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『ウィッシュ』プロデューサー:ピーター・デル・ヴェッコさん、フアン・パブロ・レイジェスさんインタビュー

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映画『ウィッシュ』プロデューサー:ピーター・デル・ヴェッコさん、フアン・パブロ・レイジェスさんインタビュー

ディズニー100周年記念作品『ウィッシュ』のプロデューサー、ピーター・デル・ヴェッコさん、フアン・パブロ・レイジェスさんが来日。本作や『アナと雪の女王』など作品を通してみたディズニー・キャラクターの変化についてや、最近話題が絶えないAIに対する考え方など、質問をぶつけてみました。

<PROFILE>
ピーター・デル・ヴェッコ(写真左):プロデューサー
世界中に社会現象を巻き起こした『アナと雪の女王』、続編『アナと雪の女王2』を手掛けた。その他のプロデュース作品には『ラーヤと龍の王国』『プリンセスと魔法のキス』などがある。
フアン・パブロ・レイジェス(写真右):プロデューサー
大人気シリーズの2作目『アナと雪の女王2』や、第94回アカデミー賞®長編アニメーション作品賞に輝いた『ミラベルと魔法だらけの家』を手掛けた。

社会現象を巻き起こした『アナと雪の女王』で気づいた“ストーリーに必要な要素”

映画『ウィッシュ』

マイソン:
本作はディズニー100周年記念となる作品ということで、いつもよりこだわった点はありますか?逆に重責もあったと思うのですが、大変だった部分はありますか?

フアン・パブロ・レイジェスさん:
スタジオとしての重要性を考える前に、私自身もディズニー・アニメーションファンなわけです。ですから、ディズニーファンの皆さんにラブレターを書くような作品にしたいと思いました。同時にもちろん責任もあります。ストーリーに関しては、夢、スター(願い星)が人々のもとに下りてくるという設定があり、キャラクターもストーリーも曲も全部オリジナルにしたいと思いました。だから、その実現に向けてエネルギー、情熱を注入しました。

マイソン:
これまでのディズニー作品に一貫して描かれてきたメッセージが本作に凝縮されていると感じました。100年も続くなかで大切なことがしっかりと受け継がれてきた背景には、ディズニーで働く方達の間にどんな文化があるのでしょうか?

映画『ウィッシュ』プロデューサー:フアン・パブロ・レイジェスさんインタビュー
フアン・パブロ・レイジェスさん

フアン・パブロ・レイジェスさん:
本作はディズニーファンの皆さんに対するラブレターなのですが、作品を構想する上で、ディズニー作品がファンの方々にとってどのような意味を持っているのかと考えました。それはやっぱり、ファンの皆さんに希望と楽しさを提供することだと思うんです。ただ、押し付けではなく、クリエイティブな方法を通して、さりげなく愛を伝えるということだと思います。

ピーター・デル・ヴェッコさん:
社風とか社内の文化というよりは、その種、核となるものがあるんです。というのも、作品開発って、最初は本当に少人数で行われるんです。必要に応じて、アーティストやスタッフをどんどん起用して大きくなっていきます。ですから、リソースとなるものはディズニーの中にあるけれども、外にどんどん大きくなっていくので、核となる人達がそれを共有しているということだと思います。

映画『ウィッシュ』

マイソン:
なるほど。本作も然り、ディズニー・ヒロインのイメージが現代的な設定にだんだん変わってきているように感じます。今回のキャラクターで新しい価値観が加わった点があれば教えてください。

フアン・パブロ・レイジェスさん:
今回の主人公アーシャのコンセプトは、「星に願いを」であり、それに付随した行動をとるにしても、アーシャは一般の私達皆を象徴し、代弁するような存在です。彼女の在り方は、自分中心ではなく、利他的で、自分のコミュニティを大切にしたいという、多くの人の代弁者なわけです。これはどういったところからきているかというと、脚本を執筆したジェニファー・リーとアリソン・ムーアのかなり個人的な思いが反映されていると感じます。

映画『ウィッシュ』

マイソン:
『アナと雪の女王』は昨今のディズニー作品の中でも世界中で社会現象を巻き起こす大ヒットとなり、大きな転換期となったのではないかと感じます。同作を境目に感じた変化があれば教えてください。

ピーター・デル・ヴェッコさん:
私が『アナと雪の女王』のヒットの後に感じたことは、共感できる、信憑性のある話が必要だということです。その決断に同意をしなくても理解はできるということ。本作のヴィラン、マグニフィコ王にも同じことがいえます。彼はもともと人のために良いことをしていると信じていたわけですよね。その彼が圧力を受けてどう変わっていったかを、私達は観ることができます。アーシャもそもそもは同じところから始まっているけれど、同じ状況でもマグニフィコ王とは両極端な決断をします。彼女は私達のヒロインであり、フアンが言ったように利他的に動く決断をするわけです。

ディズニーでのAIの位置づけは?

映画『ウィッシュ』

マイソン:
本作では2Dの水彩画と3D CGがコラボレーションする世界観も美しいと話題です。ディズニー・アニメーションでは、これまでも最先端技術を取り入れてこられたと思いますが、昨今では、AIがクリエイティブな分野にも浸透してきました。メリットとデメリットなど、お2人はAIの存在をどう捉えていらっしゃいますか?

フアン・パブロ・レイジェスさん:
AIに関していうならば、私達ディズニーはアーティスト・ファーストですから、アーティストの目線が第一にあります。ストーリー、ビジュアルを作る過程で、AIはツールだと認識しています。AI自身、長年かけてどんどん進化していますが、あくまで私達が伝えたいことに効果的に使うツールです。

ピーター・デル・ヴェッコさん:
私自身もその進化を眺めてきて、何をもたらすかを考えるなかで、やはり大事なのはクリエイティブなツールとして、インスピレーションを助けるために、いろいろと提供することは必要だと思います。でも、アーティスト・ファーストというところは全くブレません。

マイソン:
使う側の問題と考えてらっしゃるんですかね。

映画『ウィッシュ』プロデューサー:ピーター・デル・ヴェッコさんインタビュー
ピーター・デル・ヴェッコさん

ピーター・デル・ヴェッコさん:
ウォルト・ディズニー自身も非常にクリエイティブなテクノロジーに関心があって、取り入れてきました。今、AIというと非常に範囲が広いので、こうだという定義はなかなか難しい部分はあります。ただ、アーティストにとって役立つものであれば、アーティストが仕事をずっとしていける環境を提供する上で、また表現の上で助かるものであれば、それを役立てることもできるかもしれないと考えています。

マイソン:
では最後の質問です。1作品に決めかねるとは思うのですが(笑)、お2人が一番好きなディズニー作品と理由を教えてください。

フアン・パブロ・レイジェスさん:
『美女と野獣』です。初めて私が映画館で観た作品です。そして、『眠れる森の美女』と『白雪姫』。この2作のスタイルは、ディズニー映画において非常に象徴的なものだと思います。本作『ウィッシュ』でもそれを讃えて、インスピレーションを受けています。水彩画のタッチは特にそうですよね。アーティストの力とテクノロジーがまさに融合した作品だと思います。

ピーター・デル・ヴェッコさん:
こういったキャラクターがたくさんいて、1作品を選ぶのはもちろん難しいですが、初めて観た作品『バンビ』を挙げます。一番覚えているのは、子どもながらに非常にクリエイティブな世界に入り込めたということです。子どもとしてもすごく創造力を広げることができました。その経験が助けになって、今いるクリエイティブな世界に進む素地が作られたと思います。

マイソン:
ありがとうございました!

2023年12月取材 PHOTO&TEXT by Myson

映画『ウィッシュ』

『ウィッシュ』
2023年12月15日より全国公開
監督:クリス・バック/ファウン・ヴィーラスンソーン
製作:ピーター・デル・ヴェッコ/フアン・パブロ・レイジェス
声の出演:生田絵梨花(アーシャ役)/福山雅治(マグニフィコ王役)/山寺宏一(バレンティノ役)/檀れい(アマヤ王妃役)/鹿賀丈史(サビーノ役)
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

魔法の力で国民の願いを叶えるというマグニフィコ王が治めるロサス王国では、一大イベントが開かれようとしていた。アーシャは、100歳になる祖父の願いが今度こそ叶えられるかもしれないとワクワクしていたが…。

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