心理学

心理学から観る映画16:グループ行動からみる心の成長

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『グッド・ボーイズ』ジェイコブ・トレンブレイ/ブレイディ・ヌーン/キース・L・ウィリアムズ

新型コロナウィルス感染症の影響で家庭学習がメインの日々が続いていたなか、最近ようやく通学が解禁となり、徐々に通常登校に戻している学校も出てきたようです。学校に行けないことが学業に影響することはもちろんですが、友達との接触もないわけで、そのことも子ども達の心理的発達に影響を及ぼします。そこで今回は、仲間関係の変化と成長について取り上げます。

付き合う人が変化して当たり前

人は生まれてから、親、兄弟姉妹、祖母などの家族、同じ保育所や幼稚園の友達…とだんだん人間関係を広げていきます。自身の過去を振り返ると、子どもの頃は、同じクラスで席が近かったとか、同じ幼稚園に通っていたなどの理由で、自然に友達になっていたことが多かったように思います。でも、なぜ仲の良い友達と同じ学校に上がっても、一緒にいる友達が変わるのでしょうか。

もちろんクラスが別々になったり、部活で忙しい、習い事で忙しいなど、生活パターンの違いから、一緒に過ごす相手が変わってくることもあるでしょう。でもそれ以外にも、人の発達が、属する集団の変化に影響を及ぼしているのです。以下に、年齢層と共に変化するグループについてご紹介します。

■ギャング・グループ:小学生(児童期後半)にみられる仲間関係。親から自立しようとすることで生じる不安を乗り越えるために仲間を必要とし始める時期に現れる。同一行動による一体感が重んじられ、同じ遊びを一緒にするものが仲間であると考えられる。男児に特徴的。
■チャム・グループ:中学生(思春期前半)にみられる仲間関係。共通の興味や関心を通じて繋がっている仲良しグループで、互いの共通点や類似点を言葉で確かめ合う。女子に特徴的。
■ピア・グループ:高校生(思春期後半)にみられる仲間関係。互いの価値観や理想、将来の生き方についての相違を認め合い、違いを乗り越えたところで、自立した個人として互いを尊重し会う仲間関係。
(下山ほか 2017)

映画『グッド・ボーイズ』ジェイコブ・トレンブレイ/ブレイディ・ヌーン/キース・L・ウィリアムズ

映画『グッド・ボーイズ』の主人公3人組はまさにギャング・グループ。同じ遊びを好み、グループ名も付けていて結束が堅く、いつも3人で連んでいます。でも、小学校6年生になった彼等は、恋に芽生えたり、家族の問題に悩んだり、自分を変えたいと思ったり、個々に気持ちの上で成長していくことで、ずっと3人で連むことに自然に限界を感じるようになります。『グッド・ボーイズ』は、エッチな話題に熱くなっている小学生男子の様子をおもしろおかしく描いていると同時に、違う角度からも彼等の成長をとても上手く表現している作品と言えます。

違ったタイプのギャング・グループの例でいうと、『タロウのバカ』があります。この作品に登場する、学校に通っていないタロウ(年齢は中学生?)と、高校生のエージ、スギオの3人組は年齢的には思春期になりますが、特性からして、ギャング・グループで、それぞれに抱える問題から逃避場所のような機能を果たしているように見えます。思春期には特に、家庭に居場所がない場合、仲間が非行に走る要因になりえます。『タロウのバカ』の3人組は、お互いに支えになっている部分もありますが、依存的な関係でもあり、健全とは言えません。

映画『タロウのバカ』YOSHI/菅田将暉/仲野太賀

そして、主人公の女子高生が、恋をきっかけに成長していく物語『アオハライド』にも、個人の成長に伴って、付き合う相手が変わる様子がわかりやすく描かれています。物語は、恋よりも友情に重きを置くという主人公の独白から始まりますが、主人公は気になる男子から、連んでいる友達についてグサッとくる一言を言われます。それを機に表面的な関係しか築けていなかったことを実感した主人公は、自分を変える努力をし始め、その流れで自然に付き合う友達も変わっていき、チャム・グループからピア・グループに属する変化が観られます。

自分が真っ只中にいた時はもちろん前述のようなことは意識していませんでしたが、今思うと確かにこういった変遷を辿ってきていたなと思います。仲が良い友達はグループが変わってもずっと良い関係が続いていますが、たしかにグループとしては何で強く結びついていたかはそれぞれ違ったように思います。

ただ、下山ほか(2009)によると、現代では社会変化のなかでギャング・グループが消失、チャム・グループが児童期〜青年期全般へと肥大化し、希薄化しているようです。そして、希薄化した集団では、自分達だけでは集団としての凝集性を維持できず、いじめの対象が集団を維持するためのスケープゴートになっていると考えられています。

こういった風景は子ども達に限らず、大人社会にもあります。特に女子だけのグループでは、職場やママ友のグループなどで、チャム・グループの悪しき部分だけが出ているケースもあるのではないでしょうか。お互いを尊重できる者同士なら、グループに入りたい時は入れば良いし、別の人といたい、1人でいたい時は1人でいさせてくれるはずです。逆に言うと、大人になってもギャング・グループ的な付き合いがあっても良いし、どれが良いというわけではないとは思います。それが健全に機能しているのであれば、グループに属することはメンタルヘルスに良い影響を及ぼすと思います。

あなたの身の回りはどうでしょうか。「なんだかこのグループにいてもしっくりこないな」と思っている人は、グループを維持しているものや価値観がずれているのかも知れません。無理に合わせなくても、自分らしくいられて心地よい仲間が見つかると良いですね。

<参考・引用文献>
下山晴彦ほか(2009)「やわらかアカデミズム・<わかる>シリーズ よくわかる臨床心理学[改定新版]」ミネルヴァ書房
無藤隆・若本純子・小保方晶子(2014)「心理学の世界 基礎編5 発達心理学 人の生涯を展望する」

映画『グッド・ボーイズ』ジェイコブ・トレンブレイ/ブレイディ・ヌーン/キース・L・ウィリアムズ

『グッド・ボーイズ』
2020年6月12日より全国公開
PG-12

REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定

友情が本物なら、たとえバラバラにいて、別々の友達と一緒にいることが多くなっても、絆は残ります。彼等を観ていると、とても健全に成長していてほっこりします。

©Universal Pictures

『タロウのバカ』
Amazonプライムビデオにて配信中(レンタル、セルもあり)
ブルーレイ&DVDレンタル・発売中
R-15+

REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定

戸籍もなく、学校に一度も通っていないタロウに家はあるのか、親はいるのか…。非行に走るのは良くないとはいえ、連む仲間がいるだけでも彼にとっては救いなのかも知れません。

タロウのバカ

© 2019「タロウのバカ」製作委員会

『アオハライド』
Amazonプライムビデオにて配信中(レンタル、セルもあり)
ブルーレイ&DVDレンタル・発売中

REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定

いろいろなキャラクターが登場するなか、最初は1人で過ごしているキャラクターもいます。でも無理に連む必要はなくて、本当の友達が見つかった時に一緒にいたければいれば良いのだというお手本も見せてくれます。

アオハライド

TEXT by Myson(認定心理士)

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『ザ・ハント』ベティ・ギルピン ザ・ハント

本作は、富裕層が娯楽として人間狩りを楽しむという…

Netflix映画『シカゴ7裁判』アレックス・シャープ アレックス・シャープ

1989年2月2日イギリス、ロンドン生まれ。2014年にジュリアード音楽院を卒業し…

映画『ウルフウォーカー』スペシャル対談、細田守監督/トム・ムーア監督/ロス・スチュワート監督 『ウルフウォーカー』のトム・ムーア&ロス・スチュアート監督と細田守監督が日本とアイルランドのアニメーション制作手法の違いを語る!スペシャル対談

映画『ウルフウォーカー』の公開を記念し、【東京アニメアワードフェスティバル2021】のプレイベントとして、本作の監督とアニメーション映画監督細田守とのスペシャル対談が行われました。それぞれの制作手法の違いや、お互いの作品について熱く語り合っています。

映画『ヤウンペを探せ!』池内博之/宮川大輔/松尾諭/池田鉄洋/蓮佛美沙子 『ヤウンペを探せ!』2組4名様 ムビチケプレゼント

映画『ヤウンペを探せ!』2組4名様 ムビチケプレゼント

映画『パピチャ 未来へのランウェイ』リナ・クードリ パピチャ 未来へのランウェイ

“暗黒の10年”と呼ばれる1991年に始まった内戦下のアルジェリアを舞台に、ファッションデザイナーを夢見る少女の視点で…

映画『罪の声』小栗旬/星野源 罪の声

塩田武士の「罪の声」を映画化した本作はフィクションですが、モデルにされている事件は昭和史最大の未解決事件で…

映画『とんかつDJアゲ太郎』北村匠海/山本舞香/伊藤健太郎 とんかつDJアゲ太郎

原作コミックを知らないと、「とんかつとDJってどういうこと?」って思いますよね。私もそうでした。でも設定上…

映画『ストレイ・ドッグ』トビー・ケベル トビー・ケベル

1982年7月9日イギリス、ヨークシャー生まれ。2004年に“Dead Man’s Shoes(原題)”で注目を集め…

映画『大統領の料理人』カトリーヌ・フロ 映画で“食”について考えてみよう5:誰かと一緒に食事をすることで、栄養の吸収率がUP!?

皆さんは食事をする理由について考えたことがありますか?私達が食事をすることの1番の理由は、生きていくために欠かすことのできないエネルギーと栄養を補給するためですが、実はそれだけではない大切な理由があります。

映画『キーパー ある兵士の奇跡』デヴィッド・クロス/フレイア・メーバー キーパー ある兵士の奇跡

第二次世界大戦で捕虜としてイギリスの収容所に送り込まれたナチス兵士のバート・トラウトマン。終戦後…

おすすめ記事

映画『パピチャ 未来へのランウェイ』リナ・クードリ/シリン・ブティラほか 女子として、夢を追う者として共感!『パピチャ 未来へのランウェイ』座談会リポート

今回本作にちなんで、ネジュマと同世代の女性に集まって頂き、オンライン座談会を行いました…

映画『ディープ・ブルー3』 怖い?笑える?映画好き女子的サメ映画の魅力特集

サメ映画の魅力を再発見するべく、編集部独断でサメ映画の代表作を選抜し、各作品の魅力やオススメポイントについて部員の皆さんに聞いてみました!

映画『プラダを着た悪魔』アン・ハサウェイ/メリル・ストリープ あの名作をリメイクするとしたら、誰をキャスティングする?『プラダを着た悪魔』

「勝手にキャスティング企画!」第4回は『プラダを着た悪魔』。リメイクするとしたら、アン・ハサウェイが演じたアンドレア・サックス(=アンディ)、メリル・ストリープが演じたミランダ・プリーストリーを、誰が演じるのが良いか、考えて頂きました!

映画『オフィシャル・シークレット』マット・スミス/マシュー・グード ジャーナリズムの意義を問う映画特集

現代は情報に溢れており、不確かなニュースを判別することも難しくなってきました。でも、誰も正しい情報を伝えようとする努力をしなくなった時、世界はどうなって…

【恋のまち パリvsニューヨーク】特集イメージ:エッフェル塔&自由の女神 【恋のまち パリvsニューヨーク】特集

多くの恋愛映画の舞台となっているパリとニューヨーク。今回はそれぞれが舞台となっている恋愛映画の中で、どの作品が好きか投票を行い、ランキングと総合結果を出しました。パリvsニューヨークの結果はいかに!?

映画『劇場版おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~』志尊淳 新世代スター期待度ランキング2020

毎年多くの若手俳優の中から新たなスターが誕生しますが、今回はこれからさらに人気が上昇しそうな俳優について、トーキョー女子映画部が独断で選出し、皆さんに投票して頂きました。

親子イメージ写真 皆様へ感謝!10周年記念特集:みんなの映画好きルーツ

トーキョー女子映画部10周年記念特集第2弾!トーキョー女子映画部には多くの映画好き女子が集まっていますが、皆さん何をきっかけに映画を好きになったのでしょうか?今回は皆さんが映画好きになったルーツについて聞いてみました。

トーキョー女子映画部主宰:マイソン アバターイラスト10周年 皆様へ感謝!10周年記念特集:トーキョー女子映画部のまだまだ短い歴史

2020年7月で、トーキョー女子映画部は開設10周年を迎えました!ここまで続けてこられたのも皆さんのおかげです。本当に、本当にありがとうございます!他の多くの企業やWEBサイトに比べれば、10年なんてまだまだ若いですが、超マイペースでちゃらんぽらんな私からすると「10年ももった!」というのが本音です(笑)。そんなトーキョー女子映画部ですが、今回はこの機会にこの10年を振り返らせて頂きます。

映画『メン・イン・ブラック3』ウィル・スミス 楽しい妄想シリーズ:1日あの人になってみたい!〜コメディ俳優編〜

楽しい妄想シリーズ「1日あの人になってみたい!」企画第2弾!今回は“コメディ俳優編”です。皆さんがもし1日だけコメディ俳優になって映画に出られるとしたら、誰になってみたいですか?今回も楽しく妄想して頂きました!

映画『レヴェナント:蘇えりし者』レオナルド・ディカプリオ イイ男セレクションランキング2020<海外40代俳優 総合ランキング>

今回はついに総合ランキングを発表!各部門で接戦を繰り広げた海外40代俳優ですが、総合ランキングはどんな結果になったのでしょうか?

REVIEW

  1. 映画『ザ・ハント』ベティ・ギルピン
    ザ・ハント

  2. 映画『パピチャ 未来へのランウェイ』リナ・クードリ
  3. 映画『罪の声』小栗旬/星野源
    罪の声

  4. 映画『とんかつDJアゲ太郎』北村匠海/山本舞香/伊藤健太郎
  5. 映画『キーパー ある兵士の奇跡』デヴィッド・クロス/フレイア・メーバー
  6. 映画『おもかげ』マルタ・ニエト/ジュール・ポリエ
    おもかげ

  7. 映画『きみの瞳が問いかけている』吉高由里子/横浜流星
  8. 映画『空に住む』多部未華子
    空に住む

  9. Netflix映画『シカゴ7裁判』サシャ・バロン・コーエン
    シカゴ7裁判

  10. 映画『ストレイ・ドッグ』ニコール・キッドマン

部活・イベント

  1. 映画『パピチャ 未来へのランウェイ』リナ・クードリ/シリン・ブティラほか
  2. トーキョー女子映画部主宰:マイソン アバターイラスト10周年
  3. 映画『スキャンダル』シャーリーズ・セロン/ニコール・キッドマン/マーゴット・ロビー
  4. 海外ドラマ『SUITS︓ジェシカ・ピアソン』ジーナ・トーレス/モーガン・スペクター/シャンテル・ライリー/ベサニー・ジョイ・レンツ/サイモン・カシアニデス/ウェイン・デュヴァル
  5. 映画『ダウントン・アビー』ヒュー・ボネヴィル/エリザベス・マクガヴァーン/マギー・スミス/ミシェル・ドッカリー/ローラ・カーマイケル/アレン・リーチ/ブレンダン・コイル/ジョアン・フロガット/ロブ・ジェームス=コリアー/レスリー・ニコル/ソフィー・マックシェラ/マシュー・グード/ジム・カーター/イメルダ・スタウントン
PAGE TOP