モデル、女優として大活躍中の三吉彩花さんにインタビューをさせていただきました!『十二単衣を着た悪魔』では、『源氏物語』の世界で恐れられる存在、弘徽殿女御(こきでんのにょうご)を好演。キリッとした強い女性がとても似合っていましたが、インタビューのお話からは三吉さんの新たな一面がうかがえてホッコリしました。
<PROFILE>
三吉彩花(みよし あやか):弘徽殿女御(こきでんのにょうご) 役
1996年6月18日生まれ、埼玉県出身。2010年、ファッション誌“Seventeen”でミスセブンティーン2010に選ばれて以降、同誌のトップモデルとして人気を誇り、7年間専属モデルを務め、2017年に同誌を卒業した。現在は雑誌“25ans Wedding”のカバーガールを務めている。また女優としてテレビドラマ、映画で活躍中。近年の主なドラマ出演作には『まかない荘2』(2017)『警視庁 捜査一課長』(2020)などがある。映画は、『告白』(2010)、『グッモーエビアン!』(2012)、『旅立ちの島唄~十五の春~』(2013)に出演し、第35回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。その他、2018年に佐藤信介監督作『いぬやしき』、2019年には500人の応募者の中からヒロインに抜擢された『ダンスウィズミー』と話題作に出演。2020年には大ヒットホラー『犬鳴村』、ヒューマンドラマ『Daughters』など、主演作が次々と公開している。
※前半は合同インタビュー、後半は独占インタビューです。
どこに行っても生き延びられる術を身に付けたい
マイソン:
監督の演出で印象に残っていることはありますか?
三吉彩花さん:
とても大変だったので、すべて印象に残っています。現場に入る前にマンツーマンで、黒木瞳監督に滑舌の練習や真っ直ぐ音を出す練習などをしていただきました。以前にやられていた手法を教えていただいて、「こんなに難しいんですね」と言いながら、同じ台詞を50回も100回も2人でずっと繰り返し練習しました。伊藤くんは「監督とそんなにたくさん一緒の時間をセッションできて良いな」と言っていたらしいです(笑)。でも私は必死で大変でした。
記者A:
黒木監督の弘徽殿女御への思いを託されたわけですが、撮影期間中どっぷりキャラクターと一心同体になって、弘徽殿女御の魅力についてはどう思いますか?
三吉彩花さん:
本当に魅力的な女性で、特に今の時代このタイミングでこの役をやらせていただくのは、すごくご縁を感じました。女性に限らず、いろいろな人が言いたいことを我慢していくことのほうが増えていたり、言い方がちょっと理不尽だったり間違っていたりする風潮があるなかで、自分の家族のためにとか、もちろん自分のためにもですけど、芯があって間違ったことを言っていなくて、且つ自分の言いたいことをしっかりと言えるということに、すごく重みがあると思います。弘徽殿はそこがあって最初は怖いキャラクターだなと思うのですが、だんだん息子に対する愛情も見えてきて、怖いけど何か憎めないキャラクターになるのはすごく素敵だなと思いました。なので、とてもいろいろなことを犠牲にして立ち向かっていくカッコ良い女性だなって思います。
マイソン:
十二単衣は本当に着ていたのでしょうか?
三吉彩花さん:
本当に着ているのですが、縫い付けているので1回で着られます。フィッティングが1番大変でした。1枚ずつ全部重ねてすごく重かったので。
マイソン:
着るとやっぱりスイッチが入ったり、気分が変わりますか?
三吉彩花さん:
そうですね、現場で着るとすごく背筋が伸びる感じがしました。ただこの羽織り物も年齢を重ねていくに連れて、だんだん色が濃くなっていったり、刺繍の菊の柄とかが変わったりして、そういうところにすごく日本らしさが見えて、自分でも楽しみながら毎回着ていました。
マイソン:
髪もすごく長いですし、所作が難しかったり動きづらいということはありましたか?
三吉彩花さん:
下に赤いズボンを履いていて、袴ではなく足元で折れて後ろに長くなっているものなんです。それを引きずる形で歩くんですが、床の上でなくその生地の上を歩いているので、それがとても難しかったです。他の仕事で地方に行く時もそのズボンを持っていって、ずっとホテルで履いてササッと歩く練習をしていました。
マイソン:
すごい!結構体力を使っていますよね。普段から体づくりをされているんですか?
三吉彩花さん:
運動をしています。ジムに行ったり、食事に気を付けています。
マイソン:
今回それが特に役に立ったと思うことはありましたか?
三吉彩花さん:
ちゃんと体幹があって良かったなと思いました。立つ時の膝の使い方とか、姿勢が前に出ないようにとか、所作の細かいところがたくさんあって、軸がしっかりあったほうがスムーズにできていたので、しっかりトレーニングをしておいて良かったなって。
記者A:
所作の美しさとか、監督は三吉さんが演じる女御がすごく品があるとおっしゃられていました。三吉さんが思う品のある人はどんな人でしょうか?
三吉彩花さん:
いつでも冷静な人です。それはこの役をやっていて、言動だけじゃなく所作にも冷静さってすごく出るなと思いました。日常でも焦ったり、ワーってなっちゃうとすごく余裕がない感じに見えるので、一旦冷静になって考えて落ち着いて話す人のほうが、私は普段接していて品があるというか、しっかりコントロールできる人という印象を受けます。
記者A:
三吉さん自身そういう印象を受けますけどね。
三吉彩花さん:
本当ですか!?でもすごく気を付けています。でも家とかだとすごく焦ったりもしていますけど(笑)。
マイソン:
ちょっと話題が変わるのですが、本作で雷がタイムスリップしていましたが、もしタイムスリップするとしたら何をしたいですか?
三吉彩花さん:
絶対に聞かれると思っていた質問です(笑)!私はタイムスリップよりも“どこでもドア”が欲しいです。
マイソン:
どこでもドアでどこに行きたいですか?
三吉彩花さん:
無人島に行きたいです。『いきなり!黄金伝説。』みたいな生活をしてみたいです。楽しそうですよね!魚をモリで突いたりとか。
マイソン:
サバイバルをしたいんですね(笑)。
三吉彩花さん:
はい、ちょっと興味があります。たくましくなりたいなって。どこに行っても生き延びられる術を身に付けたいので。
マイソン:
じゃあ行くとしたら、試練が多いほうが良いですよね。
三吉彩花さん:
そうですね。
マイソン:
無人島に3つだけ持って行って良いよと言われたら、何を持って行きますか?
三吉彩花さん:
自分の包丁と、レトルトのお味噌汁と…。
マイソン:
結構食べ物系ですね(笑)!
三吉彩花さん:
そうですね(笑)。あとは寝袋!
マイソン:
包丁はいろいろ料理をしたいと。
三吉彩花さん:
はい。普段もそうなんですが、友達の家に行った時とか「ご飯作ってよ」と言われて、使い慣れていない包丁を使うのはとても怖いので、マイ包丁を持っていきたいです。
マイソン:
お料理は普段からよくされるんですか?
三吉彩花さん:
そうですね。ご飯はよく作ります。
マイソン:
じゃあ無人島だといろいろな自然の食材を使って料理ができそうですね。
三吉彩花さん:
そうですね、魚とかも捌いてみたいです。大きいのとか釣ってみたいです。
記者A:
意外ですね。東京23区からは出ないみたいなイメージが勝手にありましたけど。
三吉彩花さん:
とんでもございません。
記者A:
それはお仕事にも役立てようという理由もあってなのか、チャレンジ精神なんですか?
三吉彩花さん:
単純に無人島自体に興味があります。『いきなり!黄金伝説。』とか『ザ!鉄腕!DASH!!』の“DASH村”とかも観ていてすごく好きでした。自分達で収穫して料理を作ったりする番組が小さい頃からすごく好きで、将来は郊外に一軒家を建てて、畑が欲しいんですよね。広い畑で栽培をして自給自足生活をしたいです。
マイソン:
すごく自然派なんですね!
三吉彩花さん:
自分の作った野菜を孫に食べさせるおばあちゃんになりたいんです。自分のおばあちゃんの家から送られてきた野菜とかをインスタグラムに載せている方の投稿を見ていると、本当に美味しそうなんです。自分の家族から送られてくると愛情をより深く感じるというか、そういうのがすごく良いなと思って。私の実家にも畑があるので、そういうのをやりたいなって思います。
マイソン:
素敵ですね!
記者A:
すごく良い話ですね。
三吉彩花さん:
こういう一面をもっと広めていただきたいなって(笑)。お願いします!
マイソン:
ほっこりしました(笑)。
いち観客として号泣させられた女優とは…
マイソン:
モデルや俳優をやるために生まれてきたっていう感じがすごくするのですが…。
三吉彩花さん:
そんなことはないです(笑)。
マイソン:
もしこの職業に就いていなかったら、やりたい職業はありますか?
三吉彩花さん:
子どもが大好きなので、絶対に保育士です。
マイソン:
良いですね!さっきのお話の流れからすると料理家とかなのかと思ってました。
三吉彩花さん:
料理は最近、自分と向き合ってだんだん気付いてきたことで、子どもは、自分が小さい頃から年下の赤ちゃんとかがすごく好きなんです。
マイソン:
今回、お母さん役でもありましたが、子どもに愛着を持っている部分でやりやすかったところはありますか?
三吉彩花さん:
全くないですね。子どもとの距離感も少しあって、位によって立場がすごくはっきり分かれているので。もちろん自分の息子に対する愛情があるのでそういう眼差しを向けることはあっても、自分の子どもを天皇にするっていうことしか考えていなかったので(笑)。
マイソン:
たしかに(笑)。弘徽殿女御は強い女性ですけど、外に見せられない部分というか、強くないといけないみたいな部分があったと思うんです。強い女性のイメージとか、三吉さんが憧れる女性のイメージってありますか?
三吉彩花さん:
やっぱり負けない人かな。しっかり勇気がある人と諦めない人が、私の理想の強い女性ですかね。ついさっき雑誌で、古市憲寿さんが最近出された本から抜粋したワードが載った記事を読んだのですが、「同じ才能を持つ人が2人いたら、生き残るのは勇気があるほうに決まっている」というようなニュアンスのことが書いてあったんです。「本当にそう!」って思って、そういう自分に負けないこととか、怖いけど諦めないで戦ってみる姿勢って、日本でも特にそうですけど、海外とか画面を通して観ていてもわかるんですよね。自分の芝居でも過去の作品とかを観ていて「この時負けたんだな」、「この時負けずに頑張ったんだな」とか、他の俳優さんのお芝居を観ていてもそれはとても感じるので、やっぱり自分も勇気を持つ、負けない女性になりたいなって思います。
マイソン:
映画とかを観ていてもそういうところって目に付きますか?
三吉彩花さん:
すごく目に付きますね。特に最近韓国ドラマとかが、私も好きでいろいろ観ていて、「この1つの作品の中でこんなに差があるんだ」というくらい、全然違うんですよね。もちろん俳優としてのキャリアやタイミング、役との相性とか、いろいろあると思うし、私はいち視聴者として観ているだけなんですが、「この人、主演じゃないけどグワッとくるな」など、そういうのはすごく感じます。
マイソン:
では最後の質問で、これまでいち観客として観た映画で大きな影響を受けた作品か、もしくは監督や俳優さんなど影響を受けた人物はいらっしゃいますか?
三吉彩花さん:
私はマーゴット・ロビーがすごく好きなんです。昔からいろいろな作品に出ていて、「こういうのも出演しているんだ!」というのもあるんですけど、『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』という実在のフィギュアスケーターを演じた作品をつい最近観たんです。他にもエマ・ストーンやクリステン・スチュワートなど強い女性を演じる女優さんが好きで、マーゴット・ロビーの作品も一通り観ているんですが、この作品は別格にすごかったんです。フィギュアスケートのシーンは、ここまでは自分でやって、本当に難しいところはスタントの方にやってもらうとか撮影方法でカバーしている部分もあると思いますが、本当にどこまでどうなっているんだろうって思いました。相当練習していたと思うし、リンクのところに足を上げるシーンとかも実際の映像とすごくちゃんとリンクさせていて、それを観て「やっぱり1番好きな女優さんかも」と思いました。とても感動的で泣けるようなシーンは少なかったと思うんですが、私は泣いてしまって、パンチをくらって1日ズーンとなった作品でした。
マイソン:
作品も良かったけど、どちらかというとマーゴット・ロビーの演技にいろいろ感じるものがあったんですね。
三吉彩花さん:
本当に良かったです。
マイソン:
ありがとうございました!
2020年9月24日取材 PHOTO&TEXT by Myson
『十二単衣を着た悪魔』
2020年11月6日より全国公開
監督:黒木瞳
原作:内館牧子
出演:伊藤健太郎 三吉彩花 伊藤沙莉 田中偉登 沖門和玖 MIO YAE 手塚真生/細田佳央太 LiLiCo 村井良大 兼近大樹(EXIT) 戸田菜穂 ラサール石井 伊勢谷友介/山村紅葉/笹野高史
配給:キノフィルムズ
就職活動がなかなかうまくいかず、フリーターを続けている雷(らい)は、『源氏物語』にまつわるイベント設営のバイトの帰り、激しい雷雨に見舞われる。その時、不思議な光に吸い込まれて気を失った雷は、目を覚ますと『源氏物語』の世界にタイムスリップしていた。自分の事情を話しても全く通じない状況に陥った雷は、口から出まかせで陰陽師“雷鳴”を名乗り…。
© 2019「十二単衣を着た悪魔」フィルムパートナー