学び・メンタルヘルス

本当の自分になることの重要性【映画でSEL】

  • follow us in feedly
  • RSS
【映画でSEL】海辺の朝日に向かって手を広げる女性の後ろ姿

SEL(社会性と情動の学習)は、特定の型がある学習法を指すのではなく、社会性や情動に関するスキルを向上させる目的で行われる学習の総称です。幼児から高校生までそれぞれを対象としたプログラムの例を見ても、発達段階に合わせて、生活習慣、人間関係の形成、問題防止、ストレスマネジメント、お金の管理、もっと絞ると、いじめ予防など、さまざまなプログラムがあります。つまり、一つひとつは、具体的な目的を掲げたプログラムとして組まれています。

社会情動的スキルは子どものうち早ければ早いほど効果的とされるものの、大人になっても有用である点に反論する方はいないでしょう。これで完璧だという社会情動的スキルの頂点はありません。生きている限り学び続ける必要があるスキルです。大人向けのSELとした場合でも、ストレスマネジメントなど共通したテーマがあると同時に、子どもとは異なるシチュエーションとして、職場での人間関係やマナー、キャリアデザイン、恋愛関係、夫婦関係などのテーマが挙げられます。

このように具体的なテーマに合わせて、たとえば今回は特に向上させたい社会情動的スキルとして「自己への気づき」と「他者への気づき」「自己のコントロール」にフォーカスする、というようにプログラムを構築し、実施していきます。

SEL(社会性と情動の学習)の定義とSELで向上を目指す社会的能力についてはこちら

ただ、SELを積み重ねた先にどんな未来が待っているのかという点が気になるでしょう。そもそもSELが必要とされる背景には、社会情動的スキルがウェルビーイング実現の要となり得るという期待があります。よって、SELを積み重ねた先にあるのは、人それぞれのウェルビーイングです。
とはいえ、自分にとってのウェルビーイングがどのようなものかを自覚するのが難しいからこそ、ウェルビーイングを目指す道のりが五里霧中となっている方が多くいると思います。

自分にとってのウェルビーイングがどのようなものかを知るには、まず自分自身を理解することが必要です。そして、自分らしくあること、自分を大切にすることが要となります。

【映画でSEL】屋外のベンチで疲れた様子で座る女性

社会心理学者の加藤諦三先生(早稲田大学名誉教授)は、何百冊にも及ぶ著書において、また、ご自身の公式YouTubeチャンネルの他、多種多様なチャンネルにゲスト出演した際にも、「本当の自分」を知り、自分らしく生きることの重要性を説いています。そして、「自分に気づく心理学(愛蔵版)」では、自己と他者の関係についてあらゆる視点が示されています。
同著書の第3章「不安なのは本当の自分が見えないからである」の中の「にせの道徳や規範にしばられることはない」という節では、「ひとつの道徳や規範で人間をしばるから、心の病んだ人はいつまでもたちなおれないのである。/それ故に心の病んだ人は、実際の自分の感情に接することを恐れる。親や同胞への怒りを心の底に持っているのに、それを意識することはできない」(p.87)として、「心の健康な人達の間の道徳や規範は、時に、心の病んだ人達の間の搾取を正当化する理論となる」と述べられています。

以上の言を引用してここで伝えたいのは、本当に必要な社会情動的スキルは、周囲の空気を読んだり、忖度して世渡り上手になるスキルではないということです。自分らしくとはいっても、自己中心的になれというのでもありません。
私が考える社会情動的スキル、【映画でSEL】で向上させたい社会情動的スキルとは、お互いが自分らしく生きるために、自分、他者、社会とどう向き合い、付き合っていくかを自分で決めて納得できるようにするスキルです。映画には、そのヒントが隠された作品が多くあります。だから【映画でSEL】を開発し、薦めたいと考えたのです。

「本当の自分に気づくことと自分を大切にすること」の重要性と根拠については、次回さらに深掘りします。

<参考・引用文献>
加藤諦三(2006)「自分に気づく心理学(愛蔵版) 」PHP研究所

【映画でSEL】の簡単な解説動画を公開しています。下記vimeoにてどなたでも無料でご覧いただけます。
約1分のショートバージョンはこちら
詳細動画はこちら

TEXT by Myson(武内三穂・認定心理士

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝』ビル・スカルスガルド ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝【レビュー】

実に楽しい!良い意味で「なんじゃこりゃ?」というハチャメチャなノリなのに…

ポッドキャスト:トーキョー女子映画部チャンネルアイキャッチ202509 ポッドキャスト【トーキョー女子映画部チャンネル】お悩み相談「どうしたらいい出会いがありますか?」他

今回は、正式部員の皆さんからいただいたお悩み相談の中から、下記のお2人のお悩みをピックアップして、マイソンなりにお答えしています。最後にチラッと映画の紹介もしています。

映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』ベニチオ・デル・トロ/ミア・スレアプレトン/マイケル・セラ ザ・ザ・コルダのフェニキア計画【レビュー】

REVIEWこれぞウェス・アンダーソン監督作という、何から何までかわいい世界観でありながら…

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

映画『こんな事があった』前田旺志郎/窪塚愛流 こんな事があった【レビュー】

2021年夏の福島を舞台に、主人公の17歳の青年のほか、震災後も苦悩しながら生きる人々の姿を…

映画『パルテノペ ナポリの宝石』セレステ・ダッラ・ポルタ セレステ・ダッラ・ポルタ【ギャラリー/出演作一覧】

1997年12月24日生まれ。イタリア出身。

映画『ブロークン 復讐者の夜』ハ・ジョンウ ブロークン 復讐者の夜【レビュー】

『工作 黒金星と呼ばれた男』『アシュラ』などを手掛けたサナイピクチャーズが贈る本作は…

映画『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』西島秀俊/グイ・ルンメイ Dear Stranger/ディア・ストレンジャー【レビュー】

真利子哲也監督(脚本も担当)による西島秀俊主演作という情報のみで、毎度ながら前情報をほぼ入れずに観て、いろいろ良い驚きが…

映画『風のマジム』伊藤沙莉 風のマジム【レビュー】

マジムって何だろうから始まり、すぐに主人公の名前とわかると、次に「じゃあ、風のマジムってどういうことなんだろう?」という具合に…

映画『ベスト・キッド:レジェンズ』ベン・ウォン ベン・ウォン【ギャラリー/出演作一覧】

2000年1月1日生まれ。中国、上海出身。

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 ファストムービー時代の真逆を行こうと覚悟を決めた!大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート前編

『るろうに剣心』シリーズ、『レジェンド&バタフライ』などを手掛けた大友啓史監督が<沖縄がアメリカだった時代>を描いた映画『宝島』。今回、当部の部活史上初めて監督ご本人にご参加いただき、映画好きの皆さんと一緒に本作について語っていただきました。

映画『宝島』妻夫木聡/広瀬すず/窪田正孝 沖縄がアメリカ統治下だったことについてどう思う?『宝島』アンケート特集

【大友啓史監督 × 妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太】のタッグにより、混沌とした時代を自由を求めて全力で駆け抜けた若者達の姿を描く『宝島』が9月19日より劇場公開されます。この度トーキョー女子映画部では、『宝島』を応援すべく、正式部員の皆さんに同作にちなんだアンケートを実施しました。

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『ふつうの子ども』嶋田鉄太/瑠璃
  2. 映画『ネクスト・ゴール・ウィンズ』マイケル・ファスベンダー
  3. 映画『バーバラと心の巨人』マディソン・ウルフ

REVIEW

  1. 映画『ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝』ビル・スカルスガルド
  2. 映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』ベニチオ・デル・トロ/ミア・スレアプレトン/マイケル・セラ
  3. 映画『こんな事があった』前田旺志郎/窪塚愛流
  4. 映画『ブロークン 復讐者の夜』ハ・ジョンウ
  5. 映画『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』西島秀俊/グイ・ルンメイ

PRESENT

  1. 映画『ホーリー・カウ』クレマン・ファヴォー
  2. 映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル
  3. 映画『ミーツ・ザ・ワールド』杉咲花/南琴奈/板垣李光人
PAGE TOP