REVIEW

ヤクザと家族 The Family【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ヤクザと家族 The Family』綾野剛/舘ひろし

人には人との繋がりが大切で、どんな環境どんな関係であっても、家族と呼べる関係があることは救いになります。ただそれが、ヤクザという形である点でやっぱり大きな代償があるということを、とてもわかりやすく描いた物語だと思います。暴力団対策法が今どれくらいの効力を発揮しているのか、私達が日常で実感をもつことはあまりありません。でも本作には元ヤクザだった作家の沖田臥竜氏が脚本監修に加わり、リアリティを追究して作られていることで、本作を観れば暴力団対策法が少なからず効果を発揮している実態を知ることができます。
前半は主人公の山本が新しい“家族”を得て、組の中で頭角を表す様子が映し出され、後半は暴力団が排除されつつある社会で、彼等がどう生きていくのかが描かれています。ヤクザという存在をもちろん肯定はできませんが、社会の歪みと冷たさを実感させられるストーリーで、今この社会には救いの手が少ないということを痛感させられます。若者達がヤクザになってしまう経緯、ヤクザから抜けられない状況、ヤクザを辞められても生きる術がない状況を見ていると、ヤクザと呼ばれる人がいなくなるだけで、名前を変えた別の悪循環が生まれているだけだということも伝わってきます。そして、血の繋がった家族でなくても、家族だからこそ愛憎が深いということも巧みに描かれており、これまでのヤクザ映画とは異なるストーリーに引き込まれます。ノーを突きつけるだけでなく、その後私達がどうすべきか、誰もが本当に生きやすい社会にするにはどうすれば良いか、人と社会に責任を問うスタンスを見事に体現した作品です。

デート向き映画判定
映画『ヤクザと家族 The Family』舘ひろし/寺島しのぶ

内容からしてデート向きとは言えませんが、不遇な環境で育ち、誤った道を選んでしまった主人公の不器用な恋愛も描かれていて、共感できる部分はあるので、2人とも興味があればデートで観るのも良いでしょう。また、本作の家族は血の繋がった家族ではありませんが、それに関わらず、1つの家族の物語として観られるので、家族の話をしたいなと思う人は、一緒に本作を観た後にお互いの家族の話をしてはどうでしょうか。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『ヤクザと家族 The Family』市原隼人

PG-12でヤクザものなので、小学生は無理して観ずに大きくなってから観ると良いでしょう。でも、主人公と同じ苦悩を味わわないよう、若いうちに観ることでいろいろと学べる部分があるので、中高生はぜひ観てみてください。大学生などだんだん大人になると、思わぬルートで悪い人達の関係に巻き込まれてしまう恐れもあります。反社会的勢力に1度入ってしまったら抜けられないし、そこから抜けられたとしても、今度は社会が受け容れてくれないことを本作は教えてくれます。たとえ仲の良い友達が関わっていても安心せず、うまい話にものらないでください。

映画『ヤクザと家族 The Family』綾野剛/舘ひろし

『ヤクザと家族 The Family』
2021年1月29日より全国公開
スターサンズ、KADOKAWA
公式サイト

© 2021『ヤクザと家族The Family』製作委員会

TEXT by Myson

関連記事

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『流麻溝十五号』余佩真(ユー・ペイチェン) 流麻溝十五号【レビュー】

本作の原作は、曹欽榮(ツァオ・シンロン)と鄭南榕基金会による「流麻溝十五號:綠島女生分隊及其他」です…

映画『ツイスターズ』オリジナルハンディファン 『ツイスターズ』オリジナルハンディファン 2名様プレゼント

映画『ツイスターズ』オリジナルハンディファン 2名様プレゼント

映画『このろくでもない世界で』ホン・サビン/ソン・ジュンギ このろくでもない世界で【レビュー】

冒頭から緊張感のあるシーンで始まる本作は、ろくでもない世界でもがく18歳の少年を主人公に…

映画『OUT』公開初日舞台挨拶、杉本哲太 杉本哲太【プロフィールと出演作一覧】

1965年7月21日生まれ。神奈川県出身。『白蛇抄』(1983)で映画デビューし…

映画『あのコはだぁれ?』清水崇監督インタビュー 『あのコはだぁれ?』清水崇監督インタビュー

昨年話題となった『ミンナのウタ』のDNAを引き継ぐ最新作『あのコはだぁれ?』。今回は本作を手掛けた…

映画『デッドプール&ウルヴァリン』ライアン・レイノルズ/ヒュー・ジャックマン デッドプール&ウルヴァリン【レビュー】

たくさん言いたいことはありながら、ネタバレになるので言えないことが多過ぎ…

映画『時々、私は考える』デイジー・リドリー 時々、私は考える【レビュー】

主人公のフラン(デイジー・リドリー)はとても静かだけれど、ここぞという時には…

映画『お隣さんはヒトラー?』デヴィッド・ヘイマン/ウド・キアー お隣さんはヒトラー?【レビュー】

タイトルは『お隣さんはヒトラー?』で、物語の舞台は1960年のコロンビア…。「むむむ?アドルフ・ヒトラーって…

映画『ロイヤルホテル』ジュリア・ガーナー/ジェシカ・ヘンウィック ロイヤルホテル【レビュー】

『アシスタント』のキティ・グリーン監督と、主演を務めたジュリア・ガーナーが再びタッグを組んだ本作は…

映画『チャレンジャーズ』ゼンデイヤ 映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外10代、20代編】個性部門

映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外10代、20代編】番外編として、今回は<個性部門>のランキングを発表します。特に個性が光る俳優としてどの俳優に投票が集まったのでしょうか?

部活・イベント

  1. 【ARUARU海ドラDiner】サムライデザート(カップデザート)
  2. 【ARUARU海ドラDiner】トーキョー女子映画部 × Mixalive TOKYO × SHIDAX
  3. 【ARUARU海ドラDiner】サポーター集会:パンチボール(パーティサイズ)
  4. 【ARUARU海ドラDiner】プレオープン
  5. 「ARUARU海ドラDiner」202303トークゲスト集合

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『チャレンジャーズ』ゼンデイヤ 映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外10代、20代編】個性部門

映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外10代、20代編】番外編として、今回は<個性部門>のランキングを発表します。特に個性が光る俳優としてどの俳優に投票が集まったのでしょうか?

Netflix映画『悪魔はいつもそこに』トム・ホランド 映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外10代、20代編】演技力部門

映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外10代、20代編】番外編として、今回は<演技力部門>のランキングを発表します。演技派揃いのなか、どのような結果になったのでしょうか。

海外ドラマ『THE GREAT 〜エカチェリーナの時々真実の物語〜』エル・ファニング 映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外10代、20代編】雰囲気部門

映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外10代、20代編】番外編として、今回は<雰囲気部門>のランキングを発表します。雰囲気の良さが特に評価されているのは、どの俳優でしょうか。

REVIEW

  1. 映画『流麻溝十五号』余佩真(ユー・ペイチェン)
  2. 映画『このろくでもない世界で』ホン・サビン/ソン・ジュンギ
  3. 映画『デッドプール&ウルヴァリン』ライアン・レイノルズ/ヒュー・ジャックマン
  4. 映画『時々、私は考える』デイジー・リドリー
  5. 映画『お隣さんはヒトラー?』デヴィッド・ヘイマン/ウド・キアー

PRESENT

  1. 映画『ツイスターズ』オリジナルハンディファン
  2. 映画『サユリ』
  3. 映画『ボストン1947』ハ・ジョンウ/イム・シワン
PAGE TOP