REVIEW

フロントライン【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『フロントライン』小栗旬/松坂桃李

REVIEW

2020年1月20日に横浜港を出港した豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号では、その後、香港で下船した乗客が新型コロナウイルス感染症に罹患していることがわかりました。そして、同年2月3日に横浜港に入港した後、約1ヶ月間、クルーや乗客は皆、船内に待機せざるを得ませんでした。

映画『フロントライン』小栗旬

本作は、当時実際には何が起きていたのかを、増本淳プロデューサーが書きためた300ページを超える取材メモを基に映画化。なお、本作では実際の人物や出来事を基に描かれているものの、「物語の構成上、時間経過の組み換えや、数人の行動を一人の登場人物に集約するなどの脚色、および仮名の使用を行ってい」るとのことです(映画公式資料)。増本プロデューサーは、これまで『救命病棟24時』(2005)、『Dr.コトー診療所2006』(2006)、『はだしのゲン』(2007)、“コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命”シリーズなどをプロデュースし、本作では企画、脚本も務めています。

映画『フロントライン』桜井ユキ/光石研

当時、ダイヤモンド・プリンセス号についてはニュースで多く報道されていました。増本プロデューサーは、製作中の別の作品の撮影を再開するために助言を求めた感染対策の専門医が偶然にもクルーズ船に乗船した医師で、実際の話を聞き、「当時の報道とは全く違う話だったので驚きました」と語っています。その時点で本作の企画があったわけではなかったものの、実際に何が起きたのかを知りたいという思いで取材を重ねていったとのことです(映画公式資料)。

映画『フロントライン』窪塚洋介

本作の主な登場人物は、「災害医療を専門とする医療ボランティア的組織」DMAT(Disaster Medical Assistance Team:略称ディーマット)の医師、結城(小栗旬)、仙道(窪塚洋介)、真田(池松壮亮)と、医政局医事課の役人、立松(松坂桃李)です。何が起きているのかわからず、まだ“災害”レベルになるとは予測できなかった状況で、日本では対応にあたる組織が見つからず、DMATが依頼を断れない状況で、困難に立ち向かってくれた様子が描かれています。

映画『フロントライン』池松壮亮

当時の乗客乗員は56ヵ国、3711名、最終的な感染者は712名。この規模をもともと限られた人数の医師が対応していたなか、医師自身も感染したり、心ない差別の目が向けられたことで協力したくても協力が難しくなったり、本当に厳しい状況で戦ってくれていたのだと伝わってきます。感染者を守ることはもちろんのこと、そこで働く医師、看護師、その家族は誰が守ってくれるのか。そんな悲痛な叫びが胸を打つ内容となっています。小栗旬、松坂桃李、池松壮亮、窪塚洋介と、実力派俳優が揃っている点で見応えも抜群です。

映画『フロントライン』松坂桃李

もう二度と遭いたくない事態ではあるものの、本作を観ると、大切なことにたくさん気づかされた出来事だったと改めて感じます。私達が知らなかった物語をぜひご覧ください。

デート向き映画判定

映画『フロントライン』池松壮亮

最初から最後まで緊張感が続くので、上映中はスクリーンに釘付けになり、デート感覚がない状態で観ることになるかもしれません。ただ、医師達の家族の話題も出てくるので、困難な事態となった時に、パートナーの理解がとても重要であると実感する機会にできそうです。当時を思い出すと、お互いに今の幸福に気づく機会にもできるでしょう。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『フロントライン』美村里江

皆さんの年齢からすると、当時はまだ幼かった方もいるでしょう。学校に通えず友達に会えなかったり、貴重な子ども時代に大変な事態に遭った皆さんだからこそ、本作を観るとさまざまな思いが蘇るのではないでしょうか。当たり前のことが当たり前でなくなった未曾有の事態で、社会はどんな影響を受けるのか。人間の素晴らしさと愚かさの両面を観られる作品なので、皆さんの価値観にも問いかけるところがあるでしょう。

映画『フロントライン』小栗旬/松坂桃李/池松壮亮/窪塚洋介

『フロントライン』
2025年6月13日より全国公開
ワーナー・ブラザース映画
公式サイト

ムビチケ購入はこちら
映画館での鑑賞にU-NEXTポイントが使えます!無料トライアル期間に使えるポイントも

© 2025「フロントライン」製作委員会

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2025年6月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画学ゼミ2025年11月募集用 【映画学ゼミ第2回】「性格特性と映画の好みの関連」「伏線回収と解釈の実践1」参加者募集!

【映画学ゼミ】第2回概要映画学ゼミ第2回もNとSでテーマを変えて実施します。どちらかのみ参…

映画『女性の休日』 女性の休日【レビュー】

ちょうど今から50年前の今日、1975年10月24日に…

映画『爆弾』山田裕貴/佐藤二朗 爆弾【レビュー】

呉勝浩による同名ベストセラー小説を原作として映画化された本作は、知らぬ間に…

海外ドラマ『エイリアン:アース』海外ドラマ『エイリアン:アース』 シドニー・チャンドラー【ギャラリー/出演作一覧】

1996年2月13日生まれ。アメリカ出身。

映画『ハード・トゥルース 母の日に願うこと』マリアンヌ・ジャン=バプティスト/ミシェル・オースティン ハード・トゥルース 母の日に願うこと【レビュー】

現代のロンドンを繰り広げられる本作は、対照的な性格を持つ姉妹のそれぞれの日常を…

映画『ミーツ・ザ・ワールド』杉咲花/南琴奈/板垣李光人 ミーツ・ザ・ワールド【レビュー】

この町で出会った、アニメにハマっている腐女子の由嘉里(杉咲花)、キャバ嬢のライ(南琴奈)、既婚の No.1 ホスト、アサヒ(板垣李光人)は、それぞれどこか孤独感、空虚感を…

韓国ドラマ『TWELVE トゥエルブ』パク・ヒョンシク パク・ヒョンシク【ギャラリー/出演作一覧】

1991年11月16日生まれ。韓国出身。

『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』豆原一成さん、八木莉可子さんインタビュー 『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』豆原一成さん、八木莉可子さんインタビュー

今回は『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』で恋人役として共演された豆原一成さんと八木莉可子さんにインタビューをさせていただきました。

ポッドキャスト:トーキョー女子映画部チャンネルアイキャッチ202509 ポッドキャスト【トーキョー女子映画部チャンネル】お悩み相談「なんとなく孤独、これでいいの?」

今回も、正式部員の皆さんからいただいたお悩み相談を2件取り上げました。最後に、2025年10月劇場公開作品の中で特にオススメの3作品を紹介しています。

映画『ローズ家~崖っぷちの夫婦~』オリヴィア・コールマン/ベネディクト・カンバーバッチ ローズ家~崖っぷちの夫婦~【レビュー】

昔、同じような設定の映画があった気がすると思っていたら、やはり元ネタは…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年11月募集用 【映画学ゼミ第2回】「性格特性と映画の好みの関連」「伏線回収と解釈の実践1」参加者募集!

【映画学ゼミ】第2回概要映画学ゼミ第2回もNとSでテーマを変えて実施します。どちらかのみ参…

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

AXA生命保険お金のセミナー20251106ファイナンシャルプランナーversion ファイナンシャルプランナーから学ぶ【明るい未来のための将来設計とお金の基本講座】(スイーツとお飲み物付)女性限定ご招待!

本セミナーでは、「NISA・iDeCoなどの資産形成」「子どもの教育資金」「将来受け取る年金」「住宅購入・住宅ローン」「保険」など、将来に役立つお金の知識や情報、仕組みやルールについて、ファイナンシャルプランナーの先生が初めての方でもわかりやすく優しく教えてくれます。

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年11月募集用
  2. 映画『おーい、応為』長澤まさみ
  3. AXA生命保険お金のセミナー20251106ファイナンシャルプランナーversion

REVIEW

  1. 映画『女性の休日』
  2. 映画『爆弾』山田裕貴/佐藤二朗
  3. 映画『ハード・トゥルース 母の日に願うこと』マリアンヌ・ジャン=バプティスト/ミシェル・オースティン
  4. 映画『ミーツ・ザ・ワールド』杉咲花/南琴奈/板垣李光人
  5. 映画『ローズ家~崖っぷちの夫婦~』オリヴィア・コールマン/ベネディクト・カンバーバッチ

PRESENT

  1. 映画『爆弾』山田裕貴/佐藤二朗
  2. 映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル
  3. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP