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心理学から観る映画46:【映画でウェルビーイングを見つける】Vol.3『ミッション・ジョイ 〜困難な時に幸せを見出す方法〜』

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映画『ミッション・ジョイ ~困難な時に幸せを見出す方法~』ダライ・ラマ14世/デズモンド・ツツ

今回は、ダライ・ラマ法王十四世とデズモンド・ツツ大主教、2人のノーベル平和賞受賞者が、宗教の垣根を越えて一緒に過ごした1週間を追ったドキュメンタリー『ミッション・ジョイ 〜困難な時に幸せを見出す方法〜』(以下、『ミッション・ジョイ』と記す)をご紹介します。本作のテーマは、ウェルビーイングそのものです。

ウェルビーイング(Well-being)とは
●身体的・精神的・社会的に良い状態にあること(文部科学省)
●持続的な幸福のあり方(セリグマン,2014)
→さらに詳細はこちら

本コーナー前2回は、セリグマン(2014)の定義をもとに、5つの構成要素に映画の内容を照らし合わせながらウェルビーイングを考えました。今回は視点を変えて、ダライ・ラマ法王十四世とデズモンド・ツツ大主教のお話から、ウェルビーイングを考えます。

今回の題材映画

映画『ミッション・ジョイ ~困難な時に幸せを見出す方法~』ダライ・ラマ14世/デズモンド・ツツ
映画『ミッション・ジョイ ~困難な時に幸せを見出す方法~』ダライ・ラマ14世/デズモンド・ツツ

『ミッション・ジョイ 〜困難な時に幸せを見出す方法〜』
2024年1月12日より全国順次公開
ユナイテッドピープル
原作:「よろこびの書 変わりゆく世界のなかで幸せに生きるということ」(以下、「よろこびの書」と記す)
監督:ルイ・シホヨス/ペギー・キャラハン
出演:ダライ・ラマ法王十四世/デズモンド・ツツ大主教他
公式サイト 

本作は、インドに亡命中のダライ・ラマ法王十四世のもとに、デズモンド・ツツ大主教が訪れ、ダライ・ラマ法王の80歳の誕生日を祝い、共に過ごし、語らう姿を映し出したドキュメンタリーです。スタッフには、ルイ・プシホヨス監督(『ザ・コーヴ』でアカデミー賞受賞)、マーク・モンロー(プロデューサー/『イカロス』『ザ・コーヴ』でアカデミー賞受賞)ダーラ・K・アンダーソン( 製作総指揮/『リメンバー・ミー』『トイ・ストーリー3』でアカデミー賞受賞)、アンドリュー・バックランド(編集/『フォード vs フェラーリ』でアカデミー賞受賞)といった、4人のアカデミー賞受賞者が名を連ねています。

©Miranda Penn Turin ©Tenzin Choejor

映画『ミッション・ジョイ ~困難な時に幸せを見出す方法~』ダライ・ラマ14世/デズモンド・ツツ

映画『ミッション・ジョイ』の原作「よろこびの書 変わりゆく世界のなかで幸せに生きるということ」のイントロダクションには、「ダライ・ラマと大主教は、喜びが実際に私たちの生得権であり、幸せよりも根源的なものであることを私たちに思い出させる」と書かれています。さらに、ツツ大主教の言葉として「喜びはー(中略)幸せよりもはるかに大きい。幸せは往々にして外部の状況次第とみなされるが、喜びはそうではない」と記されています。

“幸せ”という概念は、「何をもって幸せとするのか」が人によって千差万別でつかみどころが難しいともいえます。一方、”喜び”は感情として表にも出るし、自覚しやすい。いきなり「幸せになるにはどうすれば良いか」というところから入ると、正直途方もない旅路が待ち受けているように感じてしまいます。でも、”喜び”は日常的な感情の動きである点で身近であり、入口としては入り易く感じます。

映画『ミッション・ジョイ ~困難な時に幸せを見出す方法~』デズモンド・ツツ

また、「幸せは往々にして外部の状況次第とみなされるが、喜びはそうではない」というツツ大主教の言葉から、”喜び”は自らコントロールできるものであると捉えられます。だから、私達はまず、日々のなかで”喜び”を感じるところから始めればいいのだと、ハードルが少し下がります。ただし、ツツ大主教がいう”喜び”は幸せも包含しています。だから、求めているものは同じなのだとわかります(ダライ・ラマほか,2018)。

映画『ミッション・ジョイ ~困難な時に幸せを見出す方法~』ダライ・ラマ14世

一方、ダライ・ラマ法王は、「人生の目的は幸せを見出すことだと思い至りました。(中略)幸せの究極の源は私たちの内側にあります」と語っています。そして、貧困、暴力、戦争といった現代の多くの問題は人間自身によって生み出され、それを解決するには頭と心が重要であると述べています(ダライ・ラマほか,2018)。

ここからは、『ミッション・ジョイ』を観ていただくか「よろこびの書」を読んでいただくほうが、お2人のそれぞれの言葉をストレートに受け取れると思います。お2人共本当にお茶目で、冗談を言い合う姿はまるで少年です。何より、ダライ・ラマ法王とツツ大主教のお2人の仲睦まじい姿が幸せな気持ちにさせてくれます。ぜひ、映画、書籍共に触れてみてください。

今回は学術的な方向からではなく、この時代、この世界を代表する2人の”人生の大先輩”から学べるウェルビーイングをご紹介しました。今後も、さまざまな角度からウェルビーイングについて考える機会をくれる映画をご紹介していきます。

<参考・引用文献>
ダライ・ラマ、デズモンド・ツツ、ダグラス・エイブラムス(2018)(菅靖彦 訳)「よろこびの書 変わりゆく世界のなかで幸せに生きるということ」河出書房新社
文部科学省「ウェルビーイングの向上について(次期教育振興基本計画における方向性)」中央教育審議会教育振興基本計画部会(第13回)会議資料【資料8】
マーティン・セリグマン(2014)(宇野カオリ訳)『ポジティブ心理学の挑戦“幸福”から“持続的幸福”へ』ディスカヴァー・トゥエンティワン,東京

TEXT by Myson(武内三穂・認定心理士)

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