物語の舞台は1924年の母の日。母の日には、イギリス中のメイド達にも里帰りが許されます。でも、孤児として育ったジェーン(オデッサ・ヤング)には帰る家がありません。そこへ、1本の電話が入り、ジェーンは近くにあるジェリンガム家に向かいます。ジェーンはジェリンガム家の跡継ぎであるポール(ジョシュ・オコナー)と秘密の関係を持っていて、2人は誰もいない邸宅で愛し合います。ここまで観たところで、身分の違いを越えたラブストーリーが展開されるのかと思いきや、そんなに単純なものではないところで、本作はとても見応えがあります。
何も知らずに観ていただきたいので、これ以上のあらすじは控えますが、本作は一見淡々と日常を描いているように見えて、知らない間に何かが起こり始めていて、最後にハッとさせるものがあります。キャラクター達のセリフの中にどこか引っかかる部分がいくつも出てくるので、注意して観てください。映画が展開していくうちにその引っかかりが何だったのかが徐々に明かされていきます。
ジェーンが一糸まとわぬ姿で邸宅中を歩き回る姿も印象的で、ボッティチェリの絵画“春”のヴィーナスを彷彿とさせます。他の場面も含めて、美しい風景が印象的で、画の美しさが物語の切なさを際立たせています。また、主演のオデッサ・ヤング、ポール役のジョシュ・オコナー、コリン・ファース、オリヴィア・コールマンといった俳優達の演技も見もの。今回コリン・ファースは脇役ですが、周囲の人間が抱える哀しみを受け止めて優しさを見せつつ自分も必死に耐えている姿が、観る者の感情を煽ります。切ないストーリーではありますが、清々しさもあり、映画好き女子のツボにハマる作品だと思います。
ヌードやベッドシーンが豊富なので、初デートや交際ホヤホヤのカップルには少し気恥ずかしい部分もあるかもしれません。ただ、ヌードに関してはだんだん見慣れてくる可能性もあります(笑)。人生を変えるピュアな恋愛を描いている部分では、とてもロマンチックです。デートの雰囲気を盛り上げる要素は十分にありますので、ちょっと距離を縮めたい2人はデートで観ても良いのではないでしょうか。
本作にはジェーンの恋愛と、作家としての布石が描かれています。人は何か運命的な出来事を経験して、大人になっていくのかもしれないと、ティーンの皆さんも自分の将来をシミュレーションできる部分があるのではないでしょうか。苦くて辛い思い出も振り返るとかけがえのないもので、それが自分という人間を作っていくと思えるので、これから経験することに前向きな気持ちになれると思います。
『帰らない日曜日』
2022年5月27日より全国公開
R-15+
松竹
公式サイト
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TEXT by Myson
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