特集

映画に隠された恋愛哲学とヒント集72:浮気の根源はどこにある?

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ほつれる』門脇麦

ネタバレ注意!

今回は、冷え切った夫婦関係から目を逸らし、ダブル不倫をする主人公の日常を描いた『ほつれる』を題材に、恋愛のヒントを探ります。

相手の問題よりも自分の問題

まず冒頭で、主人公の綿子(門脇麦)と夫の文則(田村健太郎)の異様な空気感に気付くでしょう。そして、次に綿子と恋人の木村(染谷将太)の仲睦まじい姿を観て、彼女が木村との関係があるからこそ、夫婦関係を保っていられているとわかります。でも、ある日、木村は綿子の目の前で事故死してしまいます。ここまでは、映画公式サイトのあらすじに書かれています。

綿子は恋人を突然失い、夫婦関係に向き合わざるをえなくなります。また、夫の文則も妻の異変に気付き、関係を修復しようと試みます。一見、文則は綿子に歩み寄っているようにも見えながら、かなり自己中心的で、2人ともとても事務的です。この2人はいつからこうなのか想像を膨らませると、恐らく結婚して変わったのではないかと思います。

映画『ほつれる』門脇麦/田中健太郎

この2人は臭いものには蓋をするタイプです。2人とも夫婦関係以外に逃げ場を持っています。終盤で、文則は元妻とも結婚していた頃は同じ状況だったことがうかがえます。恋愛が生活の一部になった途端に、うまく対処ができなくなるのではないでしょうか。要するに2人とも恋愛のいいとこ取りをするタイプ、相手の良いところしか見たくないタイプです。だから、恋人から夫婦にはなれないし、何度結婚しても同じことを繰り返すはずです。

お互いの態度に問題があるように見えながら、根本的には2人とも自分自身の問題でしょう。もし、綿子が木村と再婚したとしても、また外に恋人を作るのだと思います。

映画『ほつれる』門脇麦

こういった状況は結婚すると避けられないかというと、必ずしもそうではないと思います。恋愛関係にしかトキメキを見出せない人こそ、夫婦関係への思い込みが激しいのではないでしょうか。結婚して安定した関係になると、お互いの気持ちをわざわざ確かめるようなことはなくなってきます。それに耐えられないとしたら、それは自分に自信がないからなのかもしれません。常に相手の気持ちを確かめたいし、自分の気持ちも確かめたい。もしかしたら、そんなシンプルなことが結婚生活から逃げたくなる原因なのかもしれません。

映画『ほつれる』門脇麦/染谷将太

それならば、やっぱり日常での何らかの愛情表現の積み重ねが大事ですね。でも、それがうまくできないから皆苦労するのでしょうね(苦笑)。浮気相手の役割のほうが単純でわかりやすいから、お互いの存在意義が把握しやすいし、愛情表現を遠慮なくできます。一方、恋愛関係から始まった夫婦関係を途中で生活のためだけと割り切るのは切ない。でも、気付いた頃には頑張る気力が失せていたり、気恥ずかしくて愛情表現ができなくなっているという状況なのではないでしょうか。

このループから抜け出すには、夫婦の現実に目を向けるだけではなく、そのまた奥にある自分の本当の姿に気付かなければいけないように思います。

映画『ほつれる』門脇麦/田村健太郎/染谷将太/黒木華/古舘寛治

『ほつれる』
2023年9月8日より全国公開
ビターズ・エンド
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

©2023「ほつれる」製作委員会&COMME DES CINÉMAS

『テイク・ディス・ワルツ』
R-15+
REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定 女にとってのセックス、男にとってのセックス
Amazonプライムビデオで観る 

TEXT by Myson

本ページの情報は2023年9月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

Netflix映画『10DANCE』竹内涼真/町田啓太 10DANCE【レビュー】

井上佐藤による漫画「10DANCE」を原作とする本作は、鈴木信也(竹内涼真)と杉木信也(町田啓太)という1文字違いの名を持つ正反対の2人の天才ダンサーが主人公…

Netflix映画『ジェイ・ケリー』ジョージ・クルーニー/アダム・サンドラー ジェイ・ケリー【レビュー】

ジョージ・クルーニー、アダム・サンドラー、ローラ・ダーン、ビリー・クラダップ、ライリー・キーオ、ジム・ブロードベント、パトリック・ウィルソン、グレタ・ガーウィグ、エミリー・モーティマー、アルバ・ロルバケル、アイラ・フィッシャーなど、これでもかといわんばかりの豪華キャストが…

映画『ロストランズ 闇を狩る者』ミラ・ジョヴォヴィッチ ロストランズ 闇を狩る者【レビュー】

“バイオハザード”シリーズでお馴染みの2人、ミラ・ジョヴォヴィッチとポール・W・S・アンダーソン夫妻が再びタッグを組み、“ゲーム・オブ・スローンズ”の原作者、ジョージ・R・R・マーティンの短編小説を7年の歳月をかけて映画化…

映画『ウィキッド ふたりの魔女』シンシア・エリヴォ/アリアナ・グランデ トーキョー女子映画部が選ぶ 2025年ベスト10&イイ俳優MVP

2025年も毎年恒例の企画として、トーキョー女子映画部の編集部マイソンとシャミが、個人的なベスト10と、イイ俳優MVPを選んでご紹介します。

人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集 人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集!

ネットの普及によりオンラインで大抵のことができ、AIが人間の代役を担う社会になったからこそ、逆に人間らしさ、人間として生きる醍醐味とは何かを映画学の観点から一緒に探ってみませんか?

映画『スワイプ:マッチングの法則』リリー・ジェームズ スワイプ:マッチングの法則【レビュー】

リリー・ジェームズが主演とプロデューサーを兼任する本作は…

映画『サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行』アルテュス/アルノー・トゥパンス/ルドヴィク・ブール サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行【レビュー】

パラリンピックやハンディキャップ・インターナショナルのアンバサダーを務めるアルテュスが…

映画『消滅世界』蒔田彩珠/眞島秀和 眞島秀和【ギャラリー/出演作一覧】

1976年11月13日生まれ、山形県出身。

映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン Fox Hunt フォックス・ハント【レビュー】

“狐狩り隊(=フォックス・ハント)”と呼ばれる経済犯罪捜査のエリートチームが、国を跨いだ巨額の金融詐欺事件の真犯人を追い詰めるスリリングな攻防戦が描かれた本作は…

Netflix映画『フランケンシュタイン』オスカー・アイザック フランケンシュタイン【レビュー】

メアリー・シェリー著「フランケンシュタイン」はこれまで何度も映像化されてきました。そして、遂にギレルモ・デル・トロ監督が映画化したということで…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『ウィキッド ふたりの魔女』シンシア・エリヴォ/アリアナ・グランデ トーキョー女子映画部が選ぶ 2025年ベスト10&イイ俳優MVP

2025年も毎年恒例の企画として、トーキョー女子映画部の編集部マイソンとシャミが、個人的なベスト10と、イイ俳優MVPを選んでご紹介します。

人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集 人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集!

ネットの普及によりオンラインで大抵のことができ、AIが人間の代役を担う社会になったからこそ、逆に人間らしさ、人間として生きる醍醐味とは何かを映画学の観点から一緒に探ってみませんか?

映画『チャップリン』チャーリー・チャップリン『キッド』の一場面 映画好きが選んだチャーリー・チャップリン人気作品ランキング

俳優および監督など作り手として、『キッド』『街の灯』『独裁者』『ライムライト』などの名作の数々を生み出したチャーリー・チャップリン(チャールズ・チャップリン)。今回は、チャーリー・チャップリン監督作(短編映画を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

学び・メンタルヘルス

  1. 人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集
  2. 映画『殺し屋のプロット』マイケル・キートン
  3. 映画学ゼミ2025年12月募集用

REVIEW

  1. Netflix映画『10DANCE』竹内涼真/町田啓太
  2. Netflix映画『ジェイ・ケリー』ジョージ・クルーニー/アダム・サンドラー
  3. 映画『ロストランズ 闇を狩る者』ミラ・ジョヴォヴィッチ
  4. 映画『スワイプ:マッチングの法則』リリー・ジェームズ
  5. 映画『サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行』アルテュス/アルノー・トゥパンス/ルドヴィク・ブール

PRESENT

  1. 映画『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』チャージングパッド
  2. 映画『ただ、やるべきことを』チャン・ソンボム/ソ・ソッキュ
  3. 映画『グッドワン』リリー・コリアス
PAGE TOP