取材&インタビュー

映画配給&制作さんにインタビュー【ノンデライコ】×【ムーリンプロダクション】

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コラボインタビュー2【ノンデライコ】×【ムーリンプロダクション】

今回はドキュメンタリー映画を企画、製作、配給しているノンデライコの大澤さんとムーリンプロダクションの菅谷さんにインタビュー!お2人のお話を聞けば聞くほど、一層ドキュメンタリーのおもしろさを感じました。ドキュメンタリーならではの強みもあるのだなと実感するお話もたくさん聞くことができました。

ノンデライコ:最新作『ゆめパのじかん』公式サイト
ムーリンプロダクション:公式サイト

ドキュメンタリーはどうやって生まれる?

マイソン:
まず会社名の由来と設立の経緯、コンセプトを教えてください。

ノンデライコ大澤さん:
正直いうと全く意味のない名前を付けようと思っていたんです。それで、ノンデライコという言葉を探し出して付けたのですが、意外にこの言葉を知っている人がいるんですよね。GAINAX(ガイナックス/アニメ制作会社)が最初に制作した『王立宇宙軍 オネアミスの翼』というアニメがあって、そのヒロインが“リイクニ・ノンデライコ”という名前なんです。僕はこのアニメが単純に好きで、ノンデライコって無戸籍な名前で良いなと思って、会社名にしたんです。誰も気付かないかなと思ったら、案外アニメ好きにはよく指摘されます(笑)。このアニメが35年ぶりに4Kリマスター版で劇場公開されるので、「このノンデライコって会社は元GAINAXの人間なのか」とか、最近いろいろな憶測がツイッターで回ってきます(笑)。でも、全くアニメ業界に関わったことはなくて、ただのいちファンなんです。

一同:
ハハハハハ!

ムーリンプロダクション ロゴ

マイソン:
では、ムーリンプロダクションという名前の由来は何ですか?

ムーリンプロダクション菅谷さん:
元々台湾でスタートした会社で、漢字で“木林”と書いて“ムーリン”と読みます。2019年に日本で株式会社を作った時にそこから取ってムーリンプロダクションにしました。“ムーリン”というのは木と林で合わせると“森”なのですが、土壌に根を張り世界を見る、つまり世界中にドキュメンタリーのネットワークの根を張るという意味合いが込められています。配給のセレクションもしている会社設立者の黄インイクがそういう想いを込めて付けた名前です。

マイソン:
会社名の由来ってやっぱり興味深いですね。両社とも主にドキュメンタリー映画を扱ってらっしゃいますが、ドキュメンタリー映画の1番の魅力、ドキュメンタリー映画を扱おうと思った理由を教えてください。

ムーリンプロダクション作品 :『大海原のソングライン』
ムーリンプロダクション作品
大海原のソングライン
デジタル配信中/自主上映受付中

ムーリンプロダクション菅谷さん:
今はドキュメンタリーの表現や手法が本当にいろいろあって、劇映画と見まがうようなものもあります。主には実際に生きている人達、実際の生活や社会がある程度ベースになって、そこから発生した物語が映像として作られたのがドキュメンタリーです。映し出されたものに触れることによって、自分の世界が変わるような力がドキュメンタリーにはあるんじゃないかと思います。そして、いろいろな国、島、境界線や狭間、そういうテーマにすごく興味があります。そういうところから生じるドキュメンタリー、物語に惹かれて、それを発信したいなと思っています。

ノンデライコ大澤さん:
ムーリンプロダクションさんのこれまでの作品の傾向を見て、境界とかそういうものに興味があるというところからさらに興味が広がっていくというのは、とてもおもしろいと思いました。すごく思想的なものを持ちながらやられているというか、何か地面からちゃんと繋がっているというのが作品郡から見受けられて、とてもおもしろいです。

ムーリンプロダクション菅谷さん:
ありがとうございます。

ノンデライコ作品 :『フリーダ・カーロの遺品 石内都、織るように』
ノンデライコ作品
『フリーダ・カーロの遺品 石内都、織るように』
自主上映受付中

ノンデライコ大澤さん:
うちはムーリンさんに比べると何でもあるんですよ。例えば、今度公開する『ゆめパのじかん』は神奈川県川崎市にある子どもの施設についてのドキュメンタリーで、今までやった作品『フリーダ・カーロの遺品 石内都、織るように』だとメキシコで撮影している石内都さんという著名な写真家のプロジェクトです。『タゴール・ソングス』はインドとバングラデシュ、『ドキュメンタリー映画 100万回生きたねこ』は日本を舞台にしつつ最終的に北京に及ぶ内容で、最初にやった『バックドロップ・クルディスタン』はクルド人難民家族がトルコに行った後ニュージーランドに行くという内容で、作品の背景は多岐に渡ります。
ただ毎作品、特に監督の実感であったり、体感のベースみたいなものをとても重視していて、目の前で起こっていること、展開されている物語を比較的ストレートに映像作品にして伝えることができるのがドキュメンタリーの魅力だと思っています。ドキュメンタリーの場合、監督や作り手の根っこにあるものがとても重要になってくるんです。より伝わる作品にするために、作品ごと、監督ごとの軸みたいなものがとても重要で、比較的最小限の単位で作る作品だといえます。

マイソン:
ドキュメンタリーを観ていると、どういう風にテーマを見つけてくるのか興味が湧きます。

ムーリンプロダクション菅谷さん:
買い付ける作品については、いろいろな海外のラインナップから基本的に弊社の黄が「これがおもしろい」という作品を何本か見つけてくるんですね。境界線といったテーマが背景にあるとして、まず彼の感覚に頼るところがあって、あとはタイミングですね。今度公開する『サハラのカフェのマリカ』は、まさにそういう感じで映画祭で見つけてきたものです。ロカルノ国際映画祭で賞を獲っていて、ある程度目立つ作品だったのに加えて、“境界線”というテーマでいうと、実は砂漠には国境がないという特徴がありました。気づいたら皆国境を越えて、アルジェリアからモロッコに行っちゃったとか。
あと、最初に配給した『大海原のソングライン』は南太平洋の島々が舞台で、そこは元々1つの文化圏だったそうです。そこに住む人々は昔音楽で文化的な繋がりを持って交流していたというのを、現代のミュージシャン達が音楽で数珠繋ぎにしていくという映画だったんです。
だから、失われたものや変化したもの、文化的、技術的なものから内面的なものまでいろいろな変化の経過をドキュメンタリーから見出して、それがテーマになるのかなと思います。

ムーリンプロダクション作品 :『大海原のソングライン』
ムーリンプロダクション作品 『大海原のソングライン

ノンデライコ大澤さん:
僕の場合、製作として、監督から「こういうのをやりたいんだけど、どうかな?」という相談を受けることが多いです。もう1つは今こういうことが起きていて、それをどう映画にしたらおもしろいかという雑談から企画がスタートすることも多いです。例えば『東京自転車節』は、昨年のコロナ禍で人がいなくなった東京をUber Eatsの配達をしながら撮ったドキュメンタリーです。これも行き当たりばったりで企画がスタートした作品で、コロナ禍で仕事がなくなった青柳監督が稼がないといけないということで当時流行し始めたUber Eatsなら稼げる、じゃあそれをやりながら撮ろうということになりました。企画というか思いつきから始めるまでに1ヶ月もかかっていないと思います。完成までも半年かかっていないですね。だから、そういうフットワークの軽さから生まれる作品もあれば、しっかり練り込んで作る作品もあります。すべてにいえるのは、どんな題材でもいろいろな世界に物語が横たわっていて、それを映画という方法で抽出するというのがドキュメンタリーの感覚なんです。だから、どんな題材でもいけるなと思っています。

ノンデライコ作品 :『東京自転車節』
ノンデライコ作品
東京自転車節
自主上映受付中

マイソン:
確かに普段だったら何も気に留めていない日常が、映像として撮ってみたらすごくドラマチックなことが起きているということもありますよね。

ノンデライコ大澤さん:
本当にそうなんですよね。フィクションの場合はそこを物語化してから制作するわけですが、ドキュメンタリーの良いところは、カメラを向け始めてそれに気づく可能性があるという方法論にあります。これは製作的な感覚ですが。

マイソン:
『ゆめパのじかん』については、子ども達の自然体って、たまたまそこにいてカメラを向けていないと撮れないことが多そうで、撮影や編集が大変そうだと思いました。

ノンデライコ大澤さん:
確かに子ども達の自然な姿が結構映っていて、そういったものをじっくり構築していく作品です。魅力はとにかく子ども達が純粋に遊びに集中していて、そういった時間を積み重ねているところです。だから、なるべく素でいてもらう時間を撮影しているし、編集でもそれが上手く伝わるように構成しています。子ども達にカメラを向けると「わあ!カメラだ」と言って、マイクを持って喋る、カメラのレンズにくっついてベタベタ触るということがよくありますけど、そういうことがないように、重江良樹監督はまずカメラのない状態で3ヶ月そこに通うというところから始めました。カメラマンではない映画監督である重江良樹という1人の人間がそこに自然に「ああ、またいるね」という状態になるまで、まずは何もしないで3ヶ月通ったんです。その状態になってから子ども達にカメラを向けました。これはドキュメンタリーの一種の演出論であり方法論なんです。

映画『ゆめパのじかん』
ノンデライコ作品『ゆめパのじかん』

マイソン:
撮り方はいろいろありますが、そのなかでも監督ごとに工夫されているんですね。

ノンデライコ大澤さん:
世界のドキュメンタリーのいろいろな作品を観ていると、本当にすごいんですよ。あまりにも多様性が爆発しているというか、最近はアニメーションドキュメンタリーというのも定着したといって良いくらいたくさんあります。
今の世界的なトレンドにも目配せしつつ、映画史、ドキュメンタリー史というものもすごく大事だと思っています。だから『ゆめパのじかん』を作る時に、例えば過去の名作について、映像的、作品的だけでなく、思想的な部分でも参考にしようとか。日本のドキュメンタリーに限らず、海外のドキュメンタリーも参考にしています。例えば『音のない世界で』で知られるフランスのニコラ・フィリベールというドキュメンタリー監督は子どもをよく撮っているんです。フランスでは子どもの教育系ドキュメンタリーが多く作られていて、子どもに対するスタンス、態度がすごく意識されています。子どもを子どもという記号に落とし込まずに、ちゃんと一人ひとりの自立した人間として見ているんです。実はそれがフランスのドキュメンタリー映画の特徴で、子どもを甘やかさないんですよ。子どもを子どもっぽく扱わないというか。フランスにはいろいろな教育系のドキュメンタリーがありますが、そこがすごく良いなと思っています。

マイソン:
一昔前だとドキュメンタリーは難しそうでハードルがあるジャンルに見られていたイメージです。でも最近はドキュメンタリーもいっぱい出てきて、観る人も増えた気がするのですが、感触としてどうでしょう?

映画『サハラのカフェのマリカ』マリカ
ムーリンプロダクション作品『サハラのカフェのマリカ』

ムーリンプロダクション菅谷さん:
ドキュメンタリーは難しいというイメージは何でしょうね。確かに客層は変わってきたかもしれません。僕は台湾に留学していたことがあるのですが、台湾のドキュメンタリーのお客さんは若いんですよ。自分が20代で台湾にいた頃はお客さんも20代が多かったです。国や地域によってドキュメンタリー史の流れが違うと思うのですが、台湾の場合は今が第2世代、第3世代ぐらい。お客さんも撮っている人達も若いので、日本の劇場に戻った時にどうしても年齢層の偏りみたいなものは感じました。普段沖縄にいるからかもしれませんが、若い方が少ないとはいわないまでも、ある程度お年を召した方が多いというか、ドキュメンタリーが難しい難しくない以前に客層の偏りみたいなものはドキュメンタリーに関しては感じます。
だから、自分達のある種のミッションとしては、新しいお客さんを育てるといったらおこがましいですが、開拓したいというのはずっと思っています。『大海原のソングライン』は、劇場公開が一通り終わった後に、音楽ファンからものすごく反応が良くて、いろいろなところで自主上映会を開いていただきました。全然違うところに持っていくと違った反応があって、全く予期しないところから広がっていくのもおもしろいなという感触があります。だから、ちょっと語弊があるかもしれませんが、ドキュメンタリーの賞味期限はわりと長いのかなと思います。弊社のコンセプトにも通じますが、ちょっとずつ田植えをしていけば良い感じに芽が開くんじゃないかなと考えています。

ノンデライコ大澤さん:
ドキュメンタリーが堅苦しく捉えられがちなのは否めないですよね。ここ20年くらいの感覚として、フィルムの時代は劇場公開されるドキュメンタリー映画ってすごく少なかったんです。でも、デジタル化されて作られる本数が増えれば、母数が増える分、おもしろい映画が出てくる確率が増えるので、エンタテインメント性があっておもしろい作品も良い意味で増えてきているんですよね。まだ堅苦しい印象もあるかもしれないけど、少なくとも基本興味関心は上に向いてきているので、歓迎すべき傾向だなと思っています。
象徴的なのは、「BRUTUS(マガジンハウス発行)」という雑誌が年に1回映画特集をやるのですが、昨年初めてドキュメンタリー単独の特集だったんです。自分達がトレンドウォッチャーだと自負しているであろうマガジンハウスがドキュメンタリーを取り上げたというのは、実は一般的イメージとして非常に大きいことだと思います。ただし、かなりの率でNetflixなど配信でのドキュメンタリー作品が取り上げられていました。中にはどぎつい題材の作品もあって、今のドキュメンタリーには社会派の堅い印象もありつつ、もっと現実の広さとか目を背けてしまうようなものを見せてくれるという印象も出てきているのかもしれません。それはそれで僕は結構歓迎で、そういう作品のおもしろさもあるし、とにかくドキュメンタリーという言葉が幅広くいろいろなイメージで広がっていけば、すごく嬉しいです。

ドキュメンタリーを通して伝えたいこと

マイソン:
最新作のお話になりますが、ノンデライコさんは『ゆめパのじかん』を製作したい、配給したいと思ったポイントを教えてください。

ノンデライコ大澤さん:
重江良樹監督が『さとにきたらええやん』(2016年公開)という大阪西成区釜ヶ崎という労働者の町にある子どもの施設を撮ったドキュメンタリーを作りました。それは家庭環境が悪い子ども達の“居場所”を撮った作品でした。重江監督に「次に何を作る?」と聞いた時に学校や家庭ではないもう1つの子どもの“居場所”の話が出ました。やっぱりそういう題材をもう1回やろうということで、神奈川県川崎市にある“川崎市子ども夢パーク”のドキュメンタリーを作ることにしました。

ノンデライコ作品 :『さとにきたらええやん』
ノンデライコ作品
『さとにきたらええやん』
自主上映受付中

ノンデライコ大澤さん:
最近、安心していられる場所が学校や家庭にない子ども達が増えていて、どういう居場所を作ってあげられるのか、作る必要があるのかということが、教育福祉関係では重大なテーマとなっています。だから社会的な意義という観点でもドキュメンタリーを作る意味があると思いました。一方で、この映画ではそういう情報を啓蒙的に語ることは一切せずに、いかにそういう場所で子ども達の遊びが確保されているのか、安心して遊ぶことができるのかを伝えるものとして、子どもが成長する時間を落とし込んだつもりです。
なので、たくさんの方に観てもらいたいし、今のところ主に教育関係の方も興味を持ってくださっています。そして、何より1番は今現役で子育てをしている世代に観てもらいたいです。ホッとして欲しいというか、安心して欲しいんですよね。ツイッターを見ると、子育てや子どもに関する悩みや不満が溢れています。でも、ちょっと視点をそらせばこういう居場所があったり、同じ居場所じゃなくても考え方一つで少し安心することができるといったことが今回の作品の肌触りでもあると思います。この作品を観て、大丈夫だよって思ってもらいたいです。

映画『ゆめパのじかん』
ノンデライコ作品『ゆめパのじかん』

マイソン:
大人はすごく心配するけど、子どもはちゃんと育つというか、大人が思っている以上に自力ですごく成長するんだなと思いました。
ムーリンプロダクションさんは、『サハラのカフェのマリカ』のどんなところに1番魅力を感じていらっしゃるのでしょうか?

ムーリンプロダクション菅谷さん:
『サハラのカフェのマリカ』は、まず出てくる人達がおもしろいんです。まず主人公であるマリカさんが何とも言えない愛嬌というか、語り口というか。シリアスなんだけどユーモアに溢れていて、ちょっと孤独な一面も見せたり、彼女をずっと見ているだけで100分があっという間に過ぎていきます。一方で、アルジェリア大使館の方に聞いたところによると、マリカさんは地元ではちょっと有名なのだそうです。あのカフェは昔から砂漠の集落にあって、生き残っている数少ないカフェの中でも最後まで店を営んでいるおばあさんとして知られているようです。彼女のキャラクターも相まって、アルジェリアではたまにテレビ取材もあるらしく、ちょっと有名になっているらしいです。そのくらい地元の人が観ても、離れた国にいる我々が観ても魅力的な人物なんです。
あと監督は「この作品はある意味ロードムービーだ」とおっしゃっていて、旅人や移動車はあそこを通って休憩し、皆が立ち寄る場所だから、「あそこから見るロードムービーだ」というわけです。さらにいうと、サハラ砂漠がどんどん現代化、近代化していくというプロセスもあります。砂漠にはラクダが歩いていて、道なき道を歩くというイメージが僕等にはありますが、実際のサハラ砂漠では道路も整備されているし、集落単位なら普通に携帯電話も使えるし、砂漠自体がどんどん現代化が進んでいるんですよね。そのなかで彼女がなぜ忘れられた存在になりつつあるのか、最後の生き残りという存在なのかというと、そもそも彼女は移動していく人々の中で立ち寄られる存在としてだけ常にそこにいるということなんです。彼女には人としての魅力もありますし、いろいろなものを示唆しています。変わりゆく砂漠の風景、変わりゆく人々の景色、そういうものが折り重なっているところが本作の魅力かなと僕は考えています。

映画『サハラのカフェのマリカ』
ムーリンプロダクション作品 『サハラのカフェのマリカ』

ノンデライコ大澤さん:
スチールを観る限りすごく魅力的なロケーションと人物達ですよね。絶対に言われると思いますけど、『バグダッド・カフェ』を彷彿とさせます。

ムーリンプロダクション菅谷さん:
実際にそうなんです。キャッチコピーにもちょっとそういう煽り文を引用していますが、確かに『バグダッド・カフェ』の現実版ですね。

マイソン:
観ていてほのぼのする部分がありつつ、社会的に女性が虐げられてきた歴史が言葉の端々に見える点も印象的でした。日常の一見何でもない風景を切り取っているだけなのに、そういう物語が浮き出てくるってすごいなと思いながら観ていました。いろいろな観方ができる作品ですよね。

ムーリンプロダクション菅谷さん:
そうですね、砂漠の日常でもあるんですが、イスラーム社会の日常の一端でもあるので、日本人からすると全く普段見ない世界の日常で、いろいろな部分が見えますよね。

配信や自主上映、さまざまな“戦い方”

コラボインタビュー2【ノンデライコ】大澤さん×【ムーリンプロダクション】菅谷さん
写真左:ノンデライコ大澤さん/右:ムーリンプロダクション菅谷さん

マイソン:
コロナ禍で映画をどうやってユーザーに届けるかというスタンスにも変化が出てきたのではないかと思います。さまざまな要因から劇場公開のハードルが上がってしまっているとは思いますが、配信や自主上映などの手段は有効でしょうか?ドキュメンタリーは特に自主上映の需要が高そうですよね。

映画『ゆめパのじかん』
ノンデライコ作品『ゆめパのじかん』

ノンデライコ大澤さん:
特に『ゆめパのじかん』は、自主上映の需要がめちゃくちゃあります。重江良樹監督の前作『さとにきたらええやん』も子どもの福祉系の作品で、これまで全国600ヶ所で上映されました。実は今劇場の売上よりも自主上映のほうが良いです。でも、それも劇場である程度お客さんが入るというベースがあるからなんです。『ゆめパのじかん』も自主上映のお問い合わせが比較的多いのですが、すべての作品が自主上映に上手くマッチするとは言えないところがあります。基本的にはこれから配信にどう流すかという前提で考えなければならないと思うんですけど、サブスクありきのスピード感を考えると、1本1本を丁寧に扱うインディペンデント系の配給にとってはまだサブスクはちょっとやりづらいかなって思います。割り切らないといけないという葛藤もあり、皆でどうしようという話をよくしています。

マイソン:
自主上映の需要があるタイトルに関しては戦略を変えないともったいない部分もありそうですね。ムーリンプロダクションさんはどうですか?

ムーリンプロダクション作品 :『犬は歌わない』
ムーリンプロダクション作品
犬は歌わない
デジタル配信中/自主上映受付中

ムーリンプロダクション菅谷さん:
弊社は基本的には全部配信に卸す方向でいます。映画館に対してもちろん愛着はありますけど、サブスク普及後にできた会社というのもありますし、僕は映画館のない町で育ったので映画を観られる環境は全国にあったほうが良いという個人的な感情もあります。なので、そういうのも含めて配信とかソフト化には何の抵抗もないんです。特に『大海原のソングライン』は音楽映画として、また昨今のSDGsの環境問題に対する捉え方もあって、いろいろなフックがあって、全国で今も自主上映をしていただいています。弊社はまだ5本しかないので、全部イチオシなんですけど、『犬は歌わない』という作品がありまして、これはちょうど配信もされています。ソ連の宇宙開発で宇宙に飛ばされたライカという犬と現代のモスクワを生きる野良犬達をクロスさせて描いた犬のドキュメンタリーで、犬目線、犬アングルで撮っている映画です。万人向けではありませんが、犬の世界、野良犬の日常をご覧になりたい方はぜひ。

ムーリンプロダクション作品 :『犬は歌わない』
ムーリンプロダクション作品『犬は歌わない

ノンデライコ大澤さん:
『犬は歌わない』を観た方がすごいって言っていました。ドキュメンタリーの作り手が「こんな作り方があるんだ!」とはしゃいでいました。

ムーリンプロダクション菅谷さん:
作り手がはしゃぐ映画ではあるかもしれませんね。そういう意味でも玄人向けというか、ライカ犬というところにSFファンが反応してくれたり、動物好きの方からわりと賛否あったり、いろいろ話題性があってイチオシです。あとは、沖縄の『ばちらぬん』と『ヨナグニ 旅立ちの島』という与那国の映画があります。これは秋ぐらいまで関東圏で上映していると思います。ぜひ劇場でご覧いただければと思います。
弊社の目標として、今はまだ小さい島を勉強している段階でもあるので年に2本とかが限界なのですが、最終的には年4回、季節ごとに出すというのが目的です。沖縄の作品を1本、台湾の新作ないし日本ではまだ紹介されていないクラシックな作品を1本、弊社で考えているような良質なドキュメンタリーを1本、フリー枠でもう1本という感じで今後は年に4本ぐらいできればなと考えています。

マイソン:
良いですね!ノンデライコさんとして今後取り組まれたいことは何ですか?

ノンデライコ作品:『パイナップル・ツアーズ デジタルリマスター版』
ノンデライコ作品
パイナップル・ツアーズ デジタルリマスター版
全国順次公開中

ノンデライコ大澤さん:
制作、配給はこれからも続けていきます。今制作中の作品が3本くらいあるんです。ドキュメンタリーなので同時並行しています。本当は買い付けの配給もすごくやりたいんです。今まで海外の作品は韓国の『きらめく拍手の音』、インドの『あまねき旋律』、イランの『少女は夜明けに夢をみる』の3本を配給しました。僕の場合、今のところ山形国際ドキュメンタリー映画祭でかかった中でおもしろかった作品にお声をかけています。もちろん海外のいろいろな専門の映画祭に限らず、毎年素晴らしいドキュメンタリー作品が生まれているので、本当はそういったところに行って観て、良い作品があったら買い付けをしたいんです。でも、まあ手が回らない(笑)。やりたいことはいっぱいあるんですけど、どうしたら手が回るようになるのかというのが今後の課題です。経済と人手をどう増やすのか。増やすためにはどう経済を回すのかという、ものすごくシンプルな話です。やりたいことは山ほどあります(笑)。

マイソン:
すごくわかります(笑)。では、最後に一言ずつお願いします。

映画『サハラのカフェのマリカ』マリカ、他
ムーリンプロダクション作品 『サハラのカフェのマリカ』

ムーリンプロダクション菅谷さん:
『サハラのカフェのマリカ』が8月26日より劇場公開します。物販で作品にちなんだコーヒーを売ったら良いんじゃないかとか、いろいろなアイデアを出したりしているので、その辺りも楽しみにしつつ、気軽に夏の終わりに砂漠の日常をご覧いただければと思います。

ノンデライコ大澤さん:
本当に子育てや教育に不安を抱えている方がたくさんいらっしゃると思うんですけど、ぜひ『ゆめパのじかん』を観て、生き生きと遊んでいる子どもの姿、ゆっくり成長していく時間というものを感じてもらえたらと思います。ぜひご覧いただけたらありがたいです。

マイソン:
本日はありがとうございました!

2022年6月29日取材 PHOTO&TEXT by Myson

映画『ゆめパのじかん』

『ゆめパのじかん』
2022年7月9日(土)より全国公開
監督・撮影:重江良樹
配給:ノンデライコ

神奈川県川崎市にある約1万㎡の広大な敷地に作られた子ども達のための遊び場「ゆめパ」。安心して伸び伸びと過ごせるこの場所で、子ども達は自らさまざまな体験をして成長していく。

公式サイト REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定

ガーラフィルム/ノンデライコ

映画『サハラのカフェのマリカ』マリカ

『サハラのカフェのマリカ』
2022年8月26日(金)より全国公開
監督・撮影:ハッセン・フェルハーニ
出演:マリカ/チャウキ・アマリ/サミール・エルハキム
配給:ムーリンプロダクション

アルジェリアのサハラ砂漠にポツンと佇む一軒の雑貨店。そこを1人で切り盛りするマリカと、道中に立ち寄るトラック運転手や旅人達のたわいもないやり取りにドラマが見える。

公式サイト REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定(後日UP)

© 143 rue du désert Hassen Ferhani Centrale Électrique -Allers Retours Films

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