REVIEW

流浪の月【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『流浪の月』広瀬すず/松坂桃李

小学生の女の子を自宅に連れて行き、長らく一緒に過ごしていた大学生。これだけ聞くと、犯罪が起こったと思うでしょう。そこからさらに、その少女が大きくなり、男と再会し、頻繁に会うようになったとしたら、不可解に思えても当然です。でも、本作では2人の背景が徐々に語られていき、その先入観がどんどん覆されていきます。
ただ、数々の謎の中で奥底にしまわれた、ある真実だけは最後まで明かされません。なので、全容がわかるまで違和感のあるシーンがいくつか出てきます。その伏線が最後に回収された時にどうしようもない切なさと同時に、何とも言えない安堵の気持ちというか、どこか救われたような感覚が沸き上がってきます。この感覚をぜひ皆さんにも味わって欲しいと思います。
そして、本作はキャストの演技が素晴らしい!まず、広瀬すずは大人の雰囲気がグッと増しています。同時に、内に少女っぽさを残したキャラクターにピッタリとハマっています。また、横浜流星は一見とても爽やかな青年から徐々に変貌を遂げていく多面性のあるキャラクターを迫真の演技で体現しています。10歳の更紗を演じた白鳥玉季も、更紗の無邪気な一面と、心の中で苦しむ姿を見事に演じています。最後に忘れてはいけないのが松坂桃李。顔の線の細さから、「役作りで痩せたのかな?」と思っていたら、クライマックスでその力の入れようが明らかになり驚かされます。一見表情が乏しいキャラクターなだけに心の動きを表現するのが難しそうですが、静かに強く動く心の声が伝わってくるようでした。ストーリー、演出、キャストのすべてが見どころとなっている本作は映画好き必見ですよ。

デート向き映画判定
映画『流浪の月』松坂桃李/多部未華子

それぞれのキャラクターのとても繊細な心の動きを描いた作品なので、情緒に乏しい人と一緒に観ると、映画を観終わった後に気持ちのやり場に困るかもしれません。1人でじっくり観るほうが向いている作品だと思います。もし誰かと一緒に観るとしても、相手は選んだほうが良さそうです。デートの雰囲気が盛り上がるかどうかは、どのポイント、誰に共感するかに寄るのではないでしょうか。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『流浪の月』広瀬すず/横浜流星

“ロリコン”という強いキーワードが出てくるので、観る前は少し怖いと思うかもしれませんが、真相がわかってくると共感できるところが多々あると思います。どんな人も誰にも言えない秘密を抱えているかもしれない、それを言えないがために周囲に誤解されて1人で苦しんでいるかもしれないと知るきっかけになるストーリーです。ただ、現実社会では知らない人についていったり、その人の家に行くのは絶対にやめましょう。あくまで映画として、物語に没入してください。

映画『流浪の月』広瀬すず/松坂桃李/横浜流星/多部未華子

『流浪の月』
2022年5月13日より全国公開
ギャガ
公式サイト

© 2022「流浪の月」製作委員会

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『レイブンズ』瀧内公美さんインタビュー 『レイブンズ』瀧内公美さんインタビュー

写真家、深瀬昌久の78年に渡る波瀾万丈の人生を、実話とフィクションを織り交ぜて描いた映画『レイブンズ』。今回は本作で、深瀬昌久の最愛の妻であり被写体でもあった洋子役を演じた瀧内公美さんにインタビューさせていただきました。

映画『ミッキー17』ロバート・パティンソン ミッキー17【レビュー】

『パラサイト 半地下の家族』で第92回アカデミー賞(作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞)を受賞したポン・ジュノ監督(脚本、製作を兼務)が、この度制作したハリウッド映画は…

映画『ANORA アノーラ』マイキー・マディソン マイキー・マディソン【ギャラリー/出演作一覧】

1999年3月25日生まれ。アメリカ出身。

映画『BAUS 映画から船出した映画館』染谷将太 BAUS 映画から船出した映画館【レビュー】

2014年、東京都、吉祥寺の映画館“バウスシアター”が閉館となりました。本作は、この映画館を親の代から運営してきた本田拓夫著…

映画『白雪姫』レイチェル・ゼグラー 白雪姫【レビュー】

1937年に製作されたディズニーの『白雪姫』は、世界初のカラー長編アニメーションであり、ウォルト・ディズニー・スタジオの原点とされています…

映画『ニンジャバットマン対ヤクザリーグ』 ニンジャバットマン対ヤクザリーグ【レビュー】

バットマン・ファミリーが戦国時代の歴史改変を食い止めた『ニンジャバットマン』の続編…

【映画でSEL】森林の中で穏やかな表情で立つ女性 自分を知ることからすべてが始まる【映画でSEL】

SEL(社会性と情動の学習)で伸ばそうとする社会的能力の一つに「自己への気づき」があります。他者を知るにも、共感するにも、自己をコントロールするにも、そもそも自分のことを全く理解していなければ始まりません。

映画『悪い夏』北村匠海 悪い夏【レビュー】

染井為人著の原作小説は、「クズとワルしか出てこない」と話題を呼び、第37回横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞しています。映画化の際には…

映画『女神降臨 Before 高校デビュー編』Kōki,/渡邊圭祐/綱啓永 女神降臨 Before 高校デビュー編【レビュー】

本作は、縦スクロール形式のデジタルコミック“webtoon”で人気を博したyaongyi(ヤオンイ)作の同名コミックを原作としています…

映画『教皇選挙』レイフ・ファインズ 教皇選挙【レビュー】

圧倒されっぱなしの120分でした。教皇に“ふさわしい”人間の境界線をテーマに、神に仕える聖職者達の言動、ひいては人格を通して…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

映画『セトウツミ』池松壮亮/菅田将暉 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.4

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

映画『オッペンハイマー』キリアン・マーフィー 映画好きが選んだ2024洋画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の洋画ベストを選んでいただきました。2024年の洋画ベストに輝いたのはどの作品でしょうか!?

学び・メンタルヘルス

  1. 【映画でSEL】森林の中で穏やかな表情で立つ女性
  2. 映画『風たちの学校』
  3. 【映画でSEL】海辺の朝日に向かって手を広げる女性の後ろ姿

REVIEW

  1. 映画『ミッキー17』ロバート・パティンソン
  2. 映画『BAUS 映画から船出した映画館』染谷将太
  3. 映画『白雪姫』レイチェル・ゼグラー
  4. 映画『ニンジャバットマン対ヤクザリーグ』
  5. 映画『悪い夏』北村匠海

PRESENT

  1. 映画『ガール・ウィズ・ニードル』ヴィク・カーメン
  2. 映画『私の親愛なるフーバオ』
  3. 映画『デュオ 1/2のピアニスト』カミーユ・ラザ/メラニー・ロベール
PAGE TOP