REVIEW

カンフースタントマン 龍虎武師【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『カンフースタントマン 龍虎武師』サモ・ハン

カンフー映画ファンなら知っておきたいカンフー映画の歴史が詰まったドキュメンタリーです。カンフー映画には、普通なら死んでもおかしくないと思えるような超人的なアクションシーンが多く出てきます。現代は映像技術でどうにでもできそうですが、今ほど技術がない時代、もしくは技術はあっても製作費がない状況で作られたカンフー映画は、生身のスタントマンが決死の覚悟で挑んだシーンが数々あることを本作で知ることができます。世界中で大ヒットし今でも名前が語り継がれる作品の撮影の裏側が明かされていて、スタントマン達がいかに危険な仕事をこなしているかを実感します。例えば、ジャッキー・チェンの『プロジェクトA』に出てくる時計台から落ちるシーンは有名ですが、私もこの映画を観た時「これって合成じゃなくて実際に演じてるのかな?」とハラハラしたのを覚えています。このシーンも生身で演じられたシーンで、本作でも撮影の裏側が明かされています。その他にも、撮影後に生きているのが信じられないようなシーンの数々が紹介されていて、スタントマンがいかにスゴいかを実感します。
また、本作を通して、カンフー映画はどんな歴史を辿ってきたか、そのなかでスタントマンの地位はどう変化してきたかを知ると、カンフー映画の歴史自体がすごくドラマチックだとわかります。だから、一層カンフー映画、そこに携わってきた俳優やスタントマンが好きになります。改めてブルース・リーのスゴさ、サモ・ハンやジャッキー・チェンが名を挙げてきた背景を知ることができ、さらに彼等を裏で支えるスタントマン達がいかに偉大かを知ることができます。実はカンフー映画も低迷期を経験しているからこそ、工夫を凝らし、頭を使い、他には真似のできないシーンを体を張って作ってきたことがわかります。カンフー映画がハリウッド映画を含め、映画界全体でどのような影響を及ぼしてきたかということも知ることができ、映画の歴史の一端を知る上で欠かせない作品ともいえます。
本作を観ると、ますますカンフー映画が好きになるし、これまでの作品も振り返りたくなります。特に1980年代の香港映画はこぞって無謀で危険なシーンを多く撮って競っていたとのことで、同時代の作品を観比べてみたくもなります。彼等はライバルでありながら、同じスタントマンとして生き残ってきた同志である点にも感銘を受けます。サモ・ハン、ドニー・イェン、ユエン・ウーピン、ツイ・ハーク、アンドリュー・ラウ、エリック・ツァン、ユン・ワーなど多数の大物映画人の話を一同に聞けるのもとても貴重な体験です。それぞれが兄弟弟子として振り返る過去の話もすごくおもしろいですよ。厳しい鍛錬を耐えて身につけた超人的な肉体と身のこなし、彼等のアクションへの情熱、映画への情熱、すべてをリスペクトします。カンフー映画ファンにはたまらない内容が詰まっていて、何度でも観たくなる作品です。

デート向き映画判定
映画『カンフースタントマン 龍虎武師』ドニー・イェン

ご想像の通り、ロマンチックなムードになるような映画ではありませんが、2人ともカンフー映画好きなら興奮しっぱなしで、鑑賞後も会話がすごく盛り上がると思います。改めて観たくなるカンフー映画が出てくるので、次は旧作を一緒に観る約束をするのも良いですね。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『カンフースタントマン 龍虎武師』ユエン・ウーピン

キッズやティーンの皆さんも一度カンフー映画を観ると、ハマる方が多くいるはず。危険なアクションシーンも多く含まれるので、視聴年齢が設けられている作品もあると思いますが、まずはご自身の年齢で観られるカンフー映画を何本か観てみると良いでしょう。そうしてカンフー映画の魅力を感じた上で本作を観ると、一層カンフー映画の虜になると思います。劇中では、生きていくために、つまり生計を立てる方法がそれしかなくてスタントマンになった方もいる実態も語られています。社会勉強になる部分もあるので、ぜひ若い皆さんにも観て欲しいです。

映画『カンフースタントマン 龍虎武師』

『カンフースタントマン 龍虎武師』
2023年1月6日より全国公開
アルバトロス・フィルム
公式サイト

© ACME Image (Beijing) Film Cultural Co., Ltd

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『宝島』妻夫木聡/広瀬すず/窪田正孝 沖縄がアメリカ統治下だったことについてどう思う?『宝島』アンケート特集

【大友啓史監督 × 妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太】のタッグにより、混沌とした時代を自由を求めて全力で駆け抜けた若者達の姿を描く『宝島』が9月19日より劇場公開されます。この度トーキョー女子映画部では、『宝島』を応援すべく、正式部員の皆さんに同作にちなんだアンケートを実施しました。

映画『ヒックとドラゴン』メイソン・テムズ ヒックとドラゴン【レビュー】

アニメーションの『ヒックとドラゴン』を観てから大好きで、劇場未公開の続編やテレビシリーズも含めて一通り観てきたファンとしては…

映画『タンゴの後で』アナマリア・ヴァルトロメイ/マット・ディロン タンゴの後で【レビュー】

本作の背景を知らずにタイトルとキービジュアルだけ見ると、素敵なラブストーリーと勘違いする方もいるかも…

海外ドラマ『9-1-1 LA救命最前線 シーズン7』ライアン・グスマン ライアン・グスマン【ギャラリー/出演作一覧】

1987年9月21日生まれ。アメリカ出身。詳しいプロフィールは→IMDb『9-1-…

映画『九龍ジェネリックロマンス』吉岡里帆/水上恒司 九龍ジェネリックロマンス【レビュー】

“ジェネリックロマンス”という要素から何を期待するのか、そして本作で描かれる“ジェネリックロマンス”をどう受け取るのかは…

映画『ユニバーサル・ランゲージ』 ユニバーサル・ランゲージ【レビュー】

本作の舞台は、ペルシャ語とフランス語を公用語とする架空の世界のカナダ・ウィニペグで…

映画『ヒックとドラゴン』ニコ・パーカー ニコ・パーカー【ギャラリー/出演作一覧】

2004年12月9日生まれ。イギリス出身。

映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』吉永小百合 『てっぺんの向こうにあなたがいる』完成披露試写会 15組30名様ご招待

映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』完成披露試写会 15組30名様ご招待

映画『パルテノペ ナポリの宝石』セレステ・ダッラ・ポルタ パルテノペ ナポリの宝石【レビュー】

イタリアの巨匠パオロ・ソレンティーノ監督が初めて女性を主人公にして撮った本作の物語は、1950年にパルテノペが生まれるところから…

映画『8番出口』二宮和也 8番出口【レビュー】

観始めてスゴい設定だと驚き、何から何まで巧く作られていて…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『宝島』妻夫木聡/広瀬すず/窪田正孝 沖縄がアメリカ統治下だったことについてどう思う?『宝島』アンケート特集

【大友啓史監督 × 妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太】のタッグにより、混沌とした時代を自由を求めて全力で駆け抜けた若者達の姿を描く『宝島』が9月19日より劇場公開されます。この度トーキョー女子映画部では、『宝島』を応援すべく、正式部員の皆さんに同作にちなんだアンケートを実施しました。

映画『スーパーマン』デイビッド・コレンスウェット 映画好きが選んだDCコミックス映画ランキング

今回は正式部員の皆さんに好きなDCコミックス映画について投票していただきました。“スーパーマン”や“バットマン”など人気シリーズが多くあるなか、上位にはどんな作品がランクインしたのでしょう?

映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』トム・クルーズ 映画好きが選んだトム・クルーズ人気作品ランキング

毎度さまざまな挑戦を続け、人気を博すハリウッドの大スター、トム・クルーズ。今回は、トム・クルーズ出演作品(日本劇場未公開作品を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『ネクスト・ゴール・ウィンズ』マイケル・ファスベンダー
  2. 映画『バーバラと心の巨人』マディソン・ウルフ
  3. 映画『We Live in Time この時を生きて』フローレンス・ピュー/アンドリュー・ガーフィールド

REVIEW

  1. 映画『ヒックとドラゴン』メイソン・テムズ
  2. 映画『タンゴの後で』アナマリア・ヴァルトロメイ/マット・ディロン
  3. 映画『九龍ジェネリックロマンス』吉岡里帆/水上恒司
  4. 映画『ユニバーサル・ランゲージ』
  5. 映画『パルテノペ ナポリの宝石』セレステ・ダッラ・ポルタ

PRESENT

  1. 映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』吉永小百合
  2. 映画『ムガリッツ』
  3. 映画『Pacific Mother パシフィック・マザー』
PAGE TOP