REVIEW
タイトルになっている“ブルータリスト”は「残忍な」という意味の単語ですが、“ブルータリズム”と呼ばれる建築様式にもかけて付けられていると考えられます。以下に、映画公式資料にある説明を抜粋します。

ブルータリズムと呼ばれる建築様式は、戦後の復興計画の中で、1950年代からイギリスで見られるようになってきていた。
その外観はミニマリスト的で、コンクリートやレンガが剥き出しになっている。ブルータリズムは装飾よりも、構造そのものを見せる手法だ。
ブルータリズムで有名な建築家には、ル・コルビュジエ、マルセル・ブロイヤー、ウィリアム・ペレイラ、モシェ・サフディ、デニス・ラスダン、アリソン&ピーター・スミッソンなどがいる。

本作の主人公ラースロー・トート(エイドリアン・ブロディ)は、ブルータリズムの建築で才能を開花させたハンガリー系のユダヤ人ということで、ブルータリストというタイトルになっていると思われます。このラースロー・トートは架空の人物でありながら、「その人生はブルータリズムの先駆者となったルイス・カーン、ミース・ファン・デル・ローエ、マルセル・ブロイヤーと重なる部分が多い」(映画公式資料)といいます。

ラースロー・トートはハンガリーからアメリカに移住して来たものの、ブダペストで築いた建築家としての名声は通用せず、移民として苦渋を味わいます。離ればなれになっている妻のエルジェーベト(フェリシティ・ジョーンズ)との再会もなかなか叶わず、衣食住もままならないなか、彼はどんな選択をしていくのか、30年にわたる半生を215分という長尺で描いています。

215分の長尺とはいえ、途中でインターミッション(休憩)が入るし、内容が濃厚でテンポも良いので長さはあまり感じません。30年という長きに渡る壮絶な半生を描いているので、浮き沈みもあり、ジェットコースターのような半生を体感できます。

ラースローの運命を左右する複数の人物には多面性が見え、誰を信じてよいかわからない緊迫感が続きます。生活を立て直せるかということだけではなく、人間の尊厳が保たれるのかという点が最大のテーマとなっており、資本主義社会の闇深さを実感します。

キャストには、エイドリアン・ブロディ、フェリシティ・ジョーンズ、ガイ・ピアース、ジョー・アルウィン、ラフィー・キャシディ、アレッサンドロ・ニヴォラ、ステイシー・マーティンといった実力派が名を連ねています。『シークレット・オブ・モンスター』『ポップスター』を手掛けたブラディ・コーベット監督の挑戦的な作品をお見逃しなく。
デート向き映画判定

見応えたっぷりで、215分という長尺なので、デートで観るなら、時間に余裕のある日に本作鑑賞をメインメニューとしてスケジュールをたてましょう。主人公の夫婦関係も描かれていて、カップルで観ると自分達ならどうするかと想像できる部分もあるでしょう。辛い局面もありながら、お互いの存在の大きさを感じさせるシーンも複数あります。
キッズ&ティーン向き映画判定

ティーンの皆さんと同じ世代のキャラクターでいうと、主人公ラースローの姪ジョーフィア(ラフィー・キャシディ)がいます。彼女は移住してきて、右も左もわからない状況な上に、特殊な人間関係のなかで過ごさなければいけない状況になります。それでも自分らしさを失わずに、叔父と叔母を支える姿はお手本になる部分もあるでしょう。

『ブルータリスト』
2025年2月21日より全国公開
R-15+
パルコ、ユニバーサル映画
公式サイト
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TEXT by Myson
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情報は2025年2月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

- イイ俳優セレクション/アレッサンドロ・ニヴォラ
- イイ俳優セレクション/エイドリアン・ブロディ
- イイ俳優セレクション/ガイ・ピアース
- イイ俳優セレクション/ジョー・アルウィン
- イイ俳優セレクション/ステイシー・マーティン(後日UP)
- イイ俳優セレクション/フェリシティ・ジョーンズ(後日UP)
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