちろん、ファッションやヘアメイクが物語る部分も多く、エルヴィスとの関係の変化、彼女自身の変化、彼女がどういう世界に生きているかを表しています。
本作を観ていると、恋愛観を振り返るきっかけになると同時に、自分の人生を生きるとはどういうことかを考えるきっかけになります。プリシラと歩んだ時期にエルヴィスがどんな状況にあったかを知るとさらにいろいろな思いが巡ります。気になった方は『エルヴィス』も合わせて観てみてください。
デート向き映画判定
相手が大スターでなくても、エネルギーを消耗する恋愛はありますよね。ただのプレイボーイではなく、相手の職業や立場から、自分が我慢を強いられる状況で交際中の方は、改めて自分の本心に向き合う機会になるかもしれません。そういう視点で観る方は1人でじっくり観るか、仲の良い友達と観るほうが良いでしょう。一方で、切ない展開もありながら、とてもロマンチックで愛に溢れたストーリーである点ではデートで観るのもアリでしょう。
キッズ&ティーン向き映画判定
ティーンの皆さんは、14歳のプリシラが経験する恋愛を等身大で観て、いろいろと参考になる部分があるでしょう。大スターと交際するプリシラの生活は一見華やかで羨ましく思えるかもしれません。でも、本作には恋愛の理想と現実がギュッと詰まっていて、恋愛の辛い部分も知ることができます。また、プリシラが何を犠牲にしているのかにも注目すると、自分の人生観のヒントになる部分もありそうです。
『プリシラ』
2024年4月12日より全国公開
PG-12
ギャガ
公式サイト
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TEXT by Myson
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情報は2024年4月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。