REVIEW
鈴木清順監督の大正浪漫三部作といわれる『ツィゴイネルワイゼン』『陽炎座』『夢二』や、相米慎二監督の『セーラー服と機関銃』などを手掛けた名脚本家、田中陽造のオリジナル脚本『ゆきてかへらぬ』は、これまで多くの監督やプロデューサーに映画化を熱望されつつも実現せず、幻の企画として知られていたそうです(映画公式資料)。そんな背景を持つ『ゆきてかへらぬ』が、田中陽造とは『ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜』(2009)で一度タッグを組んだ根岸吉太郎監督によって映画化されました。

本作は、日本を代表する詩人で歌人の中原中也にまつわる物語です。ただし、広瀬すずが演じる長谷川泰子を主人公に描かれています。ストーリーは、まだ17歳だった中原中也(木戸大聖)と、20歳のまだ芽が出ない女優、長谷川泰子が出会うところから始まります。それぞれに夢を追う2人は、お互いを尊重しながら徐々に距離を縮めていきます。

2人は恋人にも同志にも見える、不思議な関係を築いていきます。そこへ、小林秀雄(岡田将生)が関わることで、新たな展開が出てきます。映画公式サイトにはもう少し具体的なあらすじが書かれていますが、何も知らずに観たい方のためにここでは伏せておきます。

本作は大正時代を舞台にしており、レトロな風景や、和洋折衷のクラシックな衣装がとても魅力的です。そしてやはり中原中也の恋愛観が興味深いです。中也には世の中を達観する面もありながら、若者らしい葛藤が見える場面もあります。彼よりも少し大人の長谷川泰子にも、芯の強さと脆さが混在していて、それが彼女の美しさにも思えます。そんな2人に、冷静さを持つ小林秀雄がどんな波紋を投げかけるのかが見どころとなっています。

このストーリーを、文学や芸術の世界独特のものと捉えるのか、実行に移す人が少ないだけで本来珍しい価値観ではないと考えるのか、さまざまな意見を聞いてみたくなる作品です。
デート向き映画判定

どんな恋愛観、人生観を持っているかによって、感想が大きく変わりそうです。複数のキャラクターの心情を想像するおもしろさがあるので、議論好きなカップルは鑑賞後の会話が盛り上がるのではないでしょうか。一方で、まだお互いに本音をいうのに躊躇する関係の場合は、感想に滲み出る自分の恋愛観が相手にどんな印象を与えるか気になるかもしれません。気楽に観たいなら1人でじっくり観るか、友達と観るほうが良さそうです。
キッズ&ティーン向き映画判定

中原中也が17歳、長谷川泰子が20歳の時点から物語が始まるので、ティーンの皆さんは近い感覚で観られる部分があるでしょう。一方で、大正という時代と現代の違い、独特な人間関係などは新鮮に映るかもしれません。中原中也という偉大な詩人の側面だけではなく、普通の青年としての側面も描かれている点でも、親近感を持って観られると思います。

『ゆきてかへらぬ』
2025年2月21日より全国公開
キノフィルムズ
公式サイト
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©︎ 2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会
TEXT by Myson
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情報は2025年2月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

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