REVIEW

最後の決闘裁判

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『最後の決闘裁判』マット・デイモン、ベン・アフレック、アダム・ドライバー、ジョディ・カマー

実話を基にしているということを思い出すと余計に驚愕するような内容で、時代や国は異なれど、万国共通で今もなお引き継がれている性差別、性犯罪の問題が描かれていて、他人事とは思えずゾッとさせられます。現代社会ではやっと少しずつ性差別の問題や性被害者が抱える苦しみに目が向けられるようになってきているのかもしれませんが、人間の歴史から見て本作で描かれているような世の中がベースにあったことを思うと、問題の根深さを感じます。
本作は、被害者であるマルグリット(ジョディ・カマー)、その夫で騎士のジャン・ド・カルージュ(マット・デイモン)、そして加害者とされるジャック・ル・グリ(アダム・ドライバー)の3者の視点で語られていきます。特にジャンとジャックの視点で描かれるストーリーを観ていると、いかに無意識レベルで性差別が起こっているかがわかり、それが当たり前のようになっているからこその怖さを感じます。また、マルグリットが受けた被害の深刻さはもちろん、二次被害の重さもひしひしと伝わってきて、他人事としては観られないほど心にズシッと重いものがのしかかります。彼女に被害をもたらしているのは、大元の問題を起こした加害者ジャック・ル・グリはもちろん、家族や周囲の人も害を及ぼしているというところで一層恐ろしさが増して感じられます。何とも言えない後味が残るラストもこの問題の根底にあるものを改めて喚起し強く訴えるものになっていて、この物語が持つメッセージ性を実感させられます。
物語そのものにとても力がある作品なのでそれだけでもぜひ観て欲しいのですが、リドリー・スコット監督のもと、ジョディ・カマー、マット・デイモン、アダム・ドライバー、ベン・アフレックといった俳優達が名演を披露している点も見どころです。また、本作の脚本は、ニコール・ホロフセナーの他、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』で共に頭角を現し今や大スターとなったマット・デイモンとベン・アフレック​が名を連ね、製作にも加わっている点で、映画好きには溜まらない背景があります。老若男女問わず多くの方に観ていただきたい作品です。

デート向き映画判定
映画『最後の決闘裁判』ジョディ・カマー

跡継ぎを残さなければいけないというマルグリットの立場で観ても、周囲から本当に酷い仕打ちが相次いでいて、妊娠する迄の過程についても開いた口がふさがらないくらい、ばかばかしい社会通念がまかり通っていたことに唖然とします。あり得ないと思える衝撃的な状況が数々出てくるので、正直なところデートの雰囲気に浸っている余裕はないでしょう。でも、真剣なお付き合いをしているならば、敢えて本作を一緒に観て意見を交換することでもっと良い関係を築けるとも思います。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『最後の決闘裁判』マット・デイモン/アダム・ドライバー

性差別や性被害については、皆さんにも無関係なことではありません。現代社会では決闘裁判は行われないといっても、方法が異なるだけで似たような状況は今でもあると思います。性別は関係なく、弱者が被る被害がどんなものであるかを知っておくことは、皆さんがこれから生きていく上で大切だと思います。自分が気を付けるだけで避けられる、解決できる問題ではありませんが、皆さんの未来が少しでも生きやすい社会になるよう、こういった事実に目を向け、いろいろな人と意見を交わしたり、理解しあうきっかけになることを期待します。

映画『最後の決闘裁判』ジョディ・カマー/マット・デイモン/アダム・ドライバー/ベン・アフレック

『最後の決闘裁判』
2021年10月15日より全国公開
ウォルト・ディズニー・ジャパン
公式サイト

© 2021 20th Century Studios. All Rights Reserved.

※この作品はディズニーからのご招待を受け、試写会で鑑賞しました。

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『次元を超える』窪塚洋介/松田龍平 次元を超える【レビュー】

キービジュアルとタイトル、「人はどこから来て、どこへ行くのか」という意味深なキャッチコピーだけで観たくなったのは…

映画『見はらし世代』黒崎煌代 黒崎煌代【ギャラリー/出演作一覧】

2002年4月19日生まれ。兵庫県出身。

映画『ヒポクラテスの盲点』 ヒポクラテスの盲点【レビュー】

新型コロナウイルスワクチンの被害が起こっている現実に着目した、中立した立場の取材に基づくドキュメンタリー…

映画『ファンファーレ!ふたつの音』ピエール・ロタン ピエール・ロタン【ギャラリー/出演作一覧】

1989年6月20日生まれ。フランス出身。

映画『トロン:アレス』ジャレッド・レト トロン:アレス【レビュー】

本シリーズ1作目『トロン』(=『トロン:オリジナル』)は1982年、『トロン:レガシー』は2010年に作られ、本作はシリーズ3作目となります…

映画『層間騒音』イ・ソンビン 層間騒音【レビュー】

冒頭から不可解な現象が映し出され、観る側はゾワゾワさせられながら騒音の原因を想像することになるわけですが…

映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』ミア・スレアプレトン ミア・スレアプレトン【ギャラリー/出演作一覧】

2000年10月12日生まれ。イギリス出身。

韓国ドラマ『TWELVE トゥエルブ』マ・ドンソク/パク・ヒョンシク/ソ・イングク/ソン・ドンイル/イ・ジュビン/コ・ギュピル TWELVE トゥエルブ【レビュー】

マ・ドンソク、パク・ヒョンシク、ソ・イングクなど人気俳優が出演する本作は、十二支をモチーフにした守護神達…

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

映画『秒速5センチメートル』松村北斗/高畑充希 秒速5センチメートル【レビュー】

本作は、新海誠監督が33歳の時に作った同名アニメーション作品を、33歳(撮影当時)の奥山由之監督が実写化…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

AXA生命保険お金のセミナー20251106スイーツ画像あり スイーツを食べながらゆったり学ぶ【明るい未来のための将来設計とお金の基本講座】女性限定ご招待!

生きていく上でお金との関わりは不可欠です。困ってから慌てるのではなく、先に知っておくと気持ちが楽!だから、私達と一緒にファイナンシャルプランナーさんのお話を聞いてみませんか? 本イベントでは、商品の販売や勧誘はありません。スイーツを食べてホッコリしながら、お話を聞いて、明るい未来を思い描く機会にしましょう!

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

学び・メンタルヘルス

  1. AXA生命保険お金のセミナー20251106スイーツ画像あり
  2. 映画学ゼミ:アイキャッチ1/本の上の犬と少女
  3. 映画『ふつうの子ども』嶋田鉄太/瑠璃

REVIEW

  1. 映画『次元を超える』窪塚洋介/松田龍平
  2. 映画『ヒポクラテスの盲点』
  3. 映画『トロン:アレス』ジャレッド・レト
  4. 映画『層間騒音』イ・ソンビン
  5. 韓国ドラマ『TWELVE トゥエルブ』マ・ドンソク/パク・ヒョンシク/ソ・イングク/ソン・ドンイル/イ・ジュビン/コ・ギュピル

PRESENT

  1. 映画『モンテ・クリスト伯』ピエール・ニネ
  2. AXA生命保険お金のセミナー20251106スイーツ画像あり
  3. 映画『愚か者の身分』北村匠海/林裕太
PAGE TOP